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鹹豆漿(台湾の豆乳スープ)の構造

鹹豆漿(シェンドウジャン)という台湾の朝食の定番がある。いうて豆乳を温めたものに塩味&酢味がついているというシンプルなものであり、最近では日本でもこれの専門店などが出たりしている。(東京豆漿生活、台湾豆乳大王など)

専門店で食べるとびっくりするぐらい美味しいのだが、自宅で作ってみると当たり外れが大きい。自宅でもKALDIの鹹豆漿の素を使えばだいぶ美味しいので正直レシピとか面倒なことをやらずにそれでもいいのだが、一度きちんと調べてみたいと思ったので書こうと思う。

料理の構成要素

最低限必要なもの
・無調整豆乳(調整豆乳で代用はできないと思った方がいい)
・酢(白い普通の酢でも黒酢でもどちらでもいいらしい)
・塩分(醤油または塩)
※基本的には醤油を使っているレシピが多いが、塩を使うレシピもある

できればあった方が間違いないもの
・干しエビ(ただのエビでも桜エビでもよい)
・ネギ(青ネギでも長ネギでもよい)
・ザーサイ
※ザーサイに関しては使う前に水につけて塩抜きするパターンが多い

好みによって入れたり入れなかったりする
・切り干し大根
台湾系のレシピではたまに入れている。

・油條(揚げパン)
あったら間違いないが、別にスープの中に一緒に入れなくてもいいかなと思う。揚げパンをちぎってはスープにつけて食べ、とすると美味。フランスパンなどでも代用できる。

・ラー油
・ごま油
・パクチー
このへんは全部入れてもいいし全部入れなくてもいい。トッピング枠である。お好みに応じて。

構成要素の比率

構成がシンプルな料理ほど比率勝負のところがある。例えば卵かけご飯だって醤油の多寡によって全然別の味になってしまう。この鹹豆漿も比率勝負が著しいのでいくつか参考になりそうな比率を調べてみた。

しかし例によって例のごとく、中国系レシピサイトだとマジで「適量」としか書いていないのである。台湾ならちょっと書いてあるかなと思ったら台湾系でもそうでもなかった。

台湾繁体字で調べる場合は「鹹豆漿 食譜」、中国簡体字で調べる場合は「咸豆浆 做法」で検索すると出てきやすい。なお、わかりやすさのため「台湾の朝食」と書いたが中国でも普通に食べられているという。

https://victoriatpe.pixnet.net/blog/post/155898482
豆乳 400ml
醤油 小さじ4分の1
白酢 大さじ1
干しエビ 小さじ2
ザーサイ 大さじ2
青ネギ 1本
(他一部省略)
https://cook1cook.com/recipe/49828
豆乳 500ml
塩 小さじ2
白酢 30グラム
干しエビ 6匹
干し大根 30グラム
青ネギ 2本
(他一部省略)
https://chefgohan.gnavi.co.jp/detail/2647/
豆乳 200ml
醤油 小さじ2
黒酢 小さじ1.5
ザーサイ 小さじ1
(他一部省略)

見ての通り豆乳と醤油の比率がレシピによって全然違う。
一番上は豆乳500mlに対し醤油小さじ4分の1、一番下は200mlに対し小さじ2。20倍ぐらい違う。どうしたものか、と思ったがレシピをよく読むとヒントがあった。

ザーサイである。
一番上のレシピはザーサイをかなりの量入れており、下のレシピの4倍近くある。ということは、ザーサイ+醤油の塩分量の合計で調整しているのではないか??

ザーサイの塩分量が20グラムに対し2グラム前後、つまり10%程度であり、醤油の塩分濃度は15%程度である。このあたりを計算すればだいたい適切な量が算出できるんじゃなかろうか。塩分濃度に直すと小さじ0.6~0.8相当ということになる。
しかしそうすると2番目のレシピがあまりにも塩分過多な気がする。

結論:分量は好み!!!

