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AI小説・『アンデッドの選択』


第一章: 消失した惑星

宇宙は無限に広がる漆黒の海だった。カズマは母船「セレスティア」の操縦席に座り、目の前に広がる星々をぼんやりと見つめていた。彼は今回の任務について、奇妙な胸騒ぎを感じていた。今回の目的地、惑星「アンデッド」は、数ヶ月前に発見されたばかりの未知の惑星であり、その存在は宇宙調査局の内部でも極秘事項とされていた。

「ここが…アンデッドか」

視界の先にぼんやりと浮かぶ惑星が見えた。青みがかったガス層に包まれ、どこか現実感が欠けたようなその姿は、不気味な静けさを漂わせている。母船から発せられるセンサー音が、淡々とその表面をスキャンし続けていたが、依然として異常な反応は検知されない。

「惑星表面に異常なし、しかし…何かが違う。」

カズマの声は船内にこだましたが、返答はなかった。チームメンバーとの通信が数時間前から途絶えたままだ。彼らは先行して惑星に降下したはずだったが、今では誰一人として連絡が取れなくなっていた。彼は手元の通信装置を何度も確認したが、全く反応がない。

「何が起こっているんだ…」

彼は一度深く息を吸い込み、決断した。自ら惑星に降り立ち、仲間たちを探すしかなかった。すでに自動操縦に切り替え、彼は準備を整えていた。惑星表面の重力、ガス層の成分、地表の温度、すべてのデータが通常とは異なる数値を示していたが、危険を避けることはできなかった。

「よし、行くか。」

着陸船に乗り込み、彼は惑星への降下を開始した。機体が大気層に突入すると、まるで手を差し伸べているかのように、周囲の空間が異様に変化し始めた。ガスの層が濃くなり、視界が次第に暗闇に包まれる。

「こんなはずじゃない…」

着陸地点に近づくにつれ、彼の感覚は異常なほど鋭敏になっていた。まるで自分の肉体が何か見えない力によって引き裂かれるような感覚がする。それでも彼は歯を食いしばり、着陸船を無事に地表へと導いた。

静寂が辺りを包み込む。カズマはヘルメット越しに息を整え、慎重に外に一歩を踏み出した。そこには荒涼とした岩肌が広がり、どこにも生命の気配はなかった。足元に砂塵が舞い、風が唸るように吹き抜ける。だが、その瞬間、彼の背後で機械音が鳴り響いた。

「セレスティア、応答しろ!」

カズマが振り返ると、母船との通信が完全に遮断されていた。船内のモニターも全て真っ黒になり、周囲にただ奇妙な静けさが漂うのみだった。彼は急いで装備を確認し、通信装置を何度も調整したが、全ては無駄だった。

「これは…罠か?」

彼の心臓は不安に駆られ、冷たい汗が背中を流れた。次の瞬間、視界の隅に一瞬、何かがちらついた。振り返るが、何も見えない。しかし、その瞬間、遠くから聞こえるはずのない声が耳に響いた。

「カズマ…」

その声は消えたはずの仲間のものだった。彼は反射的に銃を握り締め、周囲を警戒する。だが、目に見えるものは何もない。ただ風が唸り、砂が舞うだけだ。

「誰かいるのか?」

叫び声は空虚に響き、彼の中に冷たい恐怖が湧き上がる。次第に、何か目に見えない存在が、自分をじっと見つめているような感覚に襲われた。

「この惑星は…ただの死の星じゃない…」

そう呟いた瞬間、彼は背後から誰かに肩を掴まれる感覚を覚えた。その手は冷たく、まるで死者の手のように固く締め付けられていた。振り返る勇気を失いかけたカズマの中に、逃げ場のない恐怖が広がっていく。

第二章: 見えざる恐怖

「カズマ…」

耳元で再び声が囁かれる。彼は冷や汗を流しながら振り返ったが、背後には誰もいない。周囲を見渡すも、荒涼とした岩肌と砂嵐が広がるだけだった。しかし、その声は確かに仲間のものだった。消えたはずの隊員たちが、目の前にいないはずなのに存在感だけを残している。

