ペニー・レイン Vol.8
ママが、歌手になるのを夢見て、イギリスからアメリカに渡ってきたのは、今から十七年前のことだった。ママは、十七歳だった。ニューヨークのクラブハウスでウェイトレスのバイトをしながら、ときどき歌を歌っていた。当時、〝パパ〟はそこでピアノ弾きをしていた。無口で、無愛想で、ピアノを弾くことしか興味がないかのように、生真面目な人だった。バーテン見習いだったぼくとも、言葉をあまり交わすことはなかったな。
「そんな彼が、ひと目で恋に落ちたのさ」
小さな顔に、長いまつげの大きな瞳。マーガ