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第33回 イップ・マン 序章 (2008 香・中)

 今日も男には逃せないタイミングがあるので投下するわけです。そう、今日は『イップ・マン 完結』の公開日です。というわけで、『ランボー』同様今回はシリーズ第一作『イップ・マン 序章』をレビューします。

 たまたまレビューしてないだけで、私は実際のところ香港映画が好きです。自転車で走っている時に『スパルタンX』を鼻歌で歌う程度に。

 しかし、恥を忍んで言うとこのシリーズはこの間テレビで放送されるまでスルーしていました。というのも、この第一作の予告編の印象が良くなかったからです。

 『燃えよデブゴン』シリーズを探し求めてTSUTAYAを何件も梯子したというのに、サモハンがアクション監督のこの映画をスルーしたのです。

 『パトレイバー』や『めぞん一刻』を軽く5周は観ているというのに、川井憲次が音楽を手掛けたこの作品をスルーしたのです。

 『人間兇器』の復刊に大喜びして配信日に全巻買ってその日のうちに読んだほどの梶原一騎フリークだというのに、この梶原テイストにあふれた作品をスルーしたのです。

 筋は古典的カンフー映画そのもの。実在した詠春拳の達人であるイップ・マン(ドニー・イェン)が日本軍の将軍である三浦(池内博之)と戦うという話です。

 汚い大人の都合にまみれた薄っぺらい反日映画に違いないと固く思い込んでいました。全くの不覚です。先入観こそが人生の大敵であるとこの映画に教えられました。

 この映画はお上の悦ぶの単純な反日映画ではありません。三浦の顔も一応は立つ形に収め、どうにかバランスを取っています。そしてLGBTを迫害するあの国にあるまじき濃厚なBLが詰まっています。

イップ・マン 序章を観よう!

執筆時点でAmazon、Netflix、U-NEXTで配信があります。ただし字幕です

真面目に解説

格闘技とロマン
 私の多感な時期にはK-1やPRIDEがテレビでしょっちゅう放送されていました。あの時代はまだどの格闘技が強いのか?というしょうもないテーマが一定の意義を持っていました。

 当時はボクシングのヘビー級王者が最強の代名詞だとか、空手を極めれば牛を殺せるだとか、その手の最強神話がどの格闘技にもあったのです。

 今では強さなんてルール次第と誰もが知っています。例えば私とメイウェザーとボクシングをしたらゴングと同時に多分死ぬでしょう。

 しかし、私とメイウェザーが三島由紀夫と関係した人(自称)を探してくる競争をしたら絶対私の勝ちです。私は直接の知り合いで二人知っています。

 そしてこれが三島ではなくフレディならメイウェザーにも一定の勝機があります。結局勝負とはそんなものです。

 しかし、それがハリボテであろうと格闘技のロマンは男の子を惹き付けます。最もロマンあふれる格闘技、それは何といっても中国拳法です。


イップ・マンという人物
 散々喧伝されていますが実在の人物です。詠春拳という拳法の中興の祖で、ブルース・リーの師匠です。

 映画では強くて優しくて家族思いで吹替は大塚芳忠という、もはや人間として反則の域に居る存在として描かれています。

 しかし、実物はそこまで立派な人間ではなく、汚い話も色々と残っています。ですがそんな事は些細な問題です。ロマンとはそういうものなのです。

 アントニオ猪木がどんなに社会人失格ぶりを晒そうと、大山倍達の若い頃がどんなに汚かろうと、物語の中にいる限りそれは帳消しです。それはそれ、これはこれです。


木人椿
 こう書いて「もくじんとう」と読みます。香港映画ではお馴染みのアイテムです。今作も武術のメッカ、佛山で木人椿を打つイップマンの姿から始まります。

 この木人椿の合理的な効能は疑問が残りますが、とにかく中国拳法はこれが無いと始まらないのです。イップマンはシリーズ通して暇さえあれば打っています。

 そこへリュウ(チェン・チーフイ)という人物が訪ねてきます。彼は佛山に新しく武館(道場)を開いたので、イップマンと手合わせを頼みに来たのです。

 名高いイップマン相手にいい線いったとなれば宣伝になります。今時この手法は格闘技のジムの類では全く通じませんが、格闘技にロマンのあった時代はこれでよかったのです。

 イップマンは妻子と食事中なので、待たせるついでにリュウにもご馳走して、一緒に食後のお茶飲んで寛いじゃいます。煙草を吸っていますが、本物はアヘンだったそうです。

 そして食後の運動とばかり本題の勝負に入ります。アクションシーンに細かい理屈は要りません。しかし、イップマンは最強なのでリュウは全く相手になりません。

 そしてひとしきり痛めつけられたリュウは口止めを頼んで帰っていきます。手ひどく負けたと知れるのは武館の経営上不味いのです。イップマンは最強で人格者なので、承知してねぎらいの言葉をかけてリュウを帰してしまうのです。


拳銃は噛ませ犬
 しかし、勝負を窓の外でたまたま見ていたのがいい年して凧あげをしていたユン(黄又南)という若者です。実家の茶館で人に言い触らしちゃいます。ボロクソです。

