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即興小説「初恋ガードレールに刺さる」


イラスト Knight Monkey


傷を癒すために小説を書くように誰かの物語をなぞることで傷を癒そうとすることを恋と呼ぶ習慣が駅前に溢れている時 僕たちは、ガードレールを列車にして走り始めるだろう。

この白線はどこまでも続いていくからずっと歌詞を書いていけるね

ガードレールをなぞりながら

一人で壁を歩くように生きてきた

後ろからも前からも 誰も来ないから楽だった

自分一人の道は楽だったよ

歩道を歩く小学生が羨ましそうにこっちを見ている

でも君はこっちに来ちゃダメ

普通の道を

歩きなさい

誰かが作ったガードレールじゃなく

ガードレールに守られようとするのでもなく

自分の道を

歩きなさい

自分の道なら誰かの道と繋がっているから 広いから大丈夫

自分だけの道は

狭すぎる

その歌は誰にも理解されないだろうからやめておきなさい

先生になることが夢だった

勝手に夢を叶えるみたいに歌詞を硬い白線に置いていく

毒を吐くように歌詞を連ねる

その黒い文字たちが後ろから追いかけてくるから捕まれば死ぬからどこまでも加速することができた

矛盾を利用して魔法使いになってやる

悪魔の快楽が楽しかった

次から次へと気持ちいいことだけを重ねてやる

薄っぺらな歌詞が追いかけてくる

こんな歌で満足できるもんか

自分が吐き出した歌 それ自体が追いかけてくる

誰かが作ったガードレールの上を走っていく

誰かが作ったガードレールなのに

ゴッホの絵のようにそれに名前はついていない

名前のないものが大好きだ

死人の背中に乗るように翼になる

一番悪いやつを世界から見つけてやる

そいつを食べ尽くすことで

世界をいい世界に変えてやるんだ

お菓子屋の息子が愛を叫ぶ

小学生が羨ましそうにそれを見つめる

君が羨ましいのは 僕の生き方じゃない

僕がお菓子屋の息子であることだ

中学2年生は走り出す

誰かの作ったカードレールの上を

名前がないけど安心できるから大丈夫

名前がないほど安心できるから

僕の名前を 誰か 切り裂いてください

自分より強いやつを探して白い線の上をただ走る

走るたびに硬い鉄の音か聴こえた

僕自体が壁を走る電車だ

僕を走らせるのはスマホから聴こえる音楽

音楽が自然だから僕は大丈夫だよ

もう自然なんてなくたって大丈夫

つまりは 誰一人 この世界に住んでなくたって僕は生きていけるから

僕は自分の歌から逃げたいだけだから

白も黒も何もかも砕け散る

ドリフトでガードレールに女の子が突っ込んでくる

それを一目惚れと言うのであれば それは恋であろう

初恋ガードレールに刺さる

「一人ぼっちにさせない」

女の子はただ一言 そういうみたいに こっちを見ている

いや違う

それは僕の 勘違いかもしれない

でもそれでもいいじゃないか

僕が君を一人ぼっちにさせない

ガードレールは白い竜になり空に舞い上がっていく

ネバーエンディングストーリー

本当の僕たちの歌が聞こえるよね?

もう 神隠しにだって会わなくていいぐらい

自分を偽装する必要さえない

これからはこの広い道の上でデートをしよう

散歩という名前のデートにコンビニのコーヒーを幸せのために武装する

世界中から戦争をなくすために僕たちがせめて 幸せでいよう

誰のことも 傷つけなくていいように

そう思いながらも ガードレールに戻っていく毎日の中で

また女の子がドリフトで突っ込んでくる

好きな子が僕の逃げ道を破壊する

空みたいに大きな道が広がっていた

僕は多分君を愛している

でもどうしてもそれに慣れることができない

ずっと地獄みたいな道だったから

どうしても幸せに慣れることができない

またガードレールに帰っていく

白い線の上を走る歌だけが美しさへと加速していく

たくさんの小学生たちが僕の歌を聞きながら自分の道を歩いて行く

それたけでいいじゃないかと今日もガードレールの上で歌う

ドリフトで女の子が突っ込んでくる

「あなたが幸せじゃないのにどうして翼をもぐみたいに歌がつくれるのよ!!」

歌は破壊されることで 新しい歌になる

僕は好きな女の子の歌を歌い始める

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#即興小説初恋ガードレールに刺さる


僕が僕のプロでいるために使わせて頂きます。同じ空のしたにいるあなたの幸せにつながる何かを模索し、つくりつづけます。