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朝帰りの気温
「君はとても人間くさくていいね」
渋谷の薄暗い和食居酒屋で薄い会話を重ねて、なんとなくお互い酔っ払って、タクシーを横目に散歩をしようかだなんて言って、なんとなく足取りを合わせて。
午前1時の三軒茶屋はぽつりぽつりと明かりが灯っていて、私たちの足取りは自然と緩くなった。
彼のうしろに続いて階段を静かに上がっていると
「君はとても人間くさくていいね」
と、笑われた。
白いシーツ、汚したら嫌だなと思った。
まあ、これから汚すようなことするんだけれども、なんて思った瞬間に手を引っ張られる。
「別にあなたのことなんか好きじゃないのにな」と吐くように言ったら
君は性に貪欲だからと返されて見事にノックアウト。
朝の4時、うっすら明るくなってきた三軒茶屋の街並みはすごく清潔感があって嫌になった。
お腹減ったなと思いながらもうひとねむりつくためにあなたの腕の中へ帰る。
ふふ、と頭上で笑い声が聞こえて
ふふふ、と返す。
また眠る。
「モーニング食べようか」と無理やり起こされて
近くの喫茶店へ行き、あなたはニコニコしながらコーヒーを飲む。
その横顔を見ながらそろそろエンドロールが流れそうだなとぼんやりと考える。
昨日塗ったネイルが剥げていて、私はもう可愛くない。
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