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現代アート系日本画家・堀江栞氏

今年4月某日に東京都立中央図書館に行ったら『堀江栞 声よりも近い位置』(小学館、2022年3月)という画集を見つけました。堀江栞氏(1992〜)という現代アート系日本画家の存在は知っていましたが、まさかこの若さで天下の小学館から画集を出版しているとは思いませんでした。しかも水沢勉氏(神奈川県立近代美術館館長)と『日曜美術館』でお馴染みの小野正嗣氏(小説家)の寄稿付きで。画壇系だったら余程の大物でない限り求龍堂や芸術新聞社が関の山なのに、現代アート系だったら注目されれば若手でも大手出版社から画集を出してもらえるのかと愕然としました。

一応、説明しておきますが、「現代アート系日本画家」とは日本画壇ではなく現代アート界に属して(現代アートギャラリーと契約を結んで)膠や岩絵具を駆使した絵画を描いている画家のことです。代表的な画家は岡村桂三郎氏や三瀬夏之介氏らですね。

そこで早速、私が住んでいる市の図書館で『堀江栞 声よりも近い位置』を借りました。そうしたら、以下の経歴が判明しました。

1992年 フランス生まれ
2010年 東京学芸大学附属高等学校卒業
2014年 多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻卒業

【個展】
2014年5月24日〜6月4日 特別展示会 堀江栞個展(加島美術)
2015年3月20日〜3月22日 堀江栞展(加島美術/アートフェア東京2015)
2021年3月16日〜3月28日 第6回世田谷区芸術アワード"飛翔"受賞記念 堀江栞個展「後ろ手の未来」(世田谷美術館区民ギャラリー)
2021年4月3日〜6月12日 五島記念文化賞研修帰国記念 堀江栞「声よりも近い位置」(space√K、√K Contemporary、加島美術)
2022年4月29日〜5月29日 「生誕110年 松本竣介 小企画:堀江栞―触れえないものたちへ」(神奈川県立近代美術館鎌倉別館)

【その他の展示】
2011年 第28回FUKUIサムホール美術展(福井カルチャーセンター)
2011年 碧い石見の芸術祭2011美術大学選抜日本画展(石正美術館ギャラリーほか)
2011年 第11回福知山市佐藤太清賞公募美術展(福知山市佐藤太清記念美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館ほか)
2012年 第29回FUKUIサムホール美術展(福井カルチャーセンター)
2015年 第6回東山魁夷記念日経日本画大賞展(上野の森美術館)
2015年 Young Art Taipei 2015(ATSUKOBAROUH arts drinks talk/Sheraton Grand Taipei)
2015年 「新しい才能のるつぼ〜NEW FACES 2015〜展」(ATSUKOBAROUH arts drinks talk)
2021年 「TAMA VIVANT Ⅱ 2021―呼吸のかたち・かたちの呼吸―」(多摩美術大学アートテーク)
2022年 「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち―」(上野の森美術館)

【賞歴】
2011年 第28回FUKUIサムホール美術展 佳作
2011年 第11回福知山市佐藤太清賞公募美術展 特選 板橋区長賞
2012年 第29回FUKUIサムホール美術展 奨励賞
2015年 第26回五島記念文化賞美術新人賞(2016年に奨学生としてパリで1年間の滞在制作をおこなう)
2015年 第6回東山魁夷記念日経日本画大賞展 入選
2020年 第6回世田谷区芸術アワード"飛翔"美術部門
2021年 「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち―」 VOCA佳作賞
2021年 第32回タカシマヤ美術賞

他にも多和田葉子『献灯使』(講談社、2014年)など、装画の仕事を担当したり、文芸誌にエッセイを寄稿したりしています。また、2017年には『ブレイク前夜〜次世代の芸術家たち〜』(BSフジ)で取り上げられています。あと、この画集に載っていない最新の仕事については堀江栞氏の公式サイトをご覧下さい。注目すべきは2023年4月から多摩美術大学日本画科非常勤講師を務めていることです。

堀江栞氏はもともと有機溶剤に対するアレルギーがあり、油絵具やアクリル絵具といった化学物質が入った画材を使えないために膠や岩絵具を駆使する日本画の道へ進んだのですが、VOCA展佳作賞を受賞したり古美術商・加島美術(東京・京橋)の現代アート部門である√K Contemporary(東京・神楽坂)で個展を開催していることなどを考えると現代アート系日本画家であることは明白です。だからといって決して前衛的な画風ではありません(作品画像はネット上にはあまり出てこないので出来れば画集を図書館で借りてご覧下さい)。仮にこの画家の作品が院展に展示されていたとしても特に違和感は無いでしょう。ただ、この画家が院展に所属していたら若くして小学館から画集が発売され、世田谷美術館や神奈川県立近代美術館で個展が開催されることは無かったと断言できます。このように、日本の美術界には現代アート界に属しているというだけで下駄を履かせてもらえる構造が間違いなく存在します。それを解明していくことが私のライフワークの一つです。

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