見出し画像

02:母性/湊かなえ


愛って最強の呪いかもしれない。

女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。
母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。 世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。
……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。
母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。

母性とは何か、を考えさせられる話だった。
娘にとっては聖母のような母も第三者(こちら側から)目線で見ると毒親のようにすら感じ取れる。子に対する愛情とは愛し方って人それぞれだと思うけれど、度が過ぎているというか過剰すぎるというか……狂気的だな、と。

自分がそうされてきたように自分の娘にも同じように接しようとする母、自分の母の様に振る舞っているつもりなのかもしれないけれど、心がずっと子どものままで読んでいてしんどかった。勿論いい意味で。
母親というだけで理想とか固定概念みたいなものに当てはめるのも良くないけど、ここまで子どもの心のまま母親である彼女がすごく可哀想だとも思った。一番可哀想なのは、彼女の娘なのだけれど。

愛されるって一体なんだろう。大事にされることだけが愛じゃないんじゃないか。

作中に頻出する『愛能う限り』最強の呪いの言葉だと思った。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?