「落ち着け…これはただの幻覚だ。」

カズマは自分に言い聞かせ、銃を握り締めた手を少し緩める。だが、周囲の異様な空気感は変わらない。彼の肌にまとわりつくような湿り気と、喉の奥に引っかかる不気味な臭気が、ますます不安を掻き立てる。

「ここには何かがおかしい。」

カズマは自身の体に奇妙な感覚が広がるのを感じた。それは、肉体が徐々に外側から侵食されていくような、じわじわとした痛みだった。彼は袖をまくり上げ、自分の腕を見た。そこには、黒い痣のようなものが浮かび上がっていた。それは徐々に広がり、皮膚の下に何かが蠢くかのように動き始めている。

「これは…一体…」

不安と恐怖が入り混じり、カズマは立ち上がった。そしてすぐに、もっと異常なことに気づいた。彼の足元の砂が、まるで何かに引き寄せられるかのように、勝手に動き出していた。砂の粒子が集まり、徐々に人の形を形成していく。そして、その砂の影がかたちを成した瞬間、彼の目の前に立っていたのは、行方不明になった隊員、ヒロキだった。

「ヒ、ヒロキ…?」

カズマは言葉を失った。ヒロキの顔は無表情のまま、砂の中から浮かび上がり、ただカズマをじっと見つめている。しかし、その目は生きている者のものではなかった。暗く空虚な眼窩が、まるで深淵のようにカズマを引き込もうとする。

「お前も…来い…」

その言葉と同時に、砂のヒロキがゆっくりと手を伸ばし、カズマに迫ってきた。カズマは反射的に後退し、銃を向けた。しかし、引き金を引こうとする手が震え、動かなかった。目の前にいるはずの仲間に対して、撃つことができない。

「これは…幻覚だ、幻覚に違いない!」

カズマはそう叫びながら、意を決して引き金を引いた。銃声が響き渡り、ヒロキの姿は一瞬で砂に崩れた。だが、砂は地面に落ちるとすぐに再び動き始め、今度はさらに多くの影を形成し始めた。隊員たちの顔が次々と浮かび上がり、彼の周囲を取り囲む。

「やめろ!やめてくれ!」

彼の叫びは虚しく、影たちは無言で彼に近づいてくる。カズマは全力で逃げ出したが、地面が突然ねじれ始め、足元が崩れた。重力が狂ったかのように、彼の身体は宙に浮かび、次の瞬間、地面に叩きつけられた。

「くそっ、ここは何なんだ…」

カズマは必死に身体を起こし、通信装置を確認したが、相変わらず無反応だった。周囲の景色もおかしなことになっていた。空は暗く染まり、遠くに見えるはずの山々が歪み、地平線がゆっくりと波打つように変形している。

「何かが俺を狂わせようとしている…」

彼は自分の精神が侵食されていく感覚に耐えながら、冷静さを保とうとした。だが、その瞬間、足元でまた影が動き、再び隊員たちの声が聞こえてくる。

「カズマ…助けて…」

今度は女性隊員のリサの声だった。彼女の姿も、先ほどのヒロキと同じように砂から形を成していく。彼女の悲痛な表情に、カズマは再び動揺する。

「リサ…本物なのか?」

彼の問いかけに、砂のリサはゆっくりと首を横に振る。その瞬間、彼女の身体は崩れ落ち、周囲の影たちと共に再び砂に還った。すべてが一瞬で消え去ったが、彼の胸には深い不安が残されたままだった。

「これは、ただの恐怖じゃない…何かが、俺の心を試している…」

カズマは改めて自分の身体を確認し、黒い痣がさらに広がっていることを確認した。何かが自分の中で動き出している。目に見えない何かが、徐々に彼の精神と肉体を侵食しているのだ。

