見出し画像

根回しの弊害。日本の意思決定とGoToトラベル。

こんにちわ。いよいよコロナ患者が東京で一日に800人を超え、日本のコロナの情勢も混迷を極めてきました。ワクチンの供与は新春ごろになることを考えると、本格的に日本も(いろいろな意味で)崖っぷちにいるとみてよさそうです。この混迷の中心にあり続けたのが政府の看板背策の一つ、GoToですが、この度いよいよ一時停止の判断が下されました。遅くに失した感がありますが、今回はなぜここまでGoToに関して日本の意思決定が遅れたのか、日本の政治制度と伝統的な意思決定プロセスである根回しに着目しながら、GoToを巡る混迷について少し所見を述べてみようかなと思います。

日本のパワーバランス(自民党と政府)

前提として、日本の政治のパワーバランスについて書いてみようと思います。日本の政治は極めて特異なパワーバランスを議院内閣制としては持っています。通常、議院内閣制とは、議会の信任を経た内閣が行政権を握り、それに対して、内閣は議会に対して責任を負うこととなっており、議会の多数派と政府を構築するメンバーが同じ政党に所属していることになります。この場合、通常議会と政府の多数派は同じ政党に属しているため、両者は二人で一つの役柄を担い、党のトップが政府のトップを担うことで、政治における(実質的な)パワーは政府に一本化され、政策形成の中心は政府が担うことになります。

これと比較して、日本のパワーバランスは不思議なことに政府と与党(自民党、公明党)がそれぞれ異なる力の中心地となり、政策形成をするパワーを持っています。言ってみれば政策形成の主体が一元化されていないのです。その特異な政策形成制度を作り上げるのが、与党の党内審査プロセスです。政府の政策は、全てこの与党内の審査を通過しなければならないという慣行が日本には確立しています。これの意味するところは、ボトムアップの国会議員で構成される党内審査プロセスが事実上の壁となり、政府の政策は、与党(自民党と公明党)が了承しなければ、政策として採用されないことを意味しています。この意味で、政府(官僚)が作り出した政策は全て自民党と公明党内の党内プロセスを経る必要があり、その過程で妥協や折衝を余儀なくされます。これが悪名高き「55年体制」。すなわち、議会で大っぴらに行われるべき政策議論が、密室で行われる与党内の機関プロセスでなされるという体制を作り出しています。

これが日本における政府の決定の遅さの主因となっています。すなわち、政策を通すためには数多くの議員で構成される党内手続きを経る必要があり、結果として、政策形成に関与するアクターの数があまりに多く、政策を作り上げ、実行するに当たっては、数多くのアクター(国会議員等、いわゆる族議員とか呼ばれる人たち)から根回しという形で了承を取り付けなければならないのです。

GoToをめぐる混迷

今回のGoToをめぐる混迷では、上記の政府と与党に加えて、各都道府県知事もアクターとして加わったことが混迷に拍車をかけています。GoToは感染を広めるリスクがある代わりに、コロナで苦しむ旅行業界や飲食業界にとっては救いの糸です。だれもこのひもを自らの手で断ち切りたいとは思わなかったでしょう。そのため、GoToを止めるに当たって、政府は都道府県に責任を押し付けようとし、各都道府県知事は政府の政策として政府に責任を押し付けようとする姿勢を取ろうとしたのが伝わってきます。

加えていえば、自民党の強力な支持母体の一つにこのような中小小売事業者があります。言ってみればGoToで救いを受ける方々が彼らの主な支持母体になっているのです。それを考えれば政府内でいかにGoToを止めようという動きがあったとしても、自民党がそれを好まないであろうことは容易に読み取れます。

菅総理の自民党内の立場について考えると、私は菅総理と安倍総理の最大の違いは、自民党内における支持基盤の違いにあると考えます。普通の総理と違い、菅総理はいわば自民党内の派閥出身ではありません。自民党内の後ろ盾がない中、自民党にあだなすかもしれないGoTo中止という決断を下すのはかなり難しかったといえます。これが結果としてGoToをめぐる、国、政府の混乱につながったことと思います。結果、GoToが止まるのが遅れ、感染が広がった、これはある意味日本の伝統的な意思決定プロセス、根回しの弊害を表していると思います。

以上です。おおざっぱですが、GoToをめぐる混乱の要因について、簡単にメモにして考えてみました。根回しってどこにもある文化ですが、ほんまにうっとうしいですよね(笑)。政府もこれで苦しむようなら、行革の一環でこの文化を破壊してほしいです(笑)楽しんでいただければ幸いです。アヒルでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?