それは、茄子ちゃんが一番言われたかった言葉なのかもしれない
先日、娘の幼稚園で育てた茄子の鉢植えについて書いた。
今回の記事はその続編である。夏休みということで自宅に持ち帰った茄子を待っていたのは、ベランダ菜園ならではの試練だった──。
……と、なんとも大袈裟に書き始めてしまったが、おそらく “あるある” なのだと思う。
ひとつ目の試練は「西日強すぎ問題」だった。幼稚園に居たときの頻度で水やりをしていたら、2日目には萎れてしまったのだ。
ベランダが西向きなので、夕方の日差しが強く、あっという間に土が乾いてしまっていた。茄子にとっては過酷な環境だったであろう(ごめんね)。
これは午後3時の水やりを追加することで改善した(何度萎れても復活する茄子の健気さに救われる私)。
ふたつ目の試練は「害虫問題」だ。ある日、茄子の葉を見てみると、蜘蛛の巣のような白い糸が張り巡らされていた。
「昨日はこんなのなかったのに!」
よく見ると、1mmにも満たない小さな虫が無数にいて、思わず息をのんだ。調べてみると「ハダニ」と呼ばれる虫らしく、歯の裏側から栄養を吸収する害虫とのこと。雨が直接当たりにくいベランダ菜園でよく見られるらしい。
「ママ、茄子ちゃんに蜘蛛の巣あるよ、どうして!?」
「いや、これは違う虫やで、ママ、やっつける!」
ちなみに私は虫が苦手だ。冷や汗が止まらなかったけれど、茄子ちゃんを守るという使命感が自分を奮い立たせた。
その日から、いろんな撃退法を調べては試した。けれども、全然歯が立たない。やっつけたと思っても、繁殖力が強すぎて、どんどん出てくるのだ(悲鳴)。
最終的に辿り着いた重曹スプレーはとても効果的だったけど、ハダニが全滅したであろう頃には、葉が全部落ちてしまった。散々栄養をとられて、弱ってしまったのだ。
「知っていたら防げたのにな。」
そう思うと、悔しくてたまらなかった。娘もショックを受けていたけれど、私は寝込むほど凹んだ(気づいたら思い入れが……)。
「もう、このまま枯れちゃうんだろうな。」
そう思いつつも、水やりは止めなかった。葉が落ちても、まだ根が生きているかもしれないから。
枝だけになってしまった姿は見るに耐えなかったけれど、ハダニが居ないかチェックするのも、止められなかった。
そして、ある日奇跡を見た。葉が落ちてしまってから1週間経った頃……なんと、新しい葉が出てきたのだ。
「これ、雑草じゃないよね?」
思わず二度見したけれど、それは茄子の枝から出ていた。
「間違いない!」
娘に報告すると、
「茄子ちゃん、虫に負けなかったね!」
と語りかけていた。それは、茄子ちゃんが1番言われたかった言葉なのかもしれない。
葉を出すその瞬間まで、元気だと知らせる術がなかったのだから。ふれあい栽培、凄すぎ。こんなドラマチックな夏を過ごせるなんてね。
その後、新しく出てきた葉はどんどん育っている。ハダニも今のところ居ない。
「このままいけば、秋茄子も食べられるかな?」
なんて思ってみたが、それは簡単ではなさそうだ。そのためには、育ちすぎた枝を剪定したり、大きな鉢に植え替えたりと、なかなか手がかかるらしいのだ。
虫が苦手で土いじりなんてしてこなかった私には、ハードルが高すぎる。わが家の狭いベランダには、大きな鉢なんておけないしね。
とにかく、生きてさえくれたらいいよ。それですら、簡単なことではないのかもしれないけれど──。
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