「俺は…どうすればいいんだ…」

絶望感が彼を包み込む中、彼はこの惑星から逃れる方法を必死に探し始めた。しかし、見えざる恐怖は彼を決して解放しようとはしなかった。

第三章: 不死の呪い

カズマは足元に広がる砂の影が消え去った後も、その場に立ち尽くしていた。身体は疲労に包まれ、精神的にも限界が近づいていたが、惑星「アンデッド」の不気味な静寂が彼を逃れられない呪いのように縛り付けていた。彼の腕には黒い痣がさらに広がり、皮膚の下で何かが蠢いている感覚が強まっていた。

「これ以上ここに留まるわけにはいかない…」

彼はふらふらと歩き出し、近くの遺跡のような建造物に目を留めた。それは明らかに人工的な構造物であり、古代文明の残骸のように見えた。カズマはわずかな希望を見出し、そこに向かうことを決意した。

遺跡の入り口は巨大な石のアーチで覆われており、内側には無数の文字が刻まれていた。見知らぬ言語だったが、どこか古代文明特有の威圧感が漂っている。カズマは慎重にその中へ足を踏み入れた。

中に入ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。無数の石像が並んでおり、どれも異様な表情で天を仰いでいた。その姿は、まるで何かから逃れようとしているかのようだった。カズマはその異様な雰囲気に背筋が凍る思いをしたが、同時に強烈な好奇心が湧き上がる。

「ここに何かがある…答えが…」

遺跡の中心部にたどり着くと、カズマは一つの巨大な石碑を見つけた。そこには、かつてこの惑星に住んでいた古代文明の記録が彫られていた。彼はそれを解析装置で読み解くことにした。

古代文字を翻訳する装置が稼働し、次第に文章が浮かび上がる。それは驚くべき内容だった。

「この星はかつて、我々の文明が築かれた。しかし、永遠の命を求めた者たちは、その代償に魂を失った。肉体は死を拒み、永遠に朽ちることなく彷徨い続ける。これが、不死の呪い。我々は、その呪いを破る術を見つけられず、永遠にこの地に囚われる。」

「不死の呪い…?」

カズマは石碑の言葉に恐怖を覚えた。この惑星は、かつて不死を求めた文明によって築かれ、その結果、住民たちはアンデッドとして永遠に生き続ける運命を背負わされたという。そして、今や彼もその呪いに侵されつつあることを理解した。

「俺も…このままじゃアンデッドに…」

黒い痣が広がる自分の腕を見つめ、カズマは焦燥感に駆られた。体内で何かが変わり始めている。彼の肉体は、ゆっくりと、しかし確実に死を拒絶し始めていた。痛みや疲れを感じなくなり、傷もすぐに癒えてしまうが、その代償として、彼の精神は次第に衰弱していくのを感じた。

「これが…この惑星の呪いか…」

絶望に打ちひしがれたカズマは、石碑の前で膝をついた。もしこのまま呪いに囚われ続ければ、自分もまたアンデッドの一員として永遠に彷徨い続けることになる。だが、その時、彼は背後に微かな気配を感じた。

「誰だ!」

カズマが振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。彼女の顔は疲れ切っていたが、その目は強い決意に満ちていた。彼女の名前はレイ。彼女はこの惑星に残された最後の生き残りであり、カズマと同じくこの呪いを解く方法を探していた。

「あなたも、この呪いに…?」

カズマが尋ねると、レイは静かに頷いた。

「ええ、でも私はまだ完全には侵されていない。呪いを解く方法があるとしたら、この遺跡の奥にある。私たちはそれを見つけなければならない。」

カズマは彼女の言葉に一縷の望みを感じ、彼女と共に呪いを解くための道を探ることを決意する。しかし、遺跡の奥に待ち受けているのは、さらなる恐怖と試練だった。

二人は遺跡の奥へと進んでいくが、そこには無数のアンデッドが徘徊していた。かつてこの惑星で生きていた者たちが、不死の呪いによって蘇り、永遠に彷徨っている。彼らは二人に容赦なく襲いかかってくるが、カズマはかつての隊員たちの顔を見て、撃つことができなかった。

