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宇宙戦艦クリントン:構想25年(四半世紀)!モニカ・ルインスキーの衝撃!

 我々の知る世界線とは劇的に異なるパラレルワールドでは、第42代アメリカ大統領ビル・クリントンの後を継いだのは、夫以上に野心的な43代大統領、ヒラリー・クリントンだった。彼女は『長命民主主義』時代の先駆けとして、医療技術の進化により200歳を迎えてもなお健在であった。大統領の任期は最大五期・20年に延長され、アメリカのリーダーシップは一時的なものから『帝国の延命』へと転じ、世界に君臨し続けることが可能となった。

 何十年もその地位に君臨し続けたヒラリーがある日、いくつもの難題を解決した後、突如『四体惑星』と呼ばれる星からの通信を受け取った。四体惑星は、地球からはるか彼方、冷たい氷河を越えた暗黒の宇宙に位置し、四体星人が棲む場所だ。彼らはアメリカ大統領に対し、『宇宙の民主主義を脅かす帝国』として非難し、即時降伏を要求してきた。

 この知らせが届いたのは、ちょうど第100代大統領選挙が終わったばかりの年だった。100代目の大統領に選ばれたのはなんと、イーロン・マスク・チップを脳に埋め込んだことによる副作用で奇妙な『バイデン脳化症』を発症していたドナルド・トランプである。前回の任期終了後も『メイク・アメリカ・グレート・アゲイン』を唱え続けた彼は、科学と医療技術の発展のおかげで再び『アメリカを守る大統領』として復帰を果たした。しかし、すでに彼の発言のほとんどがAIによって自動生成されており、国民もそれを気にしないという摩訶不思議な状況だった。

 トランプ大統領はこの四体惑星からの挑発を無視するどころか、逆にそれを利用して『地球外戦争による再びのアメリカ復活』をスローガンに掲げ、特別な計画を打ち出した。その名も『宇宙戦艦クリントン計画』だ。栄光のクリントン家に敬意を表し、宇宙戦艦クリントンを建造し、地球防衛のシンボルとすることが決定された。

 宇宙戦艦クリントンはロングビーチのクイーン・メリー号を密かに改造した最新鋭の宇宙船であり、外見はアメリカ大統領執務室を模して白と青の装飾で彩られ、内部には豪華なリビング・ルームやジャグジー、金箔で飾られたテーブルが並ぶ。船体には特殊なアメリカ製の耐熱素材が使用され、どんな敵とも戦えるようになっていた。しかし、実際には兵器は最新型のレーザーよりもむしろ、政府支給の古びた『愛国心パンフレット』の詰め合わせだったが、誰もそれを疑うことはなかった。

 進水式で、トランプ大統領兼船長は力強く演説した。『四体星人など恐れるに足らん!アメリカが真の自由の国である限り、我々は宇宙に民主主義の灯火を掲げる!』

 こうして、宇宙戦艦クリントンは四体惑星に向けて進撃を開始した。しかし、四体星人は地球の『民主主義』という概念そのものを理解していないようだった。彼らは異形の姿で、無数の目と手を持ち、それぞれ異なる武器を携えているが、その心は『集団意識』という冷酷な力に支配されていた。彼らには個性や自由の概念がなく、まさに『全体主義の具現』として、アメリカの理念とは正反対の存在であった。

 四体星人からの通信が届くと、船内には不気味な音声が響き渡った。それは『無限リピート通信』と呼ばれるもので、彼らが理解できない単語に対して同じフレーズをひたすら繰り返す形式の通信だった。『降伏せよ、降伏せよ、降伏せよ……』という単調で冷たい声が延々と流れ続け、クルーたちはすぐにその音に嫌気がさしていった。

 さらに、四体星人は『民主主義』という言葉も理解できないため、トランプ船長の演説を分析した結果、『民主主義の灯火』を『脅威の武器』として解釈し、『民主主義の灯火を降伏せよ、降伏せよ、降伏せよ……』と延々とリピートし始めた。これにはトランプ船長も困惑し、『もういい加減にしろ!』と叫ぶほどであった。

