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農業日誌「夜業と自動運転トラクター」

はじめに

先日、今シーズンに入ってから初めて夜業しました。

あまり暗い中の作業は危険だしやりたくないのですが…。
天気予報を見ると翌日に雨の予報があり、その雨前に一仕事終わらせるために決行することにしました。遠方の畑でまとまった時間が必要な作業なので、畑づくりや種まき作業に追われて、なかなかできずにやや適期が遅れてしまっていたのです。


雨前にじゃがいもの培土作業

5月15日、午後から畑に移動して作業開始。
じゃがいもの畝にゆっくりと土を盛っていく作業です。

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これは「培土」という作業で、じゃがいもを植えた場所に土を寄せて山を作ることにより、じゃがいもが大きく成長できる場所を作ります。
じゃがいもは成長段階で地表面に露出して太陽光を浴びてしまうと、緑色に変色して品質が落ちてしまいます。この山はそれを防ぐ役割があります。

山が畝に対して曲がってしまっていたり、土が乾燥していたりして綺麗な山が作れずに崩れてしまうと、地表面に露出するじゃがいもが増えて収量減につながります。タイミングと正確さが重要な作業で、品質の良いじゃがいもを栽培するために必要な作業工程になります。

培土のようす
山が崩れないよう時速2km弱のスピードでゆっくり作業機を走らせます。


この日は機械の故障もなく順調に進み、薄暗くなる夕方7時。
だいたい作業終了までの見通しが立ってきました。電柱のある場所や防風林の側の危なそうなところだけ明るい時間に先に済まし、晩ご飯を食べに一旦家に戻ります。

そして夜8時ごろに作業再開。辺りは真っ暗です。

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2時間ほど作業をして後もう1往復のところで、燃料切れの心配がでてきたので続きは断念。自分の段取りの悪さを嘆きます。でもここまでやれば、後は翌朝でも大丈夫だろうとタカをくくり、この日は休んで朝。

4時過ぎに起きるとすでに小雨が降ってて一瞬絶望しましたが、土の状態を見るとさほど濡れていないため、問題なく作業ができそうでした。

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給油して作業開始し、30分後にはその畑での作業をしっかり終えることができました。ひとまず一安心です。


さて、この培土作業ですが、先ほどもお話ししたように正確さが必要な作業です。
じゃがいもの種が植えられている場所(畝)から山がずれてしまうと、収穫期には土から顔を出して商品にならないじゃがいもがゴロゴロとできてしまうことになります。

この作業を夜間の視界が悪い中で安心してできるようになったのも、次にし紹介するトラクターの自動運転技術の普及のおかげだなーと感じます。


トラクターの自動運転

トラクターの「自動操舵(オートステアリング)」システム。
農家の間では「GPS」などと呼ばれてます。

参考

トラクターに後付けで装置を取り付けると、方位角などをもとに事前に設定したラインに沿って自動で走ってくれるという技術です。
人工衛星であるGPS(正確にはGPSはGNSSと呼ばれる衛星測位システムの中の1つで、自動操舵にはGPS以外の人工衛星も使われています)の信号を受け取る受信機、オートステアリングハンドル、そしてモニターを搭載することで、衛星から受信した位置情報を元にハンドルを自動制御してくれます。

当農場のトラクターに設置されたモニター(「Trimble GFX-750」)
誤差は3cm程度、作業した場所が黄色く塗られる。なかなかの未来感があって好き。

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農業機械を運転して作業する際は通常、

・トラクターの直進運転
・トラクターに取り付けている作業機の調整

これらを同時に行う必要がありました。
しかしこの自動操舵システムをトラクターに導入すると、運転中にハンドルを持つ必要がなくなります。なので作業機の調整や、何か機械の異変がないかなどに集中して作業することができるようになります。

これまでだと夜間作業は視界が悪く真っ直ぐ走るのも一苦労でしたが、この技術により暗い中でも作業がしやすくなり、時間を有効に使えるようになりました。
夜間作業だけでなく、真っ直ぐ走れることで作業効率や作物の収穫量・品質も上げられます。体への負担が減るのも重要ポイントです。


さらにこの直進自動運転が発展した形が、直進だけでなく畑の端での旋回と作業機の上げ下げまでも完全に自動で作業してくれる「ロボットトラクター」です。すでに販売されており、実用できる段階まで来ています。
ネックは費用ですが、春と秋の農繁期に作業人員が1人分減らせるなら導入もありだなあ、と最近シミュレーションしつつ作業しています。完全に無人というのはまだまだ安全面で難しそうなのですけど。憧れるなぁ。

参考:ヤンマーアグリジャパン


おわりに

農作業の計画を立ててそれ通りに作業を進められれば良いのですが、天候は人類にはコントロールのしようがありません。天気予報を参考にしながらも臨機応変に判断して、作業を調整していく必要があります。
このような作業の判断は、いくら機械やAIが発展しても人間が行う必要があるんだろうなあ、と思います。

トラクター自動操舵の技術は、十勝の農業の現場を見るとここ数年で急速に進歩・普及しています。数年前には贅沢品のような感覚でしたが、今ではもう手放せない必需品となってきている気がしますね。

そんな未来?の技術に想いを馳せつつ、今後の作業も焦らず安全に取り組んでいきたいと思います〜。

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