「俺たちは…どうすればいいんだ…」

呪いに囚われた者たちの悲しみと憎しみが、二人を包み込んでいく。カズマは必死にレイと共に生き延びる道を探し続けるが、呪いの力は彼らを追い詰めていく。

第四章: 反逆者の目覚め

遺跡の奥深くへと進むカズマとレイ。二人は息を切らしながら、不死の呪いを解く方法を求めて、暗闇に覆われた石の廊下を進んでいた。周囲には無数のアンデッドが徘徊していたが、何とかその目を逃れて進むことができた。

「この先に…呪いの核心があるはずよ。」

レイの声は疲れと絶望に満ちていたが、その目には依然として決意が宿っていた。カズマはその言葉に頷き、彼女の後に続いた。だが、彼の心には重い疑念が渦巻いていた。果たして、この呪いは本当に解けるのだろうか?そして、自分は助かるのだろうか?

「レイ…本当に、この呪いは解けるのか?」

カズマは問いかけた。レイは一瞬言葉を失い、そして小さく頷いた。

「…正直なところ、わからないわ。でも、諦めるわけにはいかないの。私は…ずっとこの惑星に囚われてきた。自分の運命に抗うこともできず、ただ待ち続けてきた。でも、あなたが現れたことで…一筋の希望が見えたの。」

レイは深い悲しみを宿した目でカズマを見つめた。その目には、自分自身を呪いから解放するために、どれだけの犠牲を払ってきたかが刻まれていた。

「だから、あなたに賭けるわ。私たちにはもう、時間がない。」

彼女の言葉は、カズマの胸に深く刺さった。自分もまたこの惑星に囚われ、徐々にアンデッドへと変わりつつあることを感じていた。だが、レイの決意が彼を動かし、彼もまた運命に抗うことを決意する。

二人がさらに進むと、巨大な石室にたどり着いた。そこには、異様な存在感を放つ巨大な石柱がそびえ立っていた。その石柱の中心には、かすかに光る石が埋め込まれていた。

「これが…『不死の石』。」

レイは震える声でそう呟き、石柱に近づいていった。カズマもその後を追ったが、突然、石室全体が振動し始めた。周囲の石壁が崩れ、無数のアンデッドたちが壁の中から現れた。

「逃げろ!」

カズマは叫んだが、アンデッドたちはすでに彼らを取り囲んでいた。隊員たちの顔をしたアンデッドが、空虚な目でカズマを見つめながら、じわじわと近づいてくる。その無機質な動きに、カズマの心臓は凍りついた。

「カズマ、早く!石を壊すのよ!」

レイの声が響き渡るが、カズマは目の前のアンデッドたちの姿に動揺し、足がすくんでしまった。彼の脳裏には、かつて一緒に任務を遂行した仲間たちの顔が浮かんでくる。彼らはもう戻れないのだ。カズマはその事実を受け入れることができなかった。

しかし、その瞬間、レイが叫び声を上げた。

「もう時間がない!このままでは、私たちも同じ運命を辿ることになる!」

カズマは決心し、レイの元へと走り出した。彼女はすでに石柱に触れようとしていたが、その手が震えていた。彼女もまた、自らの運命と戦っていたのだ。

「一緒にやろう。」

カズマはレイの手を取り、二人で力を合わせて石柱に埋め込まれた『不死の石』に手を伸ばした。その瞬間、石室全体が崩れ落ちるような轟音を立て、アンデッドたちが一斉に襲いかかってきた。

「くそっ!」

カズマは銃を乱射しながら、石を破壊するために全力を尽くした。だが、アンデッドたちの数は増え続け、次第に彼らを追い詰めていく。

その時、レイが何かを叫びながら、石柱に向かって突進した。

「カズマ!ここで終わらせる!」

彼女は自らの命を賭け、不死の石に最後の力を込めて触れた。石が砕け散ると同時に、レイの身体は淡い光に包まれ、彼女はその場に崩れ落ちた。

「レイ!」

カズマは叫びながら彼女に駆け寄ったが、彼女は微笑みを浮かべ、静かに目を閉じた。彼女の身体は、徐々に消えゆくように光に溶け込んでいった。

「これで…呪いは解けたはずよ…。ありがとう、カズマ…」

彼女の最後の言葉を聞いたカズマは、彼女の消えゆく姿を見つめながら、その場に膝をついた。石柱は完全に崩れ、アンデッドたちの姿も消え去っていた。だが、カズマはその場で孤独に取り残され、深い悲しみが彼を襲った。

