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三鷹歌農書 1600-1620

はつなつの粒の複眼をちこちに摘んでわが身にエビガライチゴ
三鷹歌農書(一六○一)
妖精の杖といふ名のダイコンは根でもなく葉でもなく莢食はすなり
三鷹歌農書(一六○ニ)
廃材に腕木庇(うできひさし)を設(しつら)ふる黒キクラゲの貫禄を見よ
三鷹歌農書(一六○三)
無花果に穴開け首を突つ込むをコメツキムシ見つかつてしまひ放らる
三鷹歌農書(一六○四)
無花果のくろむらさきの薄皮を割りてピンクのめらめらを食ふ
三鷹歌農書 (一六○五)
ハナムグリに囲まれ桑の黒き実がハナムグリになりながら消えゆく
三鷹歌農書(一六○六)
なかなかのおやつだつたよ熊蜂の胴をちぎりて蜜を吸ひしと
三鷹歌農書(一六○七)
白い粉まぜると血が濃くなるんだとマルベリー染色実験の子は
三鷹歌農書(一六○八)
桑の実と酢で紅赤に明礬をさらに加へて韓紅(からくれなゐ)に
三鷹歌農書(一六○九)
桑の実の今年の役目終へたるをご苦労さまとコンポストまで
三鷹歌農書(一六一○)
木星が転がつてゐる畝の上ターニップいつしか脹らみし
三鷹歌農書(一六一一)
宿根草(ペレニアル)ローマンカモミール咲き出すも詠んでたましひの砦を築く
三鷹歌農書(一六一ニ)
あと少しでコーン食べ頃になると知れどハクビシン気になりて採るなり
三鷹歌農書(一六一三)
頼るものもう無きホップなほ空へ風にあそばれながら伸びゆく
三鷹歌農書(一六一四)
蕪の畝に一つまぎれしダイコンの脚あまた蕪にならむとせしや
三鷹歌農書(一六一五)
一つまた一つ足跡つけるごとマーシュマロウのましろき花は
三鷹歌農書(一六一六)
葉脈としては失格はみだして太る青虫に伸ばすわが指
三鷹歌農書(一六一七)
ばけものに二日も経てばなる前にズッキーニわが腹に収めむ
三鷹歌農書(一六一八)
明日ひらく蓮の蕾を押しひらき花芯に茶葉をかぶせて閉ぢぬ
三鷹歌農書(一六一九)
蓮の葉を一つ切り取り茶葉容れし蕾を包み込み香を移す
三鷹歌農書(一六ニ○)


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