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《感想》水は海に向かって流れる

【水は海に向かって流れる】

▶︎映画



ものすごく好きなタイプの作品だった。
優しくて穏やかで、だけど深くて荒い。


色んな宣伝を見ていて広瀬すずが今までにない役だと言っていたのでどんなものかとドキドキしていたけど、全然違和感もないし広瀬すずに結構合った役だと感じた。

純粋無垢でどこにでもいそうな高校生を見事に演じきった大西利空。
映画を見たのが【真夏のシンデレラ】の後だったので、似ているようでどこか違う役柄を上手に演じたなあという印象。
もちろん撮影時期の関係もあるが、今作の何も知らないで幸せにかわいがってくれる家族に囲まれた少年・熊沢直達が今までの自分の家族を疑うような事実を知って戸惑うところから悩み、怒り、強くなり恋を知るところまで完全にやりきった。表情が少しずつ大人になるところまで等身大の彼の持つ成長と直達の心の成長が重なるようでこの約2時間で両面からものすごい成長を見せてもらった。


何が起こってもただ自分が黙っていれば平凡な日常は続く。榊千紗(広瀬すず)は不倫をして自分の元に帰って来なかった母(坂井真紀)に対して怒りや絶望など色んな思いを抱えていたけど、それを外には出さない選択をして生きてきた。ある種の逃げや諦めではあるが、それで心の平穏が保たれるのならばそれでいい。でも、そういう生き方をすることで他のことに対しても諦めのような絶望を感じてしまっていただろうし絶望したあの日に心は置いてきてしまっていたんだろう。
そこに直達(大西)がやってきて、榊さんとは違う感情の表し方をする姿を見て引っ張られて母に会いに行くことになった。母の人格は変わらないし生き方は変わらないからこれから先会うことはもうないかもしれないが、榊さんの心は絶望したあの日からきっと動き出して新たな一歩を出せるはず。
直達が成長しているようにみえて、本当は榊さんが止まったあの日から成長させてもらったんだよね。


今は無理だけど、もう少し大人になったら直達の想いがまっすぐに届きますように。




なんとなくまあいいか、と思うことが年齢を重ねるほどに増える。大人になった気でいたけど、それはただの面倒くさがり屋の逃げでしかない。心が本当にそれで良いと思っているのならそれでいいけど、そうじゃない場合、自分の知らないところで自分は止まってしまっているかもしれない。
そんなことを思った。


猫のムーが可愛くてたまらなかった🐱

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