「俺は…どうすればいいんだ…」

彼は呟き、拳を握りしめた。不死の呪いは解かれたが、彼自身がその後どう生きるべきか、その答えは見つからなかった。

第五章: 遺跡の真実

カズマは、崩れ去った石柱と消えたアンデッドたちの跡に立ち尽くしていた。レイの消滅は呪いが解けた証拠だが、その代償はあまりに大きかった。彼女の微笑みが脳裏に焼きつき、彼は心の中で自問する。

「本当に…これで終わったのか?」

不死の石が砕け、アンデッドたちの姿が消えた今、呪いは終焉を迎えたかに見えた。しかし、カズマの身体は依然として黒い痣に覆われており、その痣はさらに広がっていた。自分もまたアンデッドの運命から逃れることができないのかという恐怖が再び胸を締め付ける。

「俺も、まだこの惑星に囚われたままなのか…?」

そんな思いが彼を駆り立て、彼は遺跡のさらに奥へと足を進めることに決めた。レイが言っていた「不死の石」がすべてではないと、直感が告げていたのだ。カズマは、何か決定的な真実がまだ隠されていると感じていた。


遺跡の最深部にたどり着くと、カズマの目の前に現れたのは、かつての古代文明の象徴とも言える巨大なホールだった。その中心には、今まで見たこともないほど精巧な彫刻が並んでいた。壁一面には、古代文明の栄光と滅亡が描かれており、文字は解読不能なほど古びていたが、そこで語られている内容は明らかだった。

この惑星の住民は、不死を求めて禁断の力を手に入れた。しかし、その力はやがて彼らを滅ぼし、全員がアンデッドと化したという。そして、不死の呪いを解こうとする者たちは次々と絶望し、この遺跡に囚われていった。

「レイも、ここで同じ結末を迎えたのか…」

カズマは壁に描かれたその姿を見て、彼女が抱えていた苦悩を思い知った。彼女は自分の運命に逆らうために、長い年月を生き抜いてきたのだ。そして、その結果、彼女自身もまたアンデッドとなり、死を迎えることもできずに苦しんでいたのだ。

カズマは、その場に倒れ込んだ。自分が今いる場所も、レイが歩んできた道も、すべて同じ運命に繋がっていることに気づいた。彼もまた、この惑星に囚われ、永遠に生と死の狭間で彷徨い続ける運命なのか。

だが、その時、彼の目にあるものが映り込んだ。それは、ホールの中心に立つ石の台座に置かれた、小さな箱だった。

「…これは?」

カズマはその箱に近づき、慎重に手を伸ばした。触れると、箱はゆっくりと開き、中から一冊の古びた本が現れた。その本の表紙には、見覚えのある古代文字が刻まれていた。それは、「最後の選択」と記されていた。

カズマは本を開き、中を読み進めていった。その内容は、驚くべき真実を明かしていた。

「不死の呪いを解くには、犠牲を払わなければならない。だが、その犠牲は、命だけではなく、魂そのものを捧げることで完全な解放が訪れる。」

レイが消えた理由が、この一文で明確になった。彼女は魂を捧げることで、アンデッドとしての運命から解放されたのだ。しかし、そこにはもう一つの選択肢が記されていた。

「不死を選びし者は、永遠の命と引き換えに、全てを失うことになる。」

つまり、石を破壊した今、カズマには二つの道が用意されていた。レイと同じように魂を捧げ、呪いから解放されるか、あるいはアンデッドとして永遠に生き続けるか。

「俺が…選ばなければならないのか…」

カズマは本を閉じ、再び遺跡のホールを見渡した。彼は、レイが最後に選んだ道を知り、彼女の思いを感じ取った。しかし、彼自身がどの道を選ぶべきか、まだ迷っていた。

「俺は…」

彼の心は揺れ動く。魂を捧げて楽になるか、それとも永遠の苦しみを引き受けて生き続けるか。遺跡の真実は、彼に最も過酷な選択を強いていた。

第六章: 最後の選択

遺跡の中心に立つカズマの手には、古びた本が握られていた。そこに記されていた「最後の選択」が彼の心に重くのしかかる。魂を捧げて呪いを解くか、アンデッドとして永遠に生き続けるか。どちらを選んでも、彼が望んでいた「解放」は存在しなかった。

「レイは、魂を捧げて自由になった。でも、それが本当の解放なのか…?」

カズマは遺跡の静寂の中で自問自答する。彼女が選んだ道は、永遠の苦しみから逃れるための犠牲だった。しかし、それはカズマにとって同じ選択肢ではないと感じていた。彼はまだ生きていたいという思いが捨てきれなかった。だが、それがどんな苦しみを伴うかも理解していた。

彼は遺跡を見上げ、そして再び本を開いた。そこには最後の選択に至るまでの古代の住民たちの苦悩と葛藤が描かれていた。彼らもまた、自らの命を捧げるか、不死の苦しみを受け入れるかの選択を迫られていた。そして、彼らの多くは不死を選び、その結果アンデッドとなってこの星を彷徨い続ける運命に囚われたのだ。

「俺は…どうすればいいんだ?」

カズマは拳を握りしめた。彼は過去の仲間たち、そしてレイが自分を救おうとしてくれたことを思い出す。彼女が魂を捧げたのは、彼に自由を与えるためだった。しかし、その自由が彼にとって本当に望むものかどうかはわからない。

「俺は、生き続けたい…でも、ただ生きるだけの存在でありたいわけじゃない。」

カズマは自らの中に渦巻く感情を整理しながら、最終的に決断を下す時が来たことを理解した。彼は遺跡の中心に立ち、本を閉じると、石の台座に置かれていたもう一つの物体に目を向けた。それは、不死の石の破片だった。レイが破壊したにもかかわらず、その一部が残っていたのだ。

「これが、俺に残された最後の希望か…」

カズマは破片を手に取り、目を閉じた。もしこれに触れれば、不死の呪いが完全に自分に宿るかもしれない。それでも、彼はその道を選ぶ決心をした。彼は、レイとは違う道を選ぶことを決めた。

「俺は…生き続ける。」

呟くと同時に、カズマは不死の石の破片を握りしめた。すると、身体全体に電流が走るような感覚が広がり、黒い痣がさらに急速に広がり始めた。痛みはすぐに訪れたが、彼はその苦しみを受け入れた。

「俺は逃げない…俺はこの惑星で、生きる。」

その瞬間、彼の身体は変化を始めた。痛みと共に、肉体が再生し始め、死への恐怖が消え去った。だが同時に、何かが彼の中から消え去っていく感覚があった。それは人間としての感情、そして魂の一部だった。

「これが…不死の代償か…」

カズマはその事実を受け入れながらも、再び立ち上がった。彼の肉体は完全に不死となったが、彼はもう、かつての自分ではなかった。苦しみを感じない身体と引き換えに、彼は深い孤独と虚無に包まれた。


時が経ち、惑星アンデッドは再び静寂に包まれた。カズマはただ一人、宇宙の中で永遠に漂う存在となった。彼がかつて望んだ「生き続ける」という願いは叶ったが、それは決して彼が思い描いたものではなかった。

惑星の上に佇むカズマの瞳には、何の感情も宿っていなかった。ただ、静かに、永遠の時間の中で自身の選択と共に存在し続けるだけだった。

そして彼は、誰にも気づかれることなく、その星で新たなアンデッドの王として君臨する運命を受け入れた。

おわり

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