ちなみに本もいくつか読んでみたが、書籍のレシピだとより塩分控えめだったりする。なのでこのあたりはそれぞれの減塩度合いに合わせて調整するのがよさそうだ。伊達に「適量」と書かれていたわけではなかった。

しいていえば平均的なところを取ると以下のような感じになると思う。500mlなのでおよそ2人分と考えてもらえればよい。

豆乳:500ml
塩分:醤油+ザーサイであれば合計が大さじ1~2ぐらい
   塩であれば小さじ0.5~1ぐらい
お酢:大さじ1前後、0.5~2までいけるっぽい

作ってみたところ、塩の方がちょっとの量の変化でだいぶ味が変わるため、塩だけで作る方が難易度高いかもしれない。塩で弱めに塩味をつけて、醤油やザーサイで微調整するというのもよいかと思う。

料理の流れ

<超シンプルバージョン>
1.豆乳を鍋で90度ぐらい(沸騰しない程度だがふつふつする温度)に温める

いや?これすらも電子レンジでいいかもしれない。と思って調べたらリュウジ氏がレンチンで作っていたのでその加熱時間を参考にしてみた。

<超シンプルバージョン・改>
1.耐熱椀に豆乳を入れて、500~600ワットで2分ぐらい温める(400ml作る場合はもう少し長くていいかも。2分は200ml前後の際の温度)
2.そこそこ温かいな、と思ったら醤油とお酢を前述の比率で入れて混ぜる

完成。これでいいのか?!
より味にうまみを足したい場合は白だしや鶏ガラスープの素などを足すと失敗しづらいと思う。

<こだわりバージョン>
1.青ネギを細かく切る(小口切り)
2.ザーサイも細切れにする
3.フライパンに油を少し引き、干しエビを炒めて香りを出す(干し大根を使う場合はここで同じく炒める)
4.お椀に調味料(醤油or塩、お酢)を入れておく
5.豆乳を鍋で90度ぐらい(沸騰しないがふつふつする温度)に温める
6.温まったらお椀に豆乳を入れる
7.ちょっと待ってからやさしく混ぜる
8.青ネギ、ザーサイ、揚げパン、炒めた干しエビなどを乗せる
9.仕上げにラー油やごま油をかける

実際にはこれらのハイブリッドとして、豆乳を温めるところだけ電子レンジでやってもいい。なんなら「干しエビを炒めて香りを出す」工程も電子レンジで置き換えられるという。600Wで20秒温めるとよい。

参考文献・サイト

『台湾スープ』著:山脇 りこ
鹹豆漿とか関係なく正直万人にお勧めしたい本。この本のレシピで初めて塩で作る方式を知り、「塩でもいけんの!?」と思い深く調べてみようと思った。ほかのレシピもあまりにも秀逸すぎるので本当に万人に買ってほしい。ここまでお勧めすると逆にAmazonのリンクが貼れない。

https://chefgohan.gnavi.co.jp/detail/2647/
ガチの四川料理店『老四川 飄香』のシェフが書いているレシピ(日本語)。もはやこれが正解でいい説すらある。

https://www.futari-gohan.jp/soy-milk-soup/
お手軽ながら本格的な味わいが楽しめるレシピ。干しエビをレンチンで温めている点がユニーク。

https://www.youtube.com/watch?v=hlf3qCl5KYM
バズレシピのリュウジ氏のアレンジ鹹豆漿。しめじや白だしなどユニークな材料を使っている。

『料理の意味とその手立て』著:ウー・ウェン
普通にめちゃくちゃためになる本。ここまで言っていたことと実は全然違うのだが、「豆乳はむしろ10分ぐらい煮込んだほうがうまみが出る」と書いてある。たしかに台湾の豆乳屋さんとかずっと豆乳を熱しているわけで、そこで水分が飛んだりして濃厚になっている可能性が高そう。
あとお酢も必須みたいに書いたがこの本だとお酢を使っておらず、塩しか使っていない。Winnieさんという台湾料理のレシピ本の方もお酢はお好みでと書いてある。なので「塩味だけ」という鹹豆漿も実はあると思う。

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