見出し画像

咸肉(中国式塩漬け肉)の構造

中国料理で使う食材に「咸肉」というものがある。中国式の塩漬けのお肉である。中国料理をいろいろと調べていくとどうやらこれがあるだけでかなり料理のバリエーションが増えるらしい。咸肉と青菜の炊き込みご飯(上海咸肉菜飯)などは大層美味しいという。

しかしこれがなかなか売っていないのである。新大久保や池袋などの中華食材店に行ってみたが売っていないような気がした。単に見落としているだけで、もう1回探したらあるかもしれないが、外出が憚られるこのご時世、わざわざあるかわからないお肉のためだけに出かけるのも少し気が引ける。

というわけで自作してみようという考えに至った。
なお、コロナで病院リソースが逼迫しているので、万が一お腹を壊すと一大事になるのでけっこう慎重目にやったほうがよさそうな気がする。以下の記事を読んで試したとしても自己責任でお願いします。

料理の構成要素

最低限必要なもの
・豚バラ肉(塊肉でないとダメ)
・塩(肉の重さに対して3%程度)

基本的にあった方がいいが最悪なくても成立はする
・花椒または五香粉(いずれにしても大さじ1程度)
※花椒はホールを使うがパウダーでもいいと思う、なんならそのほうが肉に染み込みやすそうな気がする

好みによって入れたり入れなかったりする
・白酒(大さじ1程度)
※「消毒」「肉の臭みを消す」「香りづけ」「塩やスパイスが肉によくくっつくようにする」という目的があるらしいので私は入れたほうがいいと思う。でも使わないレシピも多い

・他のスパイス(シナモンや陳皮など)
とことんこだわる場合は後述の「塩とスパイスを炒める過程」で入れるらしいが、正直それが塩にどう影響あるのか微妙なので私は入れなくてもいいかなと思った。

料理の流れ

<超シンプルバージョン>
1.肉に塩をまぶす(全部の面にまんべんなくすり込む)
2.肉にキッチンペーパーを巻く
3.トレーなどに入れて(密閉せず)冷蔵庫に保管
4.肉からドリップが出るので毎日キッチンペーパーを取り換える、トレーにたまっていたらそれも捨てる
5.1週間ぐらい経てば完成
<本格バージョン>
1.塩と花椒(または五香粉)をフライパンで軽く炒る
2.肉に白酒を塗る(全部の面に塗る)
3.肉に炒った塩とスパイス(1番)を全部の面にまんべんなくすり込む
4.肉にキッチンペーパーを巻く
5.トレーなどに入れて(密閉せず)冷蔵庫に保管
6.肉からドリップが出るので毎日キッチンペーパーを取り換える、トレーにたまっていたらそれも捨てる
7.1週間ぐらい経つとドリップが出なくなる
8.肉を外に干す(2週間ぐらい)、干し網などに入れると便利
9.肉がカッチカチになったら完成

実際に私が作った方法として本格バージョンから8番・9番の工程を抜いたもの、つまり外で干す工程を取り除いたものである。あと、白酒も手に入りづらいのでかわりに紹興酒を塗った。

外で干すとなるとやはり他人の目が気になるし、いろいろホコリとか飛んで来たらどうしよう、とか鳥や虫が来たらどうしよう、とか気になるので。アメリカで自作した中国人の方によると野良のアライグマに奪われた例があるらしい。

レシピを調べるとほとんどの場合「干せ!!!」と書いてあるが結果的には干さなくても冷蔵庫内の乾燥で十分うまく仕上がった気がするのでよしとしよう。

なお、冷蔵庫内で乾燥・熟成させる期間については1週間としたが、別に5日間ぐらいでもそこそこ仕上がっているし、2週間置いてももしかしたらいいのかもしれない。
ただ、時間が経てば経つほど菌が繁殖するリスクはあるので、自分が「もうええわ」と思ったタイミングでその時食べる分を切って、あとは薄切りなど使いやすい状態にして冷凍保存するのがベターではないかと思う。

ちなみにベーコンの仲間なので生食は厳禁で、きちんと火を通して食べること。より正確にはパンチェッタというイタリアの塩漬け肉がもっと近い。ベーコンとパンチェッタは燻製している・していないという違いがあり、中国でも同じ関係性が腊肉と咸肉で言えるのだが、それはまた別の話。

その他の論点

・保存時ラップするかどうか問題
肉を冷蔵庫で熟成させる際に「ラップをするべき」という意見と「ラップはせず空気が通るようにすべき」という意見の2つがあるらしい。
個人的には肉のドリップが腐敗や臭みの原因になってしまうと考えており、ラップをするとドリップが中にたまってしまいよくないので、しない方がいいのでは?と考えている。
・塩抜きするかどうか問題
レシピの中には「使う前に水で洗って塩抜きをしてから使う」という記載もしばしば見られるので、最初は私も塩抜きをして肉野菜炒めを作ってみた。
それでも十分美味しいのだが「まあそこそこかな」という味わいで、洗った際に少し塩味・スパイスの風味も抜けてしまったのかもしれない。
試しに塩抜きせずシンプルに焼いたらありえないぐらい美味かったのでこの分量だと塩抜きしなくてもいいのかもしれない。

参考文献・サイト

https://www.agriharvest.tw/archives/31186
台湾で自作しようとした人が書いた記事(※中国繁体字)。本記事の作り方は結果的にほぼこれに近い。台湾は雨が多く暑いので、普通に肉を干すと腐らせてしまうため冷蔵庫で作りました、という記事だ。Google翻訳すればだいたいの意味はつかめるはず。

https://youtu.be/ACLjQ4stkWs?t=86
中国のテレビの映像(違法アップなのかどうかは確かめようもない。なお中国語)で、自家製で咸肉を作る方法を紹介している動画。なんとなくの料理手順の雰囲気をつかむにはこれが一番なように思う。

https://mounungyeuk.hatenadiary.jp/entry/2017/11/20/172809
日本人で咸肉を作ってみたという記事。前編と後編に分かれているが、後編の切ったときの断面の感じ、これがまさに自分が作ったときの状態に近い。ただ外側に関してはもう少しおとなしい見た目の段階で切った。
あといろんな流派があることに触れられていて、そのあたりも含め非常に参考になる記事。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?