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娘の「ママのお顔、見たい」に救われた夜

「ママの顔かわいい、大好き」

5歳の娘が毎日のように言う。それはそれは熱烈に。

お出かけのためにメイクをしていようが、風呂上がりの素っぴんだろうが、この顔が好きらしい。

無償の愛なのかもしれない。私自身もそうだった。かつて5歳だった私も、

「お母さんの顔かわいい、大好き」

そう思っていたから。


そんな私も、自分の顔を好きになれない時期があった。小学校6年生、まさに思春期の入り口だった。

おしゃれな髪型に興味を持っても、なぜかうまくいかない。眉毛がボサボサだから手入れをしたくても、学校で怒られるのは嫌だ……そんなデリケートな時期だった。

また私はことあるごとに、顔についていじられた。そのほとんどが同じクラスの友人によるものだったが、顔のことを悪く言うなんて、今改めて考えても吐き気がする。

そして困ったことに、このトラウマは何の前触れもなく背後から襲ってくる。そうなったら最後、震えが止まらなくなるのだ。


これを書いている今日、まさにそんな夜だった。

「嫌だなぁ、思い出さなければ、大丈夫なのに。」

そう思いつつも、黒い何かに飲み込まれそうになっていたそのとき、寝室から娘の声がした。

「ママのお顔、見たい」

顔をいじられた思い出に侵食されながら、その顔を見たいという声を聞く。私の脳は、完全にパニックを起こしていた。

呆然としながら、娘の隣で横になった。それをじっと見つめていた娘は、その柔らかな手で私の頬に触れ、そのまま眠りについた。

このとき、私を覆い尽くしていた黒いものが、少しだけ遠のいた気がした。

そうよね、誰がなんと言おうと、娘は私を愛してくれている。かつての私も同じだった。

祖父母の家に泊まったはいいが、母に会いたくなってしまったとき、私も同じように思っていた。

「お母さんの顔が見たい」

これはやっぱり、無償の愛だ。消え入りそうになっていた私が、輪郭を取り戻した。

ママ、あなたに救われたよ。これは5歳という年齢によくある現象なのかもしれない。思春期になって反抗期が来たら、ひどいセリフを吐くのかもしれないね。

それでも、ママは忘れないよ。今夜、あなたに救われたことを。こんなママを愛してくれて、本当にありがとうね。

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