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「仲直りしたのは知ってる。なんで喧嘩したの?」

令和初・史上最大の夫婦喧嘩をした。

最初に断っておくけれど、普段は「ラブラブ」と言っても差し支えないくらいには仲の良い夫婦だ。

喧嘩のきっかけは些細なことだが、さまざまな悪条件が重なってしまった結果、大泣きしながら不満を言い合う羽目に……1時間以内には仲直りしたものの(早い)、あまりの泣きっぷりに、私のまぶたはパンパンに腫れた。

「ママ、お顔どうしたの?すごく苦しそうだよ?」

翌朝、寝床から出てきた娘に、いち早く指摘された。鋭い。いや、私のまぶたは誰が見ても分かるレベルに腫れていたのだ。

しかしながら、朝は忙しい。娘はひどく心配していたけれど、「大丈夫だよ」とだけ伝えて、幼稚園に送り届けた。

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朝は濁してしまったけれど、娘は簡単にごまかされるタイプではない。それを知っていたから、打ち明けることにした。

「昨日の夜、パパとママ、喧嘩しちゃったんだ。それでたくさん泣いたの。」

「私が寝てるときに?全然知らなかったよ。」

「うん。でも、もう仲直りしたから大丈夫だよ。」

「仲直りしたのは知ってる。なんで喧嘩したの?」

ギクッとした。まだ5歳になったばかりの娘に、真顔で言われたのだから。

そうよね。結果だけ伝えられても納得しないか。

娘にも分かりやすいように伝えるには、どうすればいいのか?必死で考えた私は、喧嘩のきっかけを説明した。

仕事後に買い物をしてきてくれた夫に「ありがとう」と言わなかったこと。晩ごはんで使ったお皿を水につけておらず、機嫌を損ねたこと(お皿洗いの担当は夫)。

(こう書くと私だけが悪いみたいだけれども、実際にはもっと複雑で……つまりはお互いへの感謝や配慮が足らなかったのだ。)

「パパもママも、たくさん泣いたんだよ。」

「そうなの?パパが泣いたところ、見たことない!」

娘はとても落ち着いていて、女友達のようだった。


前日の喧嘩で涙腺が壊れていた私は、娘の前で何度も泣いてしまった。ママの涙を見るたびに、

「昨日の喧嘩、思い出しちゃったの?」

と優しく声をかけてくれる娘。

まだ幼い娘に心配をかけてしまうなんて申し訳なくて、それがまた泣けた。

夜になって夫が帰宅すると、

「昨日ママと喧嘩したんでしょ、ママすごく泣いてたんだよ」

と言いに行き、パパにフォローを求めた。娘の優しさに救われた1日だった。

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それからと言うもの、娘は晩ごはん後の片付け時に、

「ママ、お皿ちゃんと運んだ?」

と確認するようになった。さらに、

「ママとパパ、喧嘩したとき、ちゃんと謝った?その後は何て言ったの?」

などと聞いてくることもあった。

喧嘩をした当人たちは忘れかけているのに、娘が何度も蒸し返してくるのが面白い。

「もう2度と喧嘩しないって約束した?」
「私が起きてるときに喧嘩したら、止めるからね!」

……何も言えない。ママが泣いていたこと、その疲れを引きずっていたことが、よほど悲しかっただろう。ごめんよ、ごめん。

そんな風に申し訳なく思っていたら、

「ママ、喧嘩して泣いたとき、鼻水出た?このティッシュたくさんあるから、使っていいよ?」

と自分のポケットティッシュを差し出してきた。挙げ句の果てには、

「パパとママ、今日は喧嘩しない?」

あれ、期待してる?親の喧嘩をネタにしてる?そんなにティッシュを使ってほしいのか?

夫婦で笑ってしまった。もう喧嘩は気まずい思い出ではなくなった。娘のおかげで、笑い話になった。子どもってすごいな、感心せずにはいられない。

ありがとう、ありがとうね。

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