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くの字に伸びる草

わたしは普通の住宅街に住んでいる。決してそこまで田舎ではないのだけれど、この写真のような景色の場所までは徒歩15分くらいだ。そう思うと結構田舎なのだろうか。


ここは河川敷。この木々の向こうには大きな川が流れていて、場所によっては向こう岸にもたくさんの住宅が立ち並ぶのがはっきりと見える。

アスファルトの道の部分以外はあまり人の手が入っていないのか、ここに生えている木や草はかなりのびのびとしているように見える。無数の虫や鳥の声が聞こえてくる。今の時期はトンボとぶつからないように歩くのが結構大変だったりする。

気持ちがいいなぁと深呼吸しながらゆっくりと歩きたくなるこの道で、今まで気がつかなかった光景が目に入ってきた。

上に伸びる

わかるだろうか。おそらく上に上に伸びていた草が自身の重さによって倒れ、途中からまた上に向かって伸び始めているのだ。くの字になっている。

こんな姿は初めて見た。しかも、この一体にその倒れた草は何本も何本も、途中から上に向かって伸び始めている。

「たくましい」。

見た瞬間はそんな風に思った。倒れてもちゃんと上に向かってまた伸びる姿に、少し元気をもらいそうにもなった。

でも、少しするとなんだか当たり前のことのようにも思えてきた。逆に、上に向かってしか伸びられないんじゃないだろうか。ずっと倒れたまま、低いところで生き続けることなんてできないんじゃないだろうか。


人もきっと同じだ。しんどいなと感じている時期があっても、ずっと倒れたまま、低いところで生きることなんてできないんじゃないだろうか。この草がまた上に向かって伸び始めるように、人も時期が来ればまた勝手に光に向かって歩き出すんじゃないだろうか。

だから心配することはない。しんどい時期は何も心配せずに思い切り落ち込めばいいんだ。結局最後には、この光景になんとなく元気をもらうことになってしまった。


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