見出し画像

#8 呼吸のクセを知って 良好な対人関係を

「あの人とは気が合うけど、この人とは、どうも気が合わなくて……」
なんてことがあるでしょ?
 この「気」を「息」に言い換えてみると、「あの人とは息が合うけれど、この人は息が合わなくて……」となる。つまり「気が合う、合わない」というのは、吐いたり吸ったりする呼吸のリズムが合うか、合わないか、とも言えるんじゃないかしら。

 ずいぶん前に私が通っていたヨガ教室の師である内藤晃代先生は、「呼吸の仕方で人の性格も定義づけられる」と言っていた。
 たとえば、楽天的な人の呼吸は、力強く息を吸って「ハッハッハッ」と笑うから、吐く息も強い。
 逆に、悲観的な人は、吐く息の方が長い。少し吸っては「はぁ~」、少し吸っては「はぁ~」と、短く吸って長く吐くから、体中の息が抜けちゃって力が湧いてこない。ため息になっちゃうのよね。
 怒りっぽい人の場合は、吸う息も吐く息も強くて短い。深く吸い込まないで、浅く速く息をするから、どんどん息が巻き上がっていっちゃって、頭に血がのぼりやすくなる。だから「カッカ、カッカ」する。吸う息も、吐く息も短いから「短気」というわけ。
 短気な人は、まず深呼吸するといい。一旦、ゆっくり深くお腹の底まで息を吸い込んでから、少しずつ吐き出すようにすると、からだ中に酸素がめぐって気持ちも落ち着いてくる。頭にのぼった「気」が鎮まるから、考えもまとまりやすくなる。

 こんな具合に、呼吸のクセを知っておけば、対人関係も楽になる。
 というのも、社会生活を送っていると、必ずしも気の合う人ばかりでなく、自分と異なる性格の人とも関わらなくてはならなくて、「コミュニケーションに一苦労」なんてこともあるはず。その場合は、相手との呼吸のリズムがずれていることが一因だったりもする。
 私にもあった。
20代の終わりごろ、インテリアデザイナーのもとで見習いとして就いていた時、師匠と「気(息)が合わなくて」ほとほと苦労した。
「きみこさん! これとこれとこれ、これもやっておいて!!」
畳みかけるように指示が飛んできて、息つく暇もない。やっとの思いで、
「これは、どのようにすればいいのですか?」
などと尋ねようものなら
「仕事は見て覚えるものよ!!」
ピシャリと言い放たれ、太刀打ちできない。
 語気強く、気迫に圧倒されて、言いたいことも言えず、聞くこともできなかった。ずっと緊張状態だったの。
 そういう時って、大抵、息を詰めている。手のひらをギュッと握り、無意識に身を固くして相手の気迫に押されないように必死で抵抗しているもの。そんなことが続いていたから、さすがの私も「まさかの心身症」になっちゃって、自分自身、驚いた。
 そこでヨガで実践していた呼吸法を、意識的に取り入れることにしてみたの。
 「1,2,3秒で体の中の息を吐ききって、3秒止めて全身に息を巡らせる。3秒かけてゆっくりと息を吸う…」という具合に。
 すると、体の調子が良くなったのはもちろんのこと、師匠と「対話」ができるようになった。時には笑いも生まれて関係性が上向いた。自分の呼吸のペースを保てるようになったから、仕事上のミスも減り、信頼されるようにもなっていった。
 だからね、もしも相手の呼吸が浅くて強く、速かったら、それは短気でせっかちな人だから、まずは相手の言いたいことを全部、言わせてしまうこと。息を吐き出させてしまうのね。そのあと深く息をして、ゆっくりとしたテンポで自分の意見を言うようにする。
 この時、相手の勢いに呑まれちゃうと、反動で、こちらも「ダーッ」と息を吐き出そうとするから、吐く息どうしがぶつかって、ケンカ腰になってしまう。
 だからあえて、ゆっくりと呼吸をして相手のリズムを崩していくの。そうすると、次第に相手の方がこちらの呼吸に引っ張られ、少しずつ息が合うようになってくる。

 落ち込みやすい人の場合は、吸う息よりも吐く方が長いから、体の息が抜けちゃって、腹に力が入らない。だからいつも、下を向いているのよねぇ。
そんな人との付き合いは、笑いを交えて話すといい。「ワッハッハ」と吐き出した勢いで、深く息を吸うことになる。お腹に息をしっかり吸い込めば、胸も開くから体が上を向いていく。視線が上がれば、自然と自信も備わっていく。
 そのきっかけづくりとして、落語や漫才に誘ってはどうかしら。同じタイミングで笑うことになるから、息が合いやすくなるはずよ。

 気難しい人は、息を詰めていることが多い。だから詰まった息を吐き出させて、深く息を吸うことが大事。落語などの笑いの場はもちろんのこと、歌うのもいいかもね。一緒に歌えば、自然と呼吸のリズムも同調して、笑顔も生まれるようになる。
 そのうち、「あ・うん」の呼吸になるかもしれないね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?