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母にレズビアンだとバレてからの急遽帰省。問い詰められた話
お母さんは言葉を選んでいた。
「差別するつもりはない」と前置きし、
「それでも反対だよ」と告げられる。
(それがどうした)
心の中でつぶやく。
誰かに反対されて、
そうですかと変えられたら、どんなに楽か。
お母さんは続ける。
同性婚のニュースが流れても、
まだ世の中は差別だらけなのだと。
お前が事故にあっても、
相手の子は手術室に入れないだろう。
お前が養子をとっても、孫だと可愛がる気はないと。
「それでも覚悟はあるのか?」
同性の恋人が発覚してから日にちが経っていたこともあって、お母さんは冷静なように見える。
現実を受け入れた上で、
娘が女と付き合っているのは反対だと言っているのだ。
私は昔から母とウマが合わなかった。
気に食わないと殴られてたし、
大人になってからは母に自分を理解してもらおうなんて気持ちはサラサラなくなり、
そもそもカミングアウトなんてする気もなかった。
「お母さんの気持ちはごもっともだから、ショック受けるのも仕方ないね。だから、認めて欲しいと思わないよ。説得もしない。」
私を認めたくないならどうぞお好きに。
わたしも、母の説得に気力を奪われるのは嫌だ。
「女だけが好きなのか?バイなのか?」
母が続ける。
カテゴライズはされたくない。でも納得しないだろうから、
しかたなく答える。
「どっちにも惹かれるよ」
そして付け加える。
「でもそんなこというと、じゃあなんで男じゃだめなの?って言われるから。嫌で言わなかったの」
母はとうとう泣き出した。
「一時の気持ちだったらいいけど、結婚する気なの?」
そんなこと分からない。
別れるかも、結婚するかも。
別れても、次に付き合うのは男か女か?
自分で決められない。
「育て方が悪かったのか」
「もう一人子供生んでおけばよかった」
「失敗した」
「孫がいなければ、お父さんとも離婚する」
「普通なんて言いたくない。でも普通の家は…」
母の言葉はまだまだ続く。
「そんな気持ちにさせてごめんね。」
私には、そんな言葉しか出てこない。
私が大人でよかった。
お母さんに認めてほしいと思うタイプでなくてよかった。
何を言われても傷つかないし。
「何故言ってくれなかったの?」
今まで散々、カミングアウトが嫌になる言葉を言ったくせに、ふざけたことを聞いてきやがる。
「今言われた言葉を、彼女には聞かせたくないから。傷つけたくないし。」
「私は?お母さんは傷ついてもいいの?」
「私に彼女がいることで、
お母さんが傷ついても。
それはお母さんの問題。
お母さんの中で解決してよ。」
お母さんを突き放していると自分でも思う。
「お母さんの気持ちを尊重するから。分かってもらおうなんて思わないよ」
そう言うと、
「あんたは私をバカにして!真剣に話してるのに!」
と母の語気が荒ぶった。
「ネットでいろいろ調べた!馬鹿じゃない!」
母のこの言葉に、
私も一瞬怒りがなくせなくなる。
私は10歳の頃から、
自分は女が好きだと知っていた。
だから、それから15年間。ずっと自分のことを調べていた。
性同一性障害ってやつなのか?
みんながあだ名で呼ぶオトコ女なのか?
同性愛を辞書でひいて、
それらに関連する本を読んだ。
それでも、自分のことは分からない。
なのに!!
あの人は、
たかだか数週間前に娘が女と付き合ってると知って、それはもうネットで必死に調べただろう。
でも、母が本当に調べていたら、
育て方が悪かっただの、
失敗だだの、
そんな言葉はかけてはいけないと分かるはずだ。
思わず笑って、
「初めてのLGBTって本、買ってあげようか?」
皮肉が口をついて出る。
「あんたが嫌いなわけじゃない。でも、この世には差別がいっぱいで。大事な娘をそんな目に合わせたくない。」
差別されてほしくないだと?
お母さんは何も分かってない。
「私は、私を差別してるんだよ。
私は女が好きな自分がキライで、気持ち悪くて、彼女といると罪悪感を抱くんだよ。
でも、そんな気持ちさせてるのは誰なんだろうね?」
彼女のことを思い出す。
一緒にいると、落ち着く。
大好きだし、幸せな気持ちにさせてくれる。
でも、その気持ちをぶち壊しにするのは、
お母さんが知ったら、
私にどれだけガッカリするだろう。
私を気持ち悪いと思われるだろう。
そういった親への罪悪感だ。
わたしは、私なりに配慮して
お母さんにカミングアウトしてないのだ。
お母さんや世間に差別されるまでもなく、
私はもう十分に自分を差別してるんだよ。
「お母さんはどうしてほしいの?」
今度は私が母に聞く。
「お母さんに理解してほしくないの?」
私は、親に泣いて自分を理解してくれてと頼み込まなきゃいけないのか?
理解したいなら、本でも読んで勝手に勉強しててほしい。
お母さんは、私が泣いてお母さんにごめんね。というのを望んでいたのだろうか。
そうすれば、哀れに思って理解してくれたのか。
「差別される覚悟はあるのか?」
母はまだ言っている。
「でもお母さん、
世の中は良い方向にしか進まないよ」
そう、答えるしかなかった。
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