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「Journey to GIVE SPACE!」リジェネラティブ思考とバイオフィリックデザインを通じて生きものと土地に出会っていく【GIVE SPACE 第2回体験レポート】

GIVE SPACE 実践者コミュニティプログラム第2回:リジェネラティブ思考バイオフィリック・デザインへのいざない

あいだラボメンバの中村安里です!
今回は「ポスト人間中心時代の暮らし、空間作り、アーバンデザインに挑戦する4ヶ月 GIVE SPACE 実践者コミュニティプログラム」の第2回、「リジェネラティブ思考バイオフィリック・デザインへのいざない」に参加して感じたことや学んだこと、自分の変化を執筆したいと思います。

GIVE SPACE の自然観 奈保さんの資料より引用


私が奈保さんから感じること

GIVE SPACE第2回の体験レポートの記事を書き始める前に軽く私自身が奈保さんのお話しを伺いながら彼女から受け取った印象や私の中で現れた感覚に関してシェアさせてください。
実はこの感覚を大切にするということは、GIVE SPACEを実践する上でも大切なことなのです。というのもGIVE SPACEには4つのスペースがあることを前回の記事でもご紹介させていただきましたが、「GIVE SPACE」で考えるスピリチュアリティーとは、自分のいのちを感じられることで、他のスピリットを感じられるようになることであり、他の生きている生きものとこの感覚を分かち合うことでもあります。
私が今回奈保さんのGIVE SPACEのプログラムに参加し、彼女から感じる感覚は生命の躍動感と彼女の明るい表情です。それはまるで、サバンナの中で他の動物と共に踊っているような躍動感です。これらの感覚をいつも感じながら、GIVE SPACEのロジックを学んでいます。私は私自身が受け取ったこの感覚によって、奈保さんのサバンナでのJourney to Lionessの経験を分かち合うことができたように感じたのです。

私は上記の原体験があったからこそ、なぜ奈保さんが、これほどまでにGIVE SPACEに情熱を捧げているのかということを深く考えるようになりましたし、同時に彼女が提唱するGIVE SPACEという考え方により興味を持つようになりました。

それでは、「Journey to GIVE SPACE!!」
GIVE SPACEへの旅路を続けたいと思います。

リジェネラティブ思考とバイオフィリックデザイン

前回の回では、GIVE SPACE の4つのスペースを扱うために5つの知識とスキルをご紹介しました。以下の5つです。
1.リジェネラティブ思考、2.バイオフィリックデザイン、3.コミュニケーションプロセスデザイン、4.エコロジカルアート、5.明晰性の訓練の5つです。
その中でも今回奈保さんが説明してくださるのは、リジェネラティブ思考とバイオフィリックデザインに関してです。今回の記事ではリジェネラティブ思考に特に着目して、それぞれ重要なキーワードをとりあげながら、詳しく見ていきます。

リジェネラティブ思考について

・リジェネラティブ思考とは?
GIVE SPACEにおけるリジェネラティブ思考とは、人間は生態系の一部として働いており、サステナブルな考え方に代表されるような何か環境問題があって、その問題をどのように解決するのかという問題解決型思考の代わりに、生きものと土地の可能性を信頼し、それらがリジェネレートする可能性を最大限に引き出せるように、また可能性をより活性化するために生きものや土地に関してよく調べ、知りそして検証していく思考と検証のプロセスなのです。

奈保さんの資料より引用


・プラネタリー・バウンダリー
今日地球に住む我々が直面している課題として、地球の資源の枯渇があります。人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を超えて人類は活動をしてしまっているのです。その限界点をプラネタリーバウンダリーと言います。このプラネタリーバウンダリーを超えた人類の活動が行われていることが現状なのです。日本は5月でオーバーシュートデーを迎え、人間が消費する地球資源の量が、地球が一年に再生産できる資源の量を超えてしまうのです。その結果、気候変動が生じ、生物多様性が喪失し、過度の窒素放出により窒素循環が滞り、土壌や海洋汚染が進んでしまっています。
このような我々が直面する地球課題を再生していく方法を土地のデザインに落とし込むことで、リジェネラティブなプランニングを組み立てることができます。

奈保さんの資料より引用

・GIVE SPAVE を実践する場所を3つの範囲で考える
GIVE SPACEを実践する場所が小さい丸のところです。考えが及ぶ範囲の地域のエコロジカルシステムはもう少し広域な地域、例えばバルコニーだったら一ブロック分のことを考えればいいのですが、土地が大きい場合だったらもう少し大きく考える必要があります。普段は視野に入っていなかった広域のエコロジカルシステムも調べてみます。例えば、おうちの庭でも鳥はすごく遠くまで飛ぶので遠い森から街まで考えてみることもできると思います。

奈保さんの資料より引用

・ライフサイクルアセスメント(LCA)
ライフサイクルアセスメントは、製品やサービスのライフサイクル全体における環境負荷を評価する手法で、私たちの社会システムや産業そのものの循環を考える考え方です。例えばある製品の原材料はどこからきているのか、使えなくなったときにどのようにリサイクルあるいはサルベージ(救出)して環境に返していくのかということを考えます。ライフサイクルアセスメントをする理由として、私たちが扱う土地だけでなく、私たちが利用する産業や社会システム自体もリジェネラティブにしていこうという目的があります。GIVE SPCAEに大きく関わるライフサイクルアセスメントには、マテリアル、水、エネルギーの三項目が主にあります。マテリアルというのは土地の整備や再生に使う道具や資材あるいは重機などが何から作られているのか、農業であれば使っている肥料はどこからきているのかなどです。またそのエネルギーコストもかかっているためそれらのコストも算出します。水については、飲料可能なポタブルウォーター(上水)、台所や洗濯などの生活排水であるグレイウォーター(中水)、トイレの排泄水であるブラックウォーター(下水)の識別が重要になります。洗車や水やりなどにはグレイウォーターを使うなど、ポタブルウォーターを最小限に節約していくことが求められています。また、現状では建物や道路の流れて下水システムに流れ込んでしまうことも多い雨水をためて有効活用していく視点も大切です。

奈保さんの資料より引用


筆者の感想やまとめ

リジェネラティブ思考を働かせて実践していく過程で、生きもの、土地、そしてそこで用いられる産業について多角的に調べあげることができます。私たちが普段気づいていない隠れたところにある生きものの生態系に気づき、あるいは気づかない間に生きものから直接的にあるいは間接的に生息地(スペース)を奪ってしまっていたことに気づかされるかもしれません。GIVE SPACEの考え方と実践はこのように非常に詳細で多角的な調査を必要とするのです。それが私たちの生きものに対する眼差しの変化に現れてくるのでしょう。

今回バイオフィリックデザインについて詳しく記事の中で述べることができませんでしたが、バイオフィリックデザインはバイオフィリア、すなわち生命と生きている全てのものへの愛というエーリッヒ・フロムの言葉をもとに作られた概念であると奈保さんは紹介されていました。

奈保さんの資料より引用

ここで補足したいのが、エーリッヒ・フロムの「愛するということ」で紹介されている愛のプロセスです。フロムによれば、愛こそが他の存在を知る唯一の方法であり、結合の行為のなかで、知りたいという欲求は満たされるのだといいます。彼によれば、愛の行為とは、結合の体験へと思い切って飛び込むことでもあるが、しかし同時に愛の行為によって完全に知るためには、まず思考によって知ることが大切だと考えているのです。それは自分が相手に関して抱いている非合理に歪んだイメージを克服し、相手の現実の姿を見るために、相手をそして自分自身を客観的に知る必要があるのです。
また人を尊重するには、その人のことを知らなければならないと彼は言いますが、同時に知も気づかいが動機でなければ、むなしいものであると彼は述べます。愛の一側面としての知は、表面的なものではなく、核心まで届くもので、自分自身に対する関心を超越して相手の立場にたってその人を見ることができた時にはじめてその人を知ることができるのです。

上記で述べたエーリッヒの愛に関する言及やプロセスから理解できることはGIVE SPACEの実践にもつながってきます。
すなわち私たちが偏見なく生命と生きている全てのものへの愛を動機に生きもの、土地、産業プロセスについて調べ上げることで私たちの中にある無知や偏見が克服されていきながら私たちが関わる土地や生きものの現実の姿とそして核心に迫った姿双方に出会っていくことができるのです。その過程の中で私たちは私たちが関わっていく対象を本当の意味で愛していくこと、そしてと土地や生きものが持つ可能性を開いて新しい地平線に出会っていくことができるのではないでしょうか?

▼GIVE SPACE第一回の記事はこちら

【執筆者 / 中村安里】
京都大学大学院在学中。株式会社うめぼし ManaViva 経営者。
福井大学で医学を学んだのち、全てのいのちは人間を超えて、生きもの全体で互いにつながり連関しあっていることに気づき、人、動植物全ての生きものが共に生きている地球全体の治癒と創造のプロセスに携わるため、プラネタリーヘルス(地球全体の健康)、ホリスティック医療(身体、心、精神全ての健康)、植物の生態系を含んだ地球生態システム、海洋生物や野生動物をテーマとして研究している。その他、ボディーワークを通じて、人々の病に向き合いながら、各地のエコロジカルなコミュニティーを訪問し自然の中で作業をし、詩をかくエコロジカルなアーティストでもある。

【3月23日からスタート!】
井口奈保さんとの「GIVE SPACE 実践者コミュニティプログラム」が始まっています!「GIVE SPACE」の方法論を学び、ポスト人間中心時代の暮らしや空間づくり、アーバンデザインに挑戦する4ヶ月間の実践型プログラムです。詳細・申込は下記特設HPをご覧ください。
https://aida-lab.ecologicalmemes.me/givespace

【一般社団法人 Ecological Memesについて】
エコロジーや生態系を切り口に様々な学際領域を横断する探究者・実践者が群れていく共異体として活動。人が他の生命や地球環境と共に繁栄していくリジェネレーションの時代に向け、個人の生き方やビジネスの在り方、社会実装の方法論を探索しています。
https://www.ecologicalmemes.me/

執筆編集 / 中村安里

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