あいいろ

「V6」の楽曲のタイトルからインスピレーションを得た短編小説を書いています。あくまでも…

あいいろ

「V6」の楽曲のタイトルからインスピレーションを得た短編小説を書いています。あくまでも個人の感性の赴くままですので、作品の内容と曲の内容は必ずしもリンクするものではありませんのでご了承ください。

最近の記事

Portraits

 昭和〇年。まだ、戦争なんて海の向こうの出来事だと思っていた頃。俺とマチ子さんが出会ったのは、そんな普通の、何でもない夏の日の午後だった。  カランカラン・・・ 「いらっしゃいませ」 軽やかな音に続いて扉が開き、額の汗を花柄のハンカチで押さえながら一人の和装の女性が入ってきた。 「予約はしてないんだけど、今からお願いして宜しいかしら。お見合い写真を撮りたいんだけど」 「えぇ、別に構いませんよ」 とは言ったものの、俺の目の前にいるのは年の頃60代といった感じのご婦人、のみ。ん

    • Perfect Lady

       リビング兼仕事部屋でパソコンに向かっているとスマホが鳴った。何だよ、せっかく調子出てきたところだったのに。キーを叩く手を止めて画面を見る。そこには、心当たりがめちゃくちゃありすぎるほどの発信者名が表示されてた。あーあ、今夜もやっぱり、きたか。 「はい、もしもし。あ、わかりました。えぇ、今から向かいますんで。いつもすみません。はい、宜しくお願いします」 パソコンはそのままつけっぱなしにしたままにして、すっかり冷めたコーヒーを一気に飲み干すと、俺は上着をひっかけてから急いで家を

      • コバルトブルー

        「よぉ、飲んでるか?」 「はいはい、しっかりいただいております」 「そっか。どうだ、彼女の友達もなかなか美人揃いだろ。お前もいい相手見つけろよ」 「どうも」  はぁ? ふざけんなよ。別に俺は結婚できないからしてないってわけじゃないんだよ。したくなくてしてないだけ。そんなの、俺の勝手でしょ。だいたいさぁ、その歳で独身じゃあ寂しいでしょ、みたいなの、やめてくれる? 今時そんなの古いんだよ。それにさぁ、そのすぐマウントとりたがるところ、俺、ホント昔から苦手なんだよねぇ。  兄貴の

        • A・SA・YA・KE

           部下が半泣きで俺のところにやってきたのは終業時間の10分前だった。 「係長、やばいっす。俺、やっちまいました・・・」 おいおい、何だよ、いったい。その様子、マジ嫌な予感しかしないんですけど。 「え、どうした。何やらかした?」 まずは、平静を装って聞いてみる。 「実は、〇〇商事に提出する書類、すっかり忘れてまして。すみません!」 へぇ。で、それ、今言う? まぁ、忘れちまってたのはしょうがない。誰にだって失敗はあるから。さて、どうするか。 「で、それって、いつまでに出さなきゃな