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【自作ツール】QRコードとスマホで農産物の収量管理ができるアプリを作りました【Glide】

はじめに

馬鈴薯(じゃがいも)の収穫コンテナの管理のために、スマホで使える「農産物の収穫・選果管理アプリ」を作ってみました。

ざっくりいうと、収穫物を入れるコンテナにQRコードを貼り付けて、それをスマホで読み取ることで作業状況や収穫量の把握ができる…というものです。  
(「QRコード」は(株)デンソーウェーブの登録商標です。以下「QR」と表記します。)  

⬇︎制作途中の様子(twitter)



アプリ制作には「Glide」というノーコードサービス、データベースとして「Spreadsheet」、そしてちょっとしたプログラムは「GAS(Google Apps Script)」を使用しています。  

これらの技術的なお話は別の機会に回すこととして…  
今回はどんな課題があってどんなものを制作したか、というのを中心に紹介していきます。

課題と設計

今回の一番の課題は「馬鈴薯の収穫・選果の進捗状況を簡単に把握できるようにしたい」というところでした。 

⬇︎収穫・選果作業についてはこちらの記事で触れています

これは当農場の中でも丸々1ヶ間ほどかかる比重の大きな仕事になるため、できる限り効率化してストレスを減らしたい作業です。

色々ありますが、まずは次のようなことをスマホを使ってできると楽だなーと常々考えていました。

(1)収穫コンテナの状態をリアルタイムで把握したい
畑で収穫した馬鈴薯は、まず内容量約1.3トンほどのスチールコンテナに溜めておきます。
その後そのコンテナを施設内で数日間乾燥させたのち、選果場にて箱詰め作業を行います。選果が終わって空になったコンテナは再度、収穫時に利用します。

コンテナごとに作業した日を紐付けることで「◯月×日に収穫したコンテナ数」 「空のコンテナ数」などが把握でき、その手段としてQRを活用できそうだなと考えました。

(2)選果の数量報告をスマホで行いたい
選果作業を行った日には、1日の終わりに箱詰めした数量をカウントして報告します。
これを今までアナログ(紙とペン)で行っていたので、スマホを使ってデジタルで記録することができればと考えていました。  

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もちろん電卓は使いますが、それでも間違えてしまう可能性があります。
できるだけ手計算はしたくないものです。

(3)規格の傾向を把握して段ボール発注量を決めたい
選果作業の進捗を見ながら、箱詰め用の段ボールを必要に応じて発注します。
段ボールは「2L」「L」「特M」「M」といった規格(サイズ)名があらかじめ印字されたものを購入するので、選果時の傾向を見ながら過不足なく発注する必要があります。

畑や作付年によってこのサイズの傾向はまちまちですが、これには先程の選果の記録をデジタル化しておくことで、どの規格のダンボールをどれだけ発注すれば良いのか計算することができそうだな、と考えました。
(この辺はまだアプリに落とし込めていないので、今後の課題です)

制作したモノ

そんなんで実際に試作してみたのが、このようなアプリになります。

●事前準備:コンテナにQRラベルを貼り付け
あらかじめ、手持ちの各コンテナに番号とQRを印字した防水ラベルを貼っておきます。

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雨風の影響が少なく、フォークリフト作業時に擦れたりしなさそうな場所に貼り付け。一応マグネットシートを使っていますが、粘着力が弱いので両面テープで固定しました。

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続いて実際の運用です。

●QRでコンテナの状態をカウントする
圃場で収穫を行って収穫物の入ったコンテナを運搬用トラックに載せる際に、スマホでQRをピッ、ピッとまとめて読み取ることで、それらのコンテナが「選果待」の状態で登録されます。

読み取り履歴はスマホでチェック。こちらが実際のアプリ画面です。

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さらにコンテナ選果が終わって空になったら再度同じQRを読み込むことで、コンテナの状態が「選果待」から「空」に変わる、という仕組みです。

裏側ではコンテナ番号、更新日と時間などがSpreadsheetに保存されています。

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現在のコンテナ状況を一覧で確認する
選果作業のスケジュールを組む際には、「選果待」状態のコンテナを確認できる一覧画面を使用します。
収穫日ごとにグループ化しているので、実際に倉庫にあるコンテナ番号と照らし合わせて、収穫日が早く風乾が済んでいるものから選果作業を行っていきます。

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集計画面も作ってみました。
ここでは現在のコンテナの状況をスマホ上で確認することができます。

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現場にいちいち数量を確認しに行かなくて良くなり、リアルタイムで反収(面積当たりの収量)の概算も出すことができるのが便利です。

選果の数量報告
選果作業が終わったら、その日の報告をスマホ上で行います。
これまで紙とペンで行なっていた部分です。現在保有している箱詰めされたケース数をカウントして記録しておきます。

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過去の報告内容は、このように一覧で確認することができます。

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集計画面では、箱詰めした合計ケース数などを見られます。

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サイズ別割合の見える化
ここまで作業時のQRの読み取りと選果報告を行っておくことで、集計画面でこれまでの馬鈴薯のサイズの傾向がわかります。
数字とグラフで割合(%)を綺麗に可視化することができて、なかなか良い感じです。

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今年は全体的にやや小玉傾向でした。
収入面を考えると、一番大きな2Lの割合がもう少し高くなるのが理想です。

この先の実装はまだできていませんが、この割合をもとに段ボール発注量を計算できるようにしたいと考えています。

制作した感想と気づいたこと

スマホでのUI/UXはノーコードアプリGlideの力を借りて、とても簡単に実装することができました。

ただ「どういう設計にすると現場作業が楽になるのかな?」という試行錯誤の時間が一番多かったです。試作したものを農作業で実際に使ってみると案外使いづらかったり、できることを増やそうとすると画面数が多く不便になってしまったり。

また「コンテナ管理をQRでする必要があるのか?」というそもそもの疑問も浮かんできました。笑
取り外し可能な番号札にして収穫順に番号札をつける方が作業がしやすいのかなー?などなど、イレギュラーな事態にも柔軟に対応できるように、どうするのがベストなのかもう少し考える余地がありそうです。

一方で、コンテナをQR管理することによって収穫場所と紐付けて、トレーサビリティに役立てることもできそうというのも、アイデアとしてはありますね。

この辺りの改善案は