見出し画像

三鷹歌農書 201-220


満ちながら月(つく)よみの吸ふ土のみづ菜の根に届き菜の列揃ふ
三鷹歌農書 (二◯一)
ムクナ豆の房を抑ふるナタマメに主役あらそひのさまをおもふも
三鷹歌農書 (二◯二)
秋バラの大きく咲くも風ならぬわが息にさへほろびてしまふ
三鷹歌農書 (二◯三)
消えてゆくものなどあらずハナグモは花のひかりの結晶として
三鷹歌農書 (二◯四)
猫二ひきじやれあふやうに湯にゆるび香り奏づる白薔薇ボレロ
三鷹歌農書 (ニ◯五)
真夜一輪咲き定まれり型も香も極まりたれば鋏を拒む
三鷹歌農書 (二◯六)
雄蕊一つ花弁と化して大輪の薔薇の真中に帆を張るごとく
三鷹歌農書 (二◯七)
散るほかは無き明日なれば花終ふるバラを聚めて花壇の縁に
三鷹歌農書 (二◯八)
くれなゐの最も濃きに煮詰まりぬバラそれぞれに色の違ふに
三鷹歌農書 (二◯九)
バタフライピーシロップとパンプキンパンp音の泡立ちも食む
三鷹歌農書 (二一◯)
武蔵富士とふ四股名を与へたきまでに力石(ちからいし)を産みたるキャベツなり
三鷹歌農書 (ニ一一)
一ツ目に睨まれゐるやローゼルの奥にひそめるオディロン・ルドン
三鷹歌農書 (二一二)
武蔵野のブタマタギとはラグビーのボール爆ぜたるごとき芋なり
三鷹歌農書 (ニ一三)
豚さへも跨ぐ味とやブタマタギ掘りあげし子らは大いに燥ぐ
三鷹歌農書 (ニ一四)
ぎりぎりの結球ねがひ霜月の初めハクサイ植え直すなり
三鷹歌農書 (ニ一五)
競り合ひし隣が抜かれ空く穴のさびしさうにも見ゆるダイコン
三鷹歌農書 (二一六)
ローゼルの根の踏ん張りを褒めながらシャベルを置いてまた一休み
三鷹歌農書 (二一七)
スクラムの組んず解れつ豆板醤炒めにしたる茄子とピーマン
三鷹歌農書 (ニ一八)
山査子に砂糖をまぶし煮て溶かしおもひのままに固め直せり
三鷹歌農書 (ニ一九)
土を出て味噌に絡まる宿命を全うしてくれたる落花生
三鷹歌農書 (ニニ◯)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?