『月刊ギャラリー』(ギャラリーステーション)2023年1月〜3月号に「連続取材シリーズ〈座談会・春陽会の100年〉」という記事が掲載されました。司会は清水康友氏(美術評論家)で、春陽会からはこの会の長老であり顔でもある入江観氏(絵画部)及び高岸まなぶ氏(絵画部)、木村梨枝子氏(絵画部)、渡辺達正氏(絵画部)が出席しました。春陽会創立以来の歴史を現行会員が振り返るのですが、3月号の「第3回(最終回) 第30回展(1953年)以降の春陽会」の終盤で春陽会の現状が語られており、その部分を引用致します。なお、春陽会が洋画壇においてどういう役割を果たし、どういう洋画家、版画家を輩出してきたかについてはとてもここでは書ききれませんので「コトバンク」の項目をご参照下さい。なお、グーグル検索は全く関係の無い同名の法人が大量に出てくる上にウィキペディアの項目がいい加減なのでお勧めしません。
入江観氏が「僕は時々立軌会のパーティーでスピーチ頼まれますが、これは理想的な展覧会だというんですよ。」と述べていますが、立軌会とは1949年に牛島憲之や須田寿らが日展及び創元会を脱退して結成した美術団体で、多くの団体展と違い公募制を取らずに同人が認めた洋画家を迎え入れて新しい同人にする、というシステムを取っています。そのためか、作品の質は全体的に高いです。また、公募制の団体展と違い明確なヒエラルキーはありません。立軌展は毎年秋に東京都美術館で開催されていますが(昔は東京セントラル美術館で開催していました)、同人が三十数名しかいないので小規模です。主な同人に笠井誠一氏(代表)、赤堀尚氏、五百住乙人氏、池口史子氏(日本芸術院会員)、山田嘉彦氏らがいます。
入江観氏はその立軌会を理想としていて春陽会も少しずつ規模を小さくしたいと思っているのでしょう。
また、入江観氏の発言で「それから美術館の学芸員は団体展を観ないことがステータスだとなっている、」という部分が気になりました。多くの美術館学芸員が団体展など眼中に無いことは百も承知ですが、あの業界では団体展を観に行ったなどと口にするとバカにされて出世に影響するのでしょうか。大手だと特にそうでしょうが、美術館学芸員の鼻持ちならないエリート意識には正直、反吐が出ます。ただ、東京都美術館など、一部には立場上、団体展に足を運んでいる学芸員がいることも一応、申し添えておきます。
あと、入江観氏が「ただ僕は新しいこんなやつがいたのかという、新しい才能を発見する喜びは団体展に確実にあって、こんな新しい作家がいるのに見向きもしないのは残念だなと言う気持ちがありますね。」と述べていますが、これは本当にその通りで、春陽会にも無名ではあるものの優れた絵を描いている洋画家が何人かいます。特に、長谷川光一氏(絵画部会員)は洋画壇でも屈指の鬼才で、美術館学芸員が団体展を無視しているためにこういう画家が日の目を見ないでいることは美術界にとって大きな損失です。
長谷川光一氏についてはいずれ詳しく取り上げますが、取り敢えずここでは公式サイトのリンクを貼るにとどめておきます。氏の作品が数多く掲載されていますのでご覧下さい。
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