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三鷹歌農書　１４６１－１４８０

三鷹歌農書
今年また整理解雇の時は来てかたち良きビワの実の数減らす
三鷹歌農書（一四六一）
あかあかとクワの豊作注意報たわめる枝の地に着くほどに
三鷹歌農書（一四六ニ）
地に海の湧き出づる気配サツマイモのツルに葉あふれ覆ひゆくべし
三鷹歌農書（一四六三）
零れたるも残れるも生えキクイモに大麦ハウスの出口を塞ぐ
三鷹歌農書（一四六四）
ロケットの切り離しかとタマネギを膨らませ終へ葉の倒れたり
三鷹歌農書（一四六五）
骨と突、草かんむりを戴きて蓇葖（こつとつ）とふは牡丹の果実
三鷹歌農書（一四六六）
チンアナゴ土に顔出し次々にヒレの葉ひろげヤマノイモ萌ゆ
三鷹歌農書（一四六七）
折られても折られても芽を絶え間なくふき出す葛を倣ひて詠まむ
三鷹歌農書（一四六八）
場外級となりしパセリの二年目の達成感を誉めてから抜く
三鷹歌農書（一四六九）
貰ひ手なきイタリアンパセリを称ふべく香芹（パセリ）葱頭（オニオン）大蒜（ガーリック）ライス
三鷹歌農書（一四七○）
小豆色のあづきの匂ひ天狗風に折れし桜の枝を煮込めば
三鷹歌農書（一四七一）
目の合ひてしまひしクワをヌバタマノソラオヨギフグと名付けて食へり
三鷹歌農書（一四七ニ）
スタジアムと呼びたくもなる車前草（オオバコ）の踏まれておらぬ全きすがた
三鷹歌農書（一四七三）
くづれゆく粒とあぶくの抱擁を目守りて鍋に煮るマルベリー
三鷹歌農書（一四七四）
剪定のついでにナムル木通（あけび）楤（たら）楮に桑の若芽を摘んで
三鷹歌農書（一四七五）
根本さへ残つてゐれば復活はできるのだネギに水と光を
三鷹歌農書（一四七六）
ハーブなんて雑草と言ふ爺のためプラカードみたいな名札を作る
三鷹歌農書（一四七七）
冬あさき年は構へよ笹の葉にもツヤアオカメムシ緑の過剰
三鷹歌農書（一四七八）
はつなつのまひる交尾を解かぬままときをり位置を変へてナガメは
三鷹歌農書（一四七九）
端黒大横這（バナナ虫）甘き汁吸ふちよいワルの子らに人気なれば潰さず払ふ
三鷹歌農書（一四八○）


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