 戦いは苛烈を極め、宇宙戦艦クリントンは幾度も四体星人の攻撃を受けたが、トランプ船長は船内で旧Twitter(X)通信を使ってアメリカの偉大さを説き続けた。その間、ヒラリーもTikTokのショート動画で助言を送り、『敵のリーダーを選挙に引きずり出せば、彼らの社会は崩壊するはず』と新たな戦略を提案した。トランプ船長はこの策を採用し、四体星人に『真の民主主義選挙』を開催するよう要求した。

 四体星人はさらに混乱に陥り、今度は『選挙せよ、選挙せよ、選挙せよ……』と無限リピート通信を始めてしまう。全く理解できていないものの、その結果、彼らのリーダーは選挙で敗北し、指揮系統が崩壊したため、アメリカは『自由』と『民主主義』と『正義』の理念で勝利を収めたのである。

 勝利の帰還を果たしたトランプ館長は、宇宙をも制覇した英雄として国民に迎えられた。彼は帰還後も『アメリカの自由』を掲げ、『アメリカの偉大さは永遠だ』とひたすら主張し続けた。その一方で、彼のAI発言生成機のAIトランプは、無限ループに陥り、『メイク・アメリカ・グレート・アゲイン』とひたすら繰り返すだけだったが、国民はむしろそれに安心を覚えたのだった。

 そして誰もが心の中で考えた。次の『宇宙大統領』は一体誰がふさわしいのだろうか? だが、実際のところ、それはもう誰にも重要なことではなかった。

#想像していなかった未来

武智倫太郎

自己解説
 本作品のタイトルである『宇宙戦艦クリントン』は、1998年に発生したモニカ・ルインスキー事件をきっかけに思いつき、いつか作品化したいと考えていたものです。当時の『旧宇宙戦艦クリントン』の設定は、松本零士の『キャプテンハーロック』に登場するアルカディア号をベースにしています。ハーロックの盟友であるトチローの記憶と意識がアルカディア号にアップロードされていたように、『旧宇宙戦艦クリントン』にはビル・クリントンのマインドがアップロードされているという設定です。

 なお『旧宇宙戦艦クリントン』には、波動砲に相当する最終兵器として、スペルマエンジンから発射される『スペルマ光線』が搭載されており、これはスペシウム光線をも凌駕する威力を持つという設定でした。

自己解説の解説
#なんのはなしですか

 若い世代にはこの事件に馴染みがないかも知れないので、以下にさらなる解説をします。

 モニカ・ルインスキー事件は、当時のアメリカ大統領ビル・クリントンと、ホワイトハウスでインターンを務めていたモニカ・ルインスキーの関係を巡るスキャンダルです。クリントン大統領がルインスキーと性的な関係を持ち、さらにその関係について嘘をついた疑いが取り沙汰され、大きな注目を集めました。

 事件の経緯は次の通りです。

関係の発覚
 ビル・クリントンは1995年から1997年にかけてホワイトハウスのインターンだったモニカ・ルインスキーと個人的な関係を持っていました。しばらくは隠されていましたが、1998年に特別検察官ケネス・スターが別のスキャンダル(ホワイトウォーター事件)を調査する中で、ルインスキーとの関係の証拠を得て、捜査対象としました。

嘘の発覚
 1998年1月、関係の噂が広まると、クリントンは『その女性と性的関係はない』と断言しました。しかし、その後の証拠や証言から、クリントンが関係を隠していたことが明らかになりました。

弾劾裁判
 この虚偽の証言により、アメリカ合衆国下院はクリントンを『偽証罪』と『司法妨害』で弾劾しました。1998年12月、下院が弾劾を可決し、翌1999年には上院での弾劾裁判が行われましたが、有罪に必要な票数には達せず、クリントンは大統領職に留まりました。

