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【応援ブランディングvol.1】クラファン後の失敗から生み出された応援ブランディング

2016年1月12日、私はクラウドファンディングに挑戦しました。

きっかけは、ちょうどその1年前、地元・和歌山の武将である真田幸村が主人公のNHK大河ドラマ『真田丸』が放映されるのを知ったことから始まります。


主演は『半沢直樹シリーズ』で人気を博していた堺雅人さんということもあり、ドラマが始まる1年以上前から地元は色めき立っていました。


当時の私は前職で新規事業を担っており、残業で一緒になった同僚たちとの雑談のなかで偶然そのことを知ったのです。


1. 地元への想いが大河ドラマとつながる

同僚のひとりがスマートフォンケースの印刷事業を担当していたこともあり、「幸村をデザインしたケースなら売れるかも……」という軽いノリから話が次第に盛り上がっていったのです。

その時、私のなかにある地元への想いと大河ドラマがひとつにつながりました。

「単なるスマホケースではなく、地場の伝統産業をいくつか組み合わせた製品をつくれば、大河ドラマの機運と相まって地元の産業が盛り上がるのでは」と考えたのです。

そして、日本三大レザー産地である紀州産レザーを使ったスマホケースをつくり、それを日本三大漆器のひとつである紀州漆器の木地職人による桐箱に納めた製品を完成させ、クラウドファンディングという仕組みを使って世に発信しました。

すまほぶくろ・不惜身命パッケージ
プロジェクトに参画いただいた職人の皆さん

クラウドファンディングとは、プロジェクトを立ち上げた人に対して、不特定多数の人から購入や寄付、金融といった形で資金を供与いただく仕組みです。

私は商品を購入していただくタイプの「Makuake(マクアケ)」をプラットフォームに選びました


プロジェクトの目的は、伝統産業を組み合わせた製品の販売を通じて、地場産業を活性化させること。

当時、クラウドファンディングはまだ黎明期でしたが、社内外の多くの方々に支えられ、全国から目標金額の400%以上の資金を支援していただき、プロジェクトを成功に導くことができました。


また、「日経MJ」など、様々なメディアで取り上げていただいたことで、協力会社に新たな仕事が舞い込むなど、地場産業を盛り上げるという一定の目的は達成できたと思います。

実は、このクラウドファンディングでの気付きが拙著(愛され続ける会社から学ぶ“応援ブランディング”)を執筆するきっかけにつながったのです。

2. 一つ目の気付きは「応援の力」

クラウドファンディングでは、エールを送ってくださった方、商品を購入してくださった方、さらにまわりに紹介してくださった方など、様々な形でプロジェクトを後押ししていただきました。

なかでも驚きだったのは、友人や知人など身近な方からの応援が、そのまわりにいる方々の応援につながり、その輪が同心円上に波及していったことです。

プロジェクトに寄せられた応援メッセージ

それこそ北は北海道から南は九州まで、これまで一度も会ったことのない方々から応援していただいたことには驚きを隠せませんでした。

またそれとは逆に、不特定多数の人に向けて発信するクラウドファンディングでは、厳しい意見や批判にさらされることも少なくありません。

そんな時、応援していただいている方々の声が力となり、自分が持つポテンシャル以上の力が引き出されたのも、「応援の力」のお陰だと実感しました。

3. 二つ目の気付きは「ブランドの力」

この商品(スマホケース)は、当時2万7000円で販売しました。

「そんな高額で大丈夫か?」という社内からの声をよそにプロジェクトが公開され、あれよあれよという間に目標金額に達したのは、公開からわずか3時間ほどの出来事でした。

最終的には182人の方から200万円以上の資金をご支援をいただきました


しかし、その後の販売では、それ以下の値付けをすることができず、苦戦を強いられます。たとえクラウドファンディングで成功しても、これでは事業として失敗です。

この時、社内では、高い値付けが苦戦を強いられている原因だという声が上がっていました。

当然、商品の販売なので価格の問題は大いにあります。しかし、私はもっと根源的な部分に着眼していました。


それは、「ブランディングにおける一貫性の大切さ」です。

それまで私は、いくつもの中小企業のブランディングをお手伝いしていたので、商品のブランド力を高めるための施策は行なっていました。

たとえば機能面で言うと、高級ブランドと同じ品質のレザーを使用していることや製作しているレザー工房や木工房のこれまでの実績を伝えること、情緒面では真田幸村縁の地である和歌山県町とタイアップし、NHKや真田幸村の子孫にあたる方に商品の公認をいただくなどの施策です。

朱色に染め上げた高品質・牛革スエードを使用(きのくにレザー認定品)
紀州漆器の木地職人が手仕事で作り上げる桐箱
真田幸村の里として名高い和歌山県九度山町とのタイアップ
仙台真田家十三代当主(幸村から数えて十四代)真田 徹様へ献上(写真右)
大河ドラマ「真田丸」ロゴ入りMakuake限定モデル


ただ、この商品を企画した私と販売している会社は幸村とは縁もゆかりもなく、商品と会社をつなぐストーリーはありません。私はその部分を甘く見ていました…。


つまり、せっかくいただいた「応援の力」も、「ブランディングにおける一貫性」が機能していないと、クラウドファンディング中だけの一過性のものになってしまうことを、この時に痛感したのです。


ただ、それさえあれば、まわりから応援されることで持続可能なブランドに成長していけることも感じていました。

なぜなら、商品と一貫性のある会社がクラウドファンディングを活用しているケースでは、さらなる飛躍を遂げていることが多かったからです。

それを実証するため、クラウドファンディングへの挑戦を果たした翌年に、私はエイドデザインを設立し、多くの中小企業や小規模事業者のブランディングをサポートしていきました。

その実践のなかで、ブランドが応援されるために必要なエッセンスを抽出し、体系的にまとめたのが「応援ブランディング」メソッドです。


4. 応援ブランディングを始める前に…

「応援ブランディング」は属人的な要素を否定していないため、正直なところ大企業には向いていないと思います。

また、最初にお伝えしておくと、応援されるブランドづくり自体は決して難しいものではありません。

中小企業でも小さなお店でも、それこそ個人事業主でも、「応援ブランディング」メソッドのステップ通りに取り組むことで誰でもその土台をつくり上げることができます。

ただし、ブランドイメージはすぐには浸透しないため、効果を実感するまでにはある程度の時間が必要です。実際そのような理由で、ブランディングを後回しにされている方も多いのではないでしょうか。


たしかにブランディングは、重要度は高いけれども緊急度は低い戦略です。

だからと言って後回しにしていると、自社が意図しないイメージがお客様の頭の中にこびり付き、それを払拭するのに余計な時間がかかってしまいます。

ゆえに、「いずれ取り組むのであれば、1日でも早く取り組んで欲しい」というのが私の願いです。


「応援ブランディング」は時間こそかかりますが、その分得られるリターンも大きくなります。

なぜなら、応援されるブランドになるということは、お客様から愛され、選ばれ続けることだからです。

それにより集客にかけるコストが少なくなり、利益率が自然と向上していきます。
また、まわりから応援されることで従業員がやりがいを感じ、そんないきいきと働く姿を見た人たちからは「こんな職場で働いてみたい」と思われるようになり、採用効率も高まっていきます。


それだけではなく、応援されるブランドになると、ステークホルダーから適切なフィードバックを受け取れるため、ブランドの価値を時代に合わせてアップデートしていくことができます

つまり、応援されることで、一過性のブランドではなく、持続可能なブランドになることが保証されるのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!



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