 そこへイップマンが茶館へ事業家のチンチュン(サイモン・ヤム)を訪ねて来てニアミスします。そしてリュウが負けたのをユンが言い触らしているのを知るのです。

 その話はリュウの所へも戻ってきます。当然ユンの元へ怒鳴り込みに行くリュウ。兄のラム(釋行宇)がとりなしますが、ユンが話をイップマンに持って行った事で話がややこしくなります。

 人の道から言えば当然ユンはリュウが恥をかかないように黙っているべきなのですが、ユンはアホなのでその理屈が解りません。ラムがユンのズボンを下ろすという強硬手段で身体で分からせます。

 これで済めばいいのですが、警察のリー(林家棟)が駆けつけてきて騒ぎは余計に大きくなります。

 リーは逮捕をちらつかせて武術を時代遅れとディスり、これからは拳銃が物を言うと振り回して威張ります。しかし、格闘技がロマンを持った世界観では銃を持つこと自体が死亡フラグです。

 イップマンはリーの銃を掴んで分解してしまいます。構造を知らなきゃできません。達人は銃の勉強も怠れないのです。リーはビビって事を治めます。


武家の商売
 チンチュンは一緒に綿工場を経営しようとイップマンに持ち掛けますが、イップマンは経済感覚がゼロというロマンな武術家にありがちな欠点を持っているのであんまり乗り気ではありません。とりあえず金を渡して丸投げしちゃいます。

 どんな世界にしろ一番強い人ではなく一番商売の上手い人が有名で金持ちになるものです。

 イップマンは実は金持ちのボンボンですが、戦争で財産を失って残りの人生はずっと貧乏だったそうです。弟子がスターなので今になって名前が売れ始めたわけです。

 そして家族思いであっても武術家は不器用なものです。チンチュンやラムといちゃついてばかりで息子のチュンに構ってくれないというので奥さんのウィンシン(リン・ホン)はお怒りです。

 もっとも、佛山はそんな男ばかりなのでバランスが取れるのでしょう。町の広場では各武館がお互い見せびらかすようにして稽古しています。ライバル意識を育てつつ宣伝にもなるという事なのでしょう。

 そこへサンチャウ(ルイス・ファン)という小汚い武術家が舎弟を連れて道場破りを仕掛けます。この手の道場破りは強いと決まっているので、そりゃあもう派手に広場の師匠を次々痛めつけていきます。

 結果としてこの作品がルイス・ファンの出世作になりました。ある意味道場破りは成功です。

 イップマン木人椿に「愛する妻」と書いたりして露骨にいじけるウィンシンの機嫌を直そうと信じられない苦戦を強いられていますが、そこに最悪のタイミングでラムがサンチャンの事を知らせに来ます。

 ラムは気を利かせて話をひっこめて帰りますが、その頃サンチャウはリュウを料理しています。これを見る限り、リュウは決して弱いわけではないようです。イップマンが強すぎたのです。


職業・道場破り

 サンチャウはもう佛山を制圧したつもりで取り巻きと飯を食っています。最強を示してから武館を開けば儲かるという計算です。

 しかし、最強のイップマンが残っていると屋台のオヤジに知らされ、当然殴り込んできます。

 イップマンは最強なのでサンチャウも怖くありません。「先に武館の場所を探せ」と適当にあしらって帰そうとします。ウィンシンの方がよほど怖いのです。

 サンチャウは当然これには応じません。そしてウィンシンも連日のコンドーム扱いで不機嫌なのでイップマンより威勢よく怒っています。

 「詠春拳の開祖は女だから女々しい」「女房を恐れてる」とサンチャウは実に痛いところを突いてきます。そして「手を使わず闘う」「佛山にはがっかりだ」と挑発を続け、ついにはウィンシンが「物を壊さないで」とイタリアの種馬夫人のように譲歩します。

 そしてリー達警官が駆けつけてきます。イップマンはこれ幸いと事を治めてしまおうとしますが、リーは「名誉を挽回しろ」と逆に勝負をお膳立てしてしまいます。

 このままサンチャウに勝ちっぱなしで居着かれると治安に悪影響なのは明白です。ここはイップマンにシメてもらわないといけないのです。

 かように道場破りは挑発が上手くないと務まらないのです。向こうは手にしないという選択肢が取れますから。


二人が入って一人が出る
 警官隊がギャラリーを家の外に追い払い、デスマッチが始まります。「女の拳でどう戦う?」とイップマンをオカマ扱いするサンチャウですが、イップマンは「良い拳法は老若男女を問わない」となんか良い事を言います。

 もうウィンシンも戦闘モードなので家の物を壊す以外心配は無用です。しかし早速サンチャウが花瓶を蹴り倒してしまい何か壊すたびに「弁償する」とフォローを入れるのが笑いどころです。

 もうウィンシンは戦闘モードなので、チュンに「反撃しないと物が壊れる」と伝令まで届けさせます。こんな奥さんが欲しいものです。

 サンチャウは強いですが、イップマンは最強なので本気出したらたちまちのされてしまいます。

 そこでサンチャウは悪役らしく取り巻きに持たせておいた剣を無駄にスタイリッシュに抜いてイップマンを殺しにかかります。

 これが少年ジャンプならあと数ページの命ですが、香港映画において凶器攻撃はむしろ最大の見せ場です。イップマンは羽箒で抵抗します。そして大抵しょぼい武器を持っている方が勝つのが香港映画です。