 この事件は、クリントン政権に大きな影響を与え、アメリカ国内外で大きなメディアの関心を集めました。また、この件を通じて、アメリカの政治、メディア、そして公職者の倫理観についても深い議論が巻き起こりました。

アメリカの軍艦や基地に大統領の名前が使われる理由と、日本で総理大臣の名前が残りにくい理由

 アメリカでは、軍艦や基地に歴代大統領の名前を付ける伝統がありますが、これは単に敬意を表すだけではなく、アメリカ社会において歴代大統領が特に国民の記憶に残る重要な存在と見なされているからです。大統領は国家の象徴として国民の団結を促し、歴史的な決断を通じて国の発展や安全保障に多大な貢献をした人物として認識されています。そのため、大統領の名前を冠した軍艦や潜水艦、基地は国民に誇りと連帯感を喚起する役割を果たします。

 一方、日本では軍事的な象徴や功績として歴代総理大臣の名前を用いる文化はありません。これは幾つかの理由が考えられます。まず、日本の首相はアメリカの大統領と異なり、任期が短い傾向があり、歴史に名を残すほど長く在任する首相が少ないためです。

 また、総理大臣の役割もアメリカの大統領とは異なり、象徴的リーダーシップよりも内政を重視する場合が多く、個人としての評価があまり強調されない傾向があります。そのため、軍艦や基地に名前を冠する文化が根付かず、記憶にも残りにくいのです。

 以下に、アメリカの歴代大統領の名前が付けられた主要な軍艦や潜水艦、その他の施設についてリストアップしてみますが、私が知らないだけで、他にもあるかも知れません。

原子力空母

USS Abraham Lincoln (CVN-72)
エイブラハム・リンカーン(第16代大統領)にちなんで命名されています。

USS Theodore Roosevelt (CVN-71)
セオドア・ルーズベルト(第26代大統領)にちなんで命名されています。

USS Harry S. Truman (CVN-75)
ハリー・S・トルーマン(第33代大統領)にちなんで命名されています。

USS Dwight D. Eisenhower (CVN-69)
ドワイト・D・アイゼンハワー(第34代大統領)にちなんで命名されています。

USS Gerald R. Ford (CVN-78)
ジェラルド・R・フォード(第38代大統領)にちなんで命名され、ジェラルド・R・フォード級の最初の空母です。

USS George H.W. Bush (CVN-77)
ジョージ・H・W・ブッシュ(第41代大統領)にちなんで命名されています。

原子力潜水艦

USS Jimmy Carter (SSN-23)
ジミー・カーター(第39代大統領)にちなんで命名され、シーウルフ級潜水艦の3番艦です。

その他の歴代大統領名に由来する兵器

USS Washington (BB-56)
ジョージ・ワシントン(初代大統領)にちなんでいますが、これは戦艦ではなく、かつてのノースカロライナ級戦艦の一隻です。

USS Missouri (BB-63)
ミズーリ州にちなんで命名され、トルーマン大統領の出席のもと、第二次世界大戦の日本降伏文書が調印された戦艦として歴史的に有名です。

アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

USS Franklin D. Roosevelt (CVB-42)
フランクリン・D・ルーズベルト(第32代大統領)にちなんで戦後初期の空母として命名されました。

USS Roosevelt (DDG-80)
フランクリン・D・ルーズベルトにちなむ名前です。

多様な戦車や兵器の訓練基地

ジェファーソン・バラックス (Jefferson Barracks)
トーマス・ジェファーソン(第3代大統領)にちなんで名付けられた米軍の歴史的な基地で、かつては兵器や戦車の訓練施設として利用されていました。

 このように、アメリカでは歴代大統領の名前が兵器や軍事施設に使用されることが多く、歴史的な重みや国民の記憶に残り続けています。

 べ、別にオリガさんに監修してほしいわけじゃないけど! 間違ってないかもしれないし…でも、ちょっと見てもらうくらいなら…どうしてもって言うなら、いいけど!

武智倫太郎

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