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石室

誕生日は、石室の中で死んでいた。

バリ島の隣の小島、山の中腹。この土地の石を積み上げて作られた四角い石室のゲストハウス。

石たちは、やさしい。

外の気温が下がる夜は、その中は暖かくなる。
外の気温が上がり暑くなる時には、内部は涼しくなる。

自動的に、その内に住まう者を、守って居心地の良い空気にしてくれる。


船の移動でへとへとに疲れた初日の体、石室のベッドに横たわりうつらうつらした最中、はっとした。
身体が、振動している・・・・・
石たちに囲まれた波動で全身の細胞が細かに、とても暖かく。
全身の波動が、ピンクからだいだい色に。

良質のサウンドヒーリングを受けた時のよう、いやそれ以上だった。体験したことのない質の振動。

石たちが、わたしの身体を、四方から包んで癒してくれているのだった。


泣きそうになる。

この土地に元々あった石を使って建てたんだ、と
10年前の建築から携わった地元のワヤン。

土地の石が、この土地に住んできた人の手によって積み上げられ、
家となり、人を守ってくれる。

石の部屋に抱かれていると、小さな島の、その山全体に抱かれている気持ちになった。

深夜2時に大雨で目が覚め、テラスに出て風邪を受けながら瞑想。

海面から高く高くそびえ立つ火山。
揺れ動かない。揺さぶられない。
硬い石の、その奥の奥に海底から爆発して突出したマグマのエネルギーが保持されている。

人間達の刹那的な営みをよそに、山は、遥か彼方、永い時間軸でゆっくりと動いている。

島を取り囲む、万物ダイナミックに鼓動し揺れ流れ続ける、海。
対照的に、山は、静かに黙想する古老。
呼吸の速度と質は、深い深い海底の地中と同質。


石の、岩の、生き様を聴く。


お客さんは私一人で、
夜はワヤン達スタッフも自宅に帰宅し、
田舎の田舎、島の中腹で一人きりの夜。

石たちや植物たち、星と月と、虫たちの声、すべてに守られて、
夜を過ごす。

じっとした石たちは、やさしい。

動物や植物たちよりも、寡黙な分、そのやさしさを存在そのもので体現するよう。

物言わぬ石が
何を発しているか
その、限りなく静かで、けれど確かに波のある呼吸を、静かに聴いて、
その温かい治癒の波を受け取る。



ピラミッドの中に作られたのは王者が眠るための石室。

その構造は脳内の松果体構造と一致。

死んだように眠り、生まれる。



年末に、信頼する人たちのオンラインセッションで、「死の瞑想」をした。

わたしたち全員が、死んでしまう という世界へ意識を移行する。

そこで体験したものは面白かった。

私たち全員が死んでしまった世界では、
結局、私たちは大地と一体となり、今ある身体は失いこそすれ、いのちは地球の全体と繋がり、
繁栄して幸せに続いていくのだった。


死んだ後、私たちは前よりももっと生き生きとした。

本当に生きるためには、死ねることが大事だった。

本当に生きるためには、死の恐れの中に、飛び込んでいけばいいのだった。

結局、死んでも、死なない ということが分かったのだった。


死者たちの眠る石室は

最も神聖なピラミッド、松果体の中

太古の歴史を刻み込んだ、静かな呼吸の石たちに抱かれて

新たな、いのちをいただく。

恐れを解放していくために
何度でも、毎日でも、死のう と思った。



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