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猫と暮らす100年越えの古民家⑥

  交互に進むスパイクの足音だけが聞こえる。今日も空振りかな、と罠の見回り最後のポイントに向かうと遠目にも小さいものが掛かっているのが見える。キョンか、と思い進むとその一段上に、中くらいの猪も転がっていた、前後の足が掛かっており自然と保定されていた。なんとこんなこともあるんだな~と近よると、更に上でガサ音が。
  え、うっそ1番上は鹿!ここを必ず通りここを踏む、という場所に掛けているけれど、同じ場所で1晩に3頭は初めてだった。

  今日が休みの日で良かったなと思いつつ、軽トラを取りに引き返す。会社員をしながら有害に携わるのはなかなかハードで、平日であれば慌て目に処理をするところだ。
   庭に三頭転がして、一頭ずつ吊るし解体していると、陽の当たる廊下に、たまこがいつの間にか来ていて窓越しにこちらを見ている。

  三本のナイフを用途別に使いながら、皮、肉、骨にざっくり切り分けてゆく。頼まれていた肉のトリミングは後でゆっくりやればいい。
  廊下に目を向けると、前足を揃えて座るたまこが見える。この頃は、少しだけ触らせてくれるようになった。そっと撫で撫でしてる時、たまこの表情は動かず、喜んでいるのかどうなのかはわからない。けれど、触らせてくれるということは、不快ではないのだろう。

  三頭目になると手が疲れてくる。力の入れ具合をしくって怪我をしないようにしなければ。少し休もう。ナイフを置き、縁側に座ると風が吹き抜ける。

ふと廊下を見ると、たまこは居なかった。ゆっくり仲良くなれればいい。あとで、切らしていた煮干しを買いに行こう。

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