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三鷹歌農書 1541-1560

うすももの花群れ咲くを見つけたりムスクマロウあはきみどりの葉陰
三鷹歌農書(一五四一)
急ぐなよアイズ・フォー・ユーいちりんが鴫立沢のあを葉を抑ふ
三鷹歌農書(一五四ニ)
水無月のそよかぜ留むる黄の釦もつこりもつこりカモミール咲く
三鷹歌農書(一五四三)
水無月の実に灯されむ房酸塊(ふさすぐり)フランボワーズ海老殻苺
三鷹歌農書(一五四四)
フォーク手に並び競漕(レガッタ)開始せり馬ふんを荷台から堆肥場へ
三鷹歌農書(一五四五)
農園に大涌谷が出現すあたらしき馬ふんの山崩すなり
三鷹歌農書(一五四六)
噴石のごとき敷き藁の塊が軽トラの荷台から飛んで来る
三鷹歌農書(一五四七)
アンモニアのむわんと匂ふサウナよと思ふまもなく馬ふん堆肥苦し
三鷹歌農書(一五四八)
酒蔵のタンクの中に居るのかと知りて堆肥場の穴から逃る
三鷹歌農書(一五四九)
剪定枝も野菜残渣もブツ切りに馬ふん堆肥のあまき餌(ゑ)となれ
三鷹歌農書(一五五○)
馬ふんくれし馬術部さんの軽トラの荷台を満たす採りたてみやげ
三鷹歌農書(一五五一)
グリーンのパンツを脱いでゆくからにグリーンパンツなるズッキーニ
三鷹歌農書(一五五ニ)
南仏をわが家の鍋に呼び寄せてアーティチョークのバリグール風
三鷹歌農書(一五五三)
子の指の皺に紛るる一つぶを今年初めてのカマキリと知る
三鷹歌農書(一五五四)
あご鬚を啜るがに食ふ剝きたてのベビーコーンのひげを見せつつ
三鷹歌農書(一五五五)
剝きたてに茄子味噌をのせ朝鮮薊(アーティショー)武蔵野風(ア・ラ・ムサシノ)を気取つてみたり
三鷹歌農書(一五五六)
栗の花に咽びつつ地に蹲りオヒシバの根にまた鎌を入る
三鷹歌農書(一五五七)
たましひを生かし形見を滅ぼさず幹折れ桜もて布を染む
三鷹歌農書(一五五八)
根返りのサクラの若木抱き起こし空にあるべき桜を戻す
三鷹歌農書(一五五九)
カメムシの幼虫の背とキイチゴの世界は点と粒のあつまり
三鷹歌農書(一五六○)


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