 箒は要は竹竿です。こいつで叩かれると非常に痛いわけです。果たしてサンチャウは散々痛い思いをしてイップマンに負けてしまいます。

 「流派が負けた」と負け惜しみを言うサンチャウですが、「流派ではなく個人の実力」と80年くらい進んだことを言ってイップマンは完全勝利を飾ります。

 サンチャウがしけた顔して出ていくので、待ち受けていたリーには負けたのは一目瞭然です。こうなると道場破りは惨めなもので、街を出るより仕方がありません。


これがあるから観なかった
 イップマンはこの一戦で名士ぶりに拍車がかかり、市場を通れば店という店が色々くれます。

 イップマンはボンボンなので武術で金を稼ぐ必要が無く、弟子を取らない主義で武館を持っていないのですが、弟子入り希望者が殺到し、武館を開くとリーが勝手に噂を広めて家の周りは人だかりです。

 チンチュンは息子を一番弟子にしろとビジネスパートナーの特権を行使しようとします。リーは弟子入り希望者を統制して外堀を埋めにかかります。

 しかし、時は1937年を迎え、中国は日本と長い戦争をおっぱじめるのです。中国は修羅の国状態になり、町には日章旗が翻り、兵隊が情け容赦なく民間人を殺して回ります。

 佛山も占領され、人口の大半が逃げ出して景気はどん底に。おまけにイップマンは家を日本軍に取り上げられて貧乏暮らしに落ちます。スラムみたいな場所に暮らし、質屋通いで生計を立てています。

 しかし、チンチュンの工場はどうにかやっています。チンチュンはイップマンが金を出資してくれたので共同経営をしようと持ち掛けますが、ボンボンで経済感覚に乏しいイップマンはどうにも煮え切りません。

 中国の武術家は日本の侠客に近い性質を持っています。なにしろ四千年に渡って情勢不安定な国なので、用心棒として社会のダークな部分に食い込めるのです。従って、チンチュンとしてはイップマンが後ろ盾についてくれると助かるのです。

 結局イップマン箱の誘いを断ってしまいます。「恩を売りたくない」とチンチュンは複雑そうです。

 そのうちイップマンは「稽古をすると腹が減る」と武術家にあるまじき事を言って腑抜けてしまいます。

 売る物もなくなったのでようやく働く決意をするイップマンですが、こんな情勢で仕事などありません。どうにかイップマンブランドで石炭運びの日雇い仕事にありつきます。

 社長は武術が好きらしく、職場は武術家や武館主だらけです。ラムとも再会しますが、ユンはあの事件以来音信不通とのことです。


暴れん坊将軍
 そこへ日本軍の通訳に転身して羽振り良さげなリー武術愛好家の佐藤大佐(渋谷天馬)なる軍人を連れてやってきます。日本の武術家との対戦者を募りに来たのです。

 渋谷天馬と言えば悪役俳優として中国では知られた人です。こういう外道の日本軍人役は中国では本物の日本人を使う事になっているのだそうです。

 この時代、日本と中国の武術の技術交流は実際かなりありました。上はまっとうな武術家同士の付き合いから、下は捕虜を危険な技の実験台にするという七三一なものまで色々です。

 イップマンは危険視して乗ってきませんが、リーが勝てば褒美は米一袋と言うと他の連中は次々に名乗りを上げます。戦争とはなんて嫌な物でしょうか。

 ラムたちが付いて行ってみるとリュウが空手家と戦っています。リュウは結構強いので、日本兵をのして米をゲットします。三浦将軍(池内博之)に投げ渡された米を押し頂いて、かつての仲間にのしてやれと発破かけて去っていきます。

 三浦は陸軍大将なのにやけに若く、自分も腕に覚えがあります。老いた達人なんて務まる日本人俳優はあらかた死に絶えていますし、まさか千葉真一とかに頼む予算は無かったのでしょう。

 三人同時に戦うと三浦は暴れん坊ぶりを発揮します。負けても米をやると言われて我も我もと志願する中国側。戦争とは嫌なものです。

 三浦は強く、ラム達三人をあんまり空手っぽくない蹴りでたちまち片付けます。しかし、ラムは一旦参ったをしておいて不意打ちを仕掛けます。

 ここでやっと三浦は空手っぽい正拳突きを出し、柔道でいう所の袖車絞めで首を締めに行きます。池内博之は柔道経験者なのでこういうのができるのです。

 ラムは血で毒霧攻撃を食らわせて最後の抵抗を仕掛けますが、ブチ切れた三浦に回し蹴りを食らって命を落とします。


中国の金子信雄
 イップマンが翌日仕事に行くとラムの姿がありません。リーに聞いてみますが正直に言えるわけがありません。色々察したイップマンは今日の日本兵の相手に志願して真相を解明に赴きます。

 今日もリュウは勝って米をゲットして、逆に三人とやりたいと挑発的な事を言います。そして出てきた日本兵達は全然空手っぽくない構えでリュウに挑むのです。

 リュウは結構強いのですが、イップマンやサンチャンには負けるというレベルなので、金的を食らってダウンしたところを頭を蹴り飛ばされて虫の息です。

 どっちも今では総合格闘技でも反則になっている危険な攻撃です。命からがらギブアップするしかありません。

 空手は礼を重んじるというのはちゃんと中国にも伝わっているらしく、三人はわざとらしくお辞儀をしてノーサイドになりますが、ここで先走って佐藤がリュウを射殺してしまいます。

 これにはリーもドン引き、三浦もさすがに怒ります。武術家として至極当然の反応でしょう。怒られて佐藤はビビりまくります。

 イップマンはラムが殺されたことを察し、リーに詰め寄って勝負に打って出ます。リーは止めようとしましたが、イップマンは十人相手を要求して本気モードです。

 三浦はまさかという表情ですが、佐藤は「見てみたいもんですな」とにやけて極悪そのものです。

 これでこの人は中国に知らない人の無い悪役俳優になったのです。大人の都合含みとは言え、ここまで憎々しく悪役の出来る人がまだ日本にいたのはちょっと感動です。

詠春拳バカ一代
 ここまでくれば話の筋が『空手バカ一代』と大体同じである事に読んだことのある人は気付くはずです。シリーズ通して大体同じです。今日公開のも同じっぽい空気です。

 イップマンはラムに分けて貰った芋をリュウの血で染まった米袋の側に置き、十人と対峙します。弔い合戦は古典的カンフー映画の王道です。

 イップマンは割と殺す気満々で日本兵を一人ずつ始末していきます。律義に一人ずつかかっていく日本兵たち。ほとんど健さんの殴り込みです。健さんは天津敏を斬った後に半々で死にますが、主役は死なないのが香港流です。

 十人全員仕留めたところで残りが一斉に来ますが、三浦が止めて米をやってレフリーストップです。しかし、イップマンは米の受け取りを拒否し、三浦に名前を問われても「ただの中国人だ」と敵意むき出しです。

 芋とリュウの血染めの米だけは持って帰って遺族に届けました。占領地の市民に嫌われるのは不味いのでまともな軍人なら見舞いくらいは届けるところですが、中国映画の日本軍にそれを求めるのは無理な相談です。おそらくナチスドイツより悪く描かれる唯一の軍隊です。

 リーはイップマンに「三浦が何をするか分からん」と警告しに行きますが、イップマンはビンタをかまして「裏切者」と無茶苦茶怒っています。

 ここで黙って引き下がれば救いようがあるのですが、リーは「ただの通訳だ」と言い訳をしちゃいます。まあ、あの国の役人はそういう人種です。

 少なくとも私の知人の中国人はこの意見に激しく同意しました。中国四千年の歴史は役人の腐敗の歴史なのです。

 イップマンは人が死に過ぎて武術というものに疑問を抱いてしまいます。ウィンシンに拳の手当てをしてもらいながらいちゃついて癒しを求めます。


中国は恐い国
 チンチュンの工場のトラックが斧を持った山賊に襲撃されます。サンチャウリーダーで、消えたラムも混じっています。

 そして工場に押しかけ、サンチャウはチンチュンを殴って積み荷の綿を買い戻せと脅します。

 知らせを聞いてイップマンが助けに行きます。しかしサンチャウたちは綿を持ち去った後です。チンチュンはこの一件で暴力の恐ろしさを知り、工員達に武術を教えてくれるよう頼みます。

 イップマンはこれで生活のあてが出来、イップマンに教わって工員が強くなればサンチャンたちにも対抗できるだろうという考えです。

 もうお判りでしょう。要はこの人たちはヤクザと同じ事をしているのです。中国という国は今も昔も裏に回ればこんなものです。四十世紀の間ずっと世紀末なのです。

 とにかく、イップマンは用心棒兼師匠として工場に居つき、工員たちはもりもり強くなっていきます。


日本軍全開
 一方三浦は相変わらず安いファイトマネーで武術家を戦わせていますが、葉問(ちゃんと律義に『ようもん』と呼ぶ)を呼んで来いとリーに無茶ぶりをします。

 リーとしてはイップマンをこれ以上三浦と絡ませるのは色々ヤバいと察しているのではぐらかしますが、佐藤に理不尽に殴られ蹴られます。

 折悪くイップマンは自宅で子供たちとかくれんぼをして遊んでいます。仕方ないので三浦からの再戦のオファーを届けますが、イップマンは当然応じません。

 そこへ隠れていたチュンに佐藤の魔手が迫ります。拳銃ごっこのふりをして拳銃を向け、そしてウィンシンに「いい女だな」とヤクザでも今時やらないような露骨な脅しをかけます。

 イップマンは当然佐藤と従兵を半殺しにします。リーは逃亡を勧め、リーはのびてる佐藤に仕返しをしますが、責任を問われて佐藤に逆に半殺しにされます。これぞ中国人の求めている日本軍です。

 三浦はイップマンの捜索を部下全員に命じます。ところがリーは大胆にも自宅にイップマン一家を匿っていました。イギリス領で日本軍の手が今の所及ばない香港へ逃がす算段です。

竹竿で二度死ぬ
 一方サンチャウはそんなことなど知らず工場に金の取り立てに行きます。しかし、イップマンに稽古をつけてもらって一番イキりたい盛りの工場サイドは拒絶し、乱闘に突入します。

 いくらなんでも単なる工員のおっさんおばさんがこんな急激に強くなるとは思えませんが、監督もそれが解っていたのかイップマンが直接乗り出してきてこの勝負はすぐに終わります。

 サンチャウは武館を開く夢を潰されたとイップマンに恨み言を言って、手下にに斧を持たせて山賊スタイルで勝負を仕掛けますが、殺傷力の高い武器は死亡フラグです。

 仕方ないのでサンチャウ自ら再戦を挑みますが、あろうことかまた竹竿で殴られて痛い思いをします。

 股間の竿事件でグレたユンが実に都合よく生き残っていますが、何の足しにもなりません。

 そしてユンは弱いくせに再び強盗をやろうと目論んでいますが、イップマンはそんなユンを諭してラムの遺品の謎の缶を手渡します。

 開けてみると、そこには最初の方で遊んでいた凧が畳んで入っています。よく考えればこの凧が色々と元凶になっているのですが、突っ込むのは野暮という物でしょう。

究極の陣頭指揮
 案の定工場での大暴れが三浦の耳に入り、自ら工場に踏み込んで行きます。指揮官陣頭は日本陸軍の伝統です。

 そして例にもよって佐藤が意味もなく暴力を振るっていると、イップマンの方から出てきます。

 佐藤は自分を殴ったから殺したいと当初の目的をすっかり忘れて無茶言いますが、三浦は日本軍への反逆を不問にする代わりに武術を兵に教えろとまさかのスカウトです。

 しかし、イップマンはこれに乗るはずもなく、逆に三浦とタイマンで決着をつけて話を済ませようとします。「前向きに受け止めている」と抜群の日本語センスで嘘の前置きをして取り繕おうとするリー。

 しかしイップマンは連れていかれてしまいます。三浦は本当に試合する気です。佐藤はどうせ言う事聞かないから殺そうと悪の日本軍全開ですが、三浦は「強い男が挑んて来たのに射殺するのは負けと同じ」と武術家としても日本軍人としても結構筋の通ったことを言います。

 佐藤は佐藤で「この勝負の勝ち負けは三浦個人の問題では済まない」と初めて副官としてまともな事を言います。しかし、そういう事ならとっくに手遅れです。

 三浦は俺は負けないと自信満々です。そしてイップマンに自ら飯を運んでいき、最後のスカウトをしつつ日本武術>中国武術というマウントを取りに行きます。この人の部下にはなりたくないものです。

 イップマンは実は日本語ができるようです。中国語で返事をしてオファーも飯も突っ返します。三浦も察したのか、中国語が解るのか、何となく収まってしまいます。

 ウィンシンとチュンはチンチュンの手引きで香港へ逃げますが、ウィンシンは今更武術家の妻としてのバックアップ体制がなっていなかったと泣きながら悔います。。

 こんな感じでウィンシンはシリーズ通して面倒くさい女です。響子さん並みです。だから可愛いのです。


最後はタイマン
 誰だったかは忘れましたが『西部戦線異状なし』で、パウルのホモ達の誰かが「戦争は偉い奴同士で闘牛場で殴り合って決着を付ければいい」という旨の愚痴をこぼしていました。

 そう考えればこれは兵隊さんの夢をかなえるドリームマッチです。もっとも、どっちが勝っても穏当には収まらないのは明白ですが。

 三浦は日中友好と称して街の広場でイップマンとデスマッチを開催します。しかし、佐藤は事前に勝ったら殺すと片八百長を仕組みに行きます、

 イップマンは中国武術は儒教だから仁を心得ているが、お前らにはそれが無いと盛大に反日モノローグをかましながら戦いに臨みます。

 日本だって一応は儒教国だし、武士道というものは儒教がバックボーンにあるわけですが、そんな事を中国映画に求めるのは無理な相談というものです。

 イップマンは八百長に応じるわけがないので、腕まくりして本気モードです。三浦も背負い投げでダウンさせての蹴りなど、総合格闘技を先取りするような技で抵抗しますが、何しろイップマンが相手なので旗色が良くありません。

 ウィンシンも無理矢理チンチュンに頼んで応援に駆け付けたところで、イップマンは三浦の頭を鉄柱に叩きつけてKO勝ちを治めます。

 中国人はイップマンコールをして大喜びです。まるで『ロッキー4』です。ここで佐藤は有言実行でリーの制止も厭わずイップマンを撃っちゃいます。怒って闘技場に雪崩れ込む観衆。

 逆に佐藤を撃ち殺すリーですが、この後でリンチされるシーンがあったそうです。しかし、中国の検閲に引っ掛かってカットになりました。身贔屓以外の何物でもありません。

 どうにか命の助かったイップマンは香港に脱出し、これからイップマンは詠春拳の中興の祖として大活躍し、ブルース・リーを弟子に取ったと結んで次回作へ思い切り含みを持たせて終わります。

BL的に解説

中国文化とホモ
 今の中国ではLGBTは酷く弾圧されています。赤いBL的映画鑑賞でも述べましたが、共産党とは相容れないのです。

 しかし、作中の時代はまだ共産党は中国のゴロツキの中でもその他大勢でしかありません。そして本来中国は男色の盛んな土地なのです。

 考えて見て下さい、宦官が天下を取る国です。ホモが流行らないほうがどうかしているのです。『ラストエンペラー』の真の好物はチキンラーメンではなく宦官だったというのは細菌認知度が高まっていることです。

 そしてわが国には武士は各種武芸に精通しているのが当然とされ、武芸十八般という言葉があります。

 これは中国でも同様です。本当の武術家は拳法に各種武器術は言うに及ばず、各種の学問や教養にも通じているのです。

 そしてその中には夜の寝技である房中術が往々にして含まれています。男同士も想定しているのは言うまでもありません。


ドニーさん総受け
 第一回の健さんに始まり、総受け認定俳優もかなり増えてきました。強くて優しい男は総受けです。総受け掛け算は国籍を超えるのです。

 イップマン程の教養ある達人が漢相手の房中術だけ知らないなんてありえません。それに頼めばヤらせてくれそうなところがあります。

 そしてシリーズ通して女はウィンシン一筋ですが、男にはモテてモテて仕方がありません。奥さんを大切にするゲイ(バイ)は結構居ます。夜の事とパートナーとしての信頼は別建てなのです。

 今度の新作を観に映画館に行けば三島由紀夫の姿を見ると思いますが、あの人だって奥さんをぞんざいに扱ったかというと決してそんな事は無いのです。

 ただし、あの人は制服の格好良い私兵や熊本の田舎青年やスピリチュアルな人や人間国宝をもっと大切にしたのも事実です。この辺に奥さんの複雑な心境の機微があるわけです。

 当然イップマンは女相手の房中術もばっちりでしょう。だからこそウィンシンはイップマンが武術にのめり込み、武術家とといちゃつく様を見せつけられて寂しさと嫉妬を爆発させるのです。

 男同士の問題に女は介入が不可能というマンコントロールの原則がある上にイップマンと仲良くするには武術という特殊技能が必要なので、ウィンシンは悔しいと思っても手出しができないのです。

 かように今回ウィンシンはかなりコンドーム扱いされていますが、それでもイップマンはウィンシンを毒牙にかけようとした佐藤を半殺しにするくらいウィンシンを愛しています。

 こういう優しさこそが総受け要素になるのです。ここからは掘り下げていきましょう。


チンチュン×
 どちらも地元の名士であり、旧知の仲です。イップマンは資産家のボンボンですが資産を運用する能力が無いので、商売に強いチンチュンに経済的に依存しています。

 その一方でチンチュンもイップマンが経済感覚ゼロなのを心配してビジネスパートナーに誘い、息子を一番弟子にしてくれと何かというと頼むのです。

 そうしていちゃついているとウィンシンは強烈に嫉妬します。普段から相当派手にイチャイチャしているに違いありません。

 そして戦争が始まり、家を日本軍に取り上げられて極貧生活に落ちたイップマンに手を差し伸べたのもチンチュンでした。しかしイップマンは断りました。

 チンチュンも「恩を売りたくない」と強くは引き止めません。ちょっと待って下さい。勘定が合いません。これではイップマンは出資しっぱなしです。

 もうお判りでしょう。イップマンは既に身体で支払いを受けているのです。あるいはもう俺とお前の仲は損得抜きと言葉なくとも通じるほどの関係であるとも取れます。

 おそらく後者でしょう。イップマンはチンチュンの工場の危機に弟子を取らないという理念を曲げて工員たちに教えを授ける決意をします。当然息子が一番弟子です。給料が身体で天引きされるのも言うまでもないでしょう。

 そして身の危険を承知で工場襲撃を阻止するために駆けつけ、チンチュンも危険を承知でイップマン達の佛山脱出に協力するのです。

 生きるか死ぬかの極限下でこそ愛は強烈に輝くのです。この二人については次作で更に掘り下げがありますのでお楽しみに。


リー×
 水野先生も大喜び、警官としてイキっていたリーは、武術というものを舐めていました。これからの時代は拳銃だとみだりに拳銃を振り回すあたり不良警官です。

 しかし、イップマンは拳銃を分解してリーに武術の凄さを身体で分からせます。以来リーはイップマンを深く尊敬し、信頼するようになりました。

 そしてあの後お茶をご馳走すると言って収賄一歩手前の接待を受けていましたが、股間の拳銃はもっと露骨な接待を受けたのは明白です。弾を撃ち尽くした後にリーは体の芯から拳法は凄いと思い知ったはずです。

 サンチャンの襲来にもイップマンなら勝つという前提でリーは事を進めます。そして目論見通りイップマンは勝利し、サンチャンの顔を見るやそれを見抜くのです。

 そして弟子入り志願者を統制するという奇行に出ます。自分が一番弟子になる気満々です。もう身も心もイップマンの物になっています。

 しかし、サンチャンは体制が変わると日本軍にすり寄って三浦の武術家集めという道楽に付き合って男漁りをします。

 しかし、その為にラムとリュウは命を落としてしまいます。イップマンは優しい男なので無茶苦茶怒って「裏切者」とリーを思いきり罵ります。

 痴話喧嘩の末に決別したかに見えた二人でしたが、リーは最後までイップマンを三浦から守ろうとしていました。リンチも甘んじて受け、殺される危険も厭わずイップマンを家に匿い、加藤を殺しさえします。

 そしてカットされたとは言えリンチされてしまうわけですが、あの後リーは間違いなく殺されます。しかし、リーはそれでもイップマンに銃を向ける加藤と刺し違える覚悟で大仕事をしたのです。

 リーは最後の最期で権力の犬であることを辞め、イップマンに殉じたのです。いやあ、映画って本当に素晴らしいもんですね。


リュウ×
 ここからは登場順に行きましょう。イップマンが優しさを最も顕著に見せたのはリュウでした。

 サンチャウよりずっと礼儀正しいとはいえ、彼のやった事は道場破りです。しかし、リュウが負けたら負けたで他言無用という虫の良い約束をホイホイ引き受けます。

 イップマンは佛山生まれ、詠春拳育ち、武術家っぽい奴は大体友達であり、武館を開いたばかりのリュウの面目を潰して彼の邪魔をするなど考えられない事なのです。

 リュウはイップマンの強さと太っ腹ぶりに感動し、武館の経営に精を出すわけでし。弟子も集まって上手くやっていましたが、アホのユンが全部ぶち壊します。

 仕方ないのでリュウはイップマンに頼んで勝負その物をなかった事にしてもらおうとします。イップマンがこれを断ろうはずがありません。

 手打ち代わりに夕食にリュウを誘うイップマン。今日のデザートは私と相成るわけです。こうしてイップマンは佛山の武術家を食いまくっているに違いありません。

 そしてイップマンから武術の極意を身体で学んだリュウはサンチャウとの修羅場も潜り、日本兵相手に米を稼ぐほどの腕前に成長します。

 しかし、最後は三人同時の勝負に失敗して佐藤に射殺され、これに怒ってイップマンは反日モードに突入し、10人ぶっ倒して遺品の米を遺族に届けるのです。

 なんと美しくも悲しい愛の物語でしょうか?リュウは草葉の陰でイップマンの優しさに涙を流すのです。


ラム×
 ラムは武術マニアですがマニアゆえにコロコロ師匠を変えて長続きしないビッチです。リュウの弟子だったというのに弟の一件を足掛かりにイップマンに接近しちゃっかり教えを乞う多情ぶりです。

 しかし、そんなラムにイップマンは満更でもなさそうです。ウィンシンが嫉妬の炎を燃やしているのが何よりの証拠です。

 そしてラムは再会して日本軍と対決する頃にはリュウと互角の腕になっています。明らかにイップマンの教えを受けた者は急激に強くなっています。夜の秘密特訓があるに決まっています。

 石炭運びの仕事での再会を喜び、昼食の芋を半分プレゼントします。食糧難のさなかでこれ以上の愛情表現はありません。強くなった男のタンパク質をおまけに付けるつもりであったのは間違いありません。

 しかし、ラムは三浦との勝負に敗れます。苦労したらしくダーティな手も使いますが、結局ラムは三浦に殺されます。

 それを察したイップマンは行きたくもない道場へ行き、リュウが殺されたことでラムも殺されたことを察し、血染めの米と思い出の芋をお供えして十人を半殺しにするのです。

 日本兵はいわば武士です。そしてサツマイモ。そう、薩摩は東洋のソドムです(ゴモラは土佐)。道場に血と硫黄の雨が降りました。愛するものを二人も殺した連中を許すことはできないのです。


ユン×
 ユンはアホなので、家も手伝わずいい歳して凧あげをして遊んでいます。そしてイップマンの家の木に凧が引っ掛かってしまったばかりにリュウとイップマンの秘め事を垣間見てしまうのです。

 早速言い触らすユン。ここで見えてくるのは、ユンはアホですがイップマンが大好きであるという事です。イップマンがリュウを圧倒するのを観たのは初めて股間の青龍刀を使った時以上の感動であり、リュウなどコンドームでしかないのです。

 しかし、そのせいで青龍刀をお披露目する羽目になり、それきりユンは糸の切れた凧のように行方をくらまします。きっと刃渡りに自信が無かったのでしょう。

 そして兄の死も知らずにサンチャウと山賊稼業をするまでに落ちぶれます。そしてイップマンにぶちのめされます。憧れの人との最悪の再会です。

 そしてユンはラムが大事に持っていた、あの日遺していった凧を手渡されて涙を流して改心します。

 ここで揺さぶりをかければ一発です。ユンは憧れの人と最高の形の手合わせを実現させるのです。

 いくつも愛を持っているダーリンに、ウィンシンは嫉妬の雷を落とします。しかし、が雷をイップマンに届けさせません。あの曲は川井憲次氏の作ではないのは内緒です。


サンチャウ×
 彼については次回以降です。もう凄い事になりますから今回はよしましょう。ただ、あの取り巻きとはデキてると思います。


三浦ガチホモ説
 日本軍がホモだというのはもう何回目かもわかりませんが、それを抜きにしても三浦は怪しい要素が一杯です。

 第一陸軍大将なのに若すぎます。日本では士官学校と陸軍大学を首席で出ても爺さんになるまでになれるかどうかというのが陸軍大将なのです。

 三浦は家紋が菊なのかもしれません。あの一族は特別扱いで昇進するのでこのくらいの歳でなれなくはありません。あの家が中国政府は大嫌いですから整合性も取れます。本名は三浦宮なのです。

 あの家は何しろ歴史が長いので、後ろの菊絡みのエピソードは探せば腐るほどあります。この時の家長の前の家長なんかも怪しいですよね。

 そしてこの家が好き過ぎて切腹した人がゲイ日本代表です。まさか三回もこの人の話を出すとは思いませんでした。

 流石に捕まるのは嫌なので家柄の話はこの辺にしておいて、三浦の行動も怪しげです。陸軍大将は万単位の兵力を指揮する仕事です。あんな暇ではありません。

 なのに三浦はお気に入りの部下に空手を仕込み、恐れ多くも陛下の物である米を浪費して地元の武術家と戦わせています。もっとも、元は現地で巻き上げた米なのでなかなかの外道ぶりです。

 軍人が格闘技を習うのは当然ですし、日本軍は貧乏なので金も道具もいらない相撲や柔道は稽古兼娯楽として推奨されるところでしたが、これで戦争に勝てるんなら日本は勝っています。ましてあんな少人数に仕込んでも無意味です。

 しかも、空手は当時は沖縄ローカルの物でしかなく、沖縄県は徴兵の対象外だったので、日本軍で盛んに行われたという話は寡聞にして聞きません。

 つまり、あれは全て三浦の道楽なのです。あの空手軍団は三浦の楯の会なのです。四回目になりますが、上手い具合にあの人も空手の黒帯でした。徴兵逃れ疑惑がありますが。

 いずれにしてもあんな馬鹿な真似は家紋が菊でなきゃやってる暇はありませんし、やったらやったで家長が許すはずがありません。相撲大好きとはいえそんな公私混同を許す人ではなかったはずです。

 もっとも、中国政府の見解は私と真逆でしょうから丁度いいのでしょう。


三浦×佐藤
 佐藤は恐ろしく無能です。日本が負けた遠因になった学校の勉強しかできない無能な将校の典型のような男です。

 しかし、三浦は佐藤を大事に飼っています。何故か?デキているからです。やんごとなき将軍と副官なんてものは万国共通でそんなもんです。

 佐藤は暴力と三浦の事しか頭にないゲイのサディストです。あの理不尽な行動も三浦への愛が前提にあれば説明が付きます。

 佐藤にとって世界は常に三浦を中心に、自分を一番側に置いて回っていなければいけません。リーは三浦の意の通りに動かない突撃一番なのです。

 根性を見せたリュウを射殺し、三浦がイップマンに固執する一方で殺し太がるのは嫉妬です。強い男フェチである三浦が自分から心離れしないためには殺すのが一番です。

 しかし、三浦の心は完全にイップマンに傾いていきます。そしてタイマンという名の事実上の公開セックスを決意した三浦をどうにか翻意させようとしますが不首尾に終わります。

 国の事など口実です。三浦と二人で居られるなら、日本が彼とお仲間と噂の『ラストエンペラー』に朝貢する関係に戻ってもいいのです。

 そして佐藤はイップマンを脅してわざと負けて三浦を満足させないように仕向けますが、イップマンは三浦の見立て以上に強い男なのでこんな話には乗りません。

 そして三浦は敗れました。佐藤にとっては敗戦よりおぞましく残酷な現実です。

 そして嫉妬に狂い、イップマンを拳銃で葬ろうとします。しかし、もう一つの愛が彼を九段下の神社へと送り込むのです。多分三浦はあそこへの出入りで大揉めになったと思いますが、佐藤にとってはそれは焦らしプレイです。


三浦×
 強い男フェチの三浦はイップマンに魅了されました。そして恐れ多くも国民の血税でイップマンを自分のものにしようと異常な執念を見せます。

 恐れ多くも陛下から預かっている部下をイップマンを捕まえる為にみだりに動かし、挙句の果てには全員に探しに行かせるのです。

 自分の部下が何万人居ると思っているのでしょうか?次のダライ・ラマを探すのにでもそんな人数はいりません。愛は盲目です。

 そしてとっ捕まえて牢屋にぶち込み、最後までイップマンを執拗にスカウトします。もう三浦は葉問(ようもん)の菊紋もとい肛門の事しか頭にありません。

 しかし、イップマンは愛する男を殺したこのヤンホモ将軍の求愛を拒絶し、タイマンで勝負をつける展開に持ち込みます。

 もう三浦は大乗り気です。負ければ日本軍の権威は地に落ち、勝ったって三浦閣下はみっともないと世間に陰口をたたかれます。しかし、三浦にはもはや世間体など気にしている余裕はないのです。もう先っちょは入っているのですから。

 しかし、結果としてイップマンは三浦の先っちょを締めて千切ってしまいました。三浦は本望だったでしょう。自分を倒すほどの強い男にやられたのですから。

 宦官になればちょっとは有能になるかもしれませんが、あんな無様を晒したら良くて予備役(クビ)で戦後に処刑、現実的にはおそらくは切腹を強要されます。

 介錯してくれるはずの佐藤が居ないので三浦はさぞ苦しんで死ぬことになるでしょう。ただ、辞世はノーベル賞モノのを作るはずです。まさかの五回目が終わったところで劇終としましょう、

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