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部下から「辞表」を渡された日が、僕の生涯「最高」のバレンタインになった。

「雅樹さん、今ちょっと時間良いですか?」

会社のデスクに座りパソコンを打つ僕に声をかけたのは
僕と歳の近い会社の仲間だった。

時間は朝の8時頃。

こんな風に声をかけてくるなんて、珍しいなぁ。

そんなことを思いつつ

「うん、良いよ。どうした?」

そう答える僕。

すると彼の口から、

「仕事、辞めさせてもらいます」

という言葉が。


そして渡された「辞表」と書かれた封筒。



いつかこういった状況になる。
と、ある程度覚悟はしていたものの、
とてつもない衝撃だった。


人生で初めて「辞表」を渡された。


意味を理解し、受け入れ、言葉を発するまでに
多分3~5秒くらいはかかったと思う。

それくらいのショックがあった。

後日、彼とは色々な話しをした。
こうなったからこそ腹を割って話せることもお互いにあった。
本当は一緒に働く仲間の内に、こういった関係になれたら良かったが、
明らかに僕の力不足。配慮不足だった。申し訳ない。
それでも、この時、本当に良い話ができたと僕は思う。
次の職場では、輝き、飛躍してくれ。
数年後、君が出世したら、その時はまた会えると良いね。

何事も無かったように、日中仕事をしていたが、
かなり動揺してしまっていたと思う。



目の前で起こる出来事によって、
あまり感情を振り回されたくないと思っている僕。

そして、だいたいのことは
何とかなるし何とかしてやる。
とりあえず前向きにいこう。と思っている僕。



しかし、この日ばかりは流石にへこんだ。


動揺を隠しながら仕事に取り組んだ1日。

気付けば、21時を過ぎていた。





いつもよりも遅くなってしまった、この日の帰宅。

このテンションでは、いつも以上に顔に出そうだな。
無理に明るくしようにも、全然笑えない。

まぁ、家に着いたら速攻でお酒飲んで
表情をちょっとでも柔らかくしよう。

そんな事を考えつつ、家の玄関を開け、
妻と子供たちが待つリビングへ。



すると、



リビングのテーブルの上に用意されていたチョコレート。

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妻が用意してくれていたのは
「30個の手作りガトーショコラ」
全ての社員に渡せるように。30個も。

甘い物が苦手な人のことも考え、
社員みんなの健康のことも考え、

「グルテンフリー」
「砂糖不使用」
「はちみつ不使用」
「みりんと玄米の米粉」

で作られていた。



それを1つ1つ、
こんなにもキレイに梱包して、
「うそだろ」って思った。



しかも、手にとって見ると

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「毎日お疲れ様です」の文字が。

30個全部に書いてある。


しかも、「毎日お疲れ様です」の後に続くのは
「星」や「ハート」や「笑顔」や「うさぎ」のマーク。

1つ1つ違う。




絶句だった。


30個ものチョコを作り、梱包し、手書きでメッセージを添える。


その過程のどこの部分を切り取っても、
言葉にできないほどの愛情を感じた。





家で、妻には仕事の話しをよくする。
自然に話している部分もあるし、
意図的に話している部分もある。

「○○さんが、こんな風に助けてくれた」
「○○くんが、すごく頑張ってる」
「○○さんと、こんな良い話ができた」
「○○さんから、こんな厳しいことを言われた」

こんな会話を通じて、
会社での出来事を少しだけ伝えるようにしている。


忙しい時期が、人手不足が続く中、
この会社で働いてくれているみんなのことを
きっと妻も応援したかったんだと思う。
感謝の気持ちを伝えたかったんだと思う。
そして、僕の顔を立てようとしてくれたんだと思う。

そう思うと、更に嬉しくなるし、
感謝の気持ちが、溢れに溢れた。






下がり、上がり。

感情の起伏がえげつない一日。

それでも僕はこの日、

「生涯最高のバレンタインデー」を過ごすことができた。

本当に、ありがとう。

この日の嬉しさを忘れることなんて無いと思うが、
一生忘れないよう、このnoteに綴っておきます。


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