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2021年4月の記事一覧

生まれたての実験が、生まれたての事件になる。ボブ・ディランのライヴ。2014.4.1

生まれたての実験が、生まれたての事件になる。ボブ・ディランのライヴ。2014.4.1

 マーヴィン・ゲイの命日に、ボブ・ディランの東京Zepp DiverCity公演を観た。ゲイの2年後に生まれたディランは、来月で73歳になる。
 もう随分前に、生きながらにして伝説と化した、ほぼ歴史上の人物は、けれども、現役という言葉が生半可に思えるほど、最前線に立つ兵士だった。現在の彼はもはや、シンガーソングライターではない。どこまでもシンプルなライヴパフォーマーだった。そこには一切の言い訳がな

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小泉今日子は、いつだって100%だ

小泉今日子は、いつだって100%だ

小泉今日子
「100%」

 ときどき、彼女が死んだあとの世界のことを考える。蓮実重彦や村上龍や森高千里や前田敦子らについては思わないから、それはきっと彼女が私と同学年だからなのだろう。叶うことなら、自分より先に死なないでほしい。
 たとえばそんな思い込みが過ぎるファンを彼女は数多く抱えている。何度かインタビューする機会に恵まれた人間として断言するが、彼女は常に小泉今日子であることを引き受けている

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YMOの「自助」

YMOの「自助」

『GIJONYMO』
YELLOW MAGIC ORCHESTRA

 二〇〇八年六月十九日にスペインのヒホン市で行われた公演を収めた全十七曲。同年CD化されていたようだが、筆者は知らず、今年iTunesで解禁され、初めて聴いた。
 今世紀に入ってから、細野晴臣と高橋幸宏のユニットに坂本龍一が合流するかたちで、ゆるく再開されているとは認識していたが、まさかこれほどのライブを繰り広げていたとは。うか

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一文でコーネリアス『デザインあ』について書いてみた。

一文でコーネリアス『デザインあ』について書いてみた。

コーネリアス
『デザインあ』

 しかるべき流れが、雑然とではなく、きわめて明瞭に、曲線を描くように、形成されていくのは、これが映像のためのサウンドトラックだからなのだろうか、いや、そうではないだろう、そもそもわたしは、そのテレビ番組をみたことがないし、今後もみる予定はなく、いまここで派生し綴れ織られている音像を前にして、ただただ充足しているだけなのであって、つまりこの音楽はなにかに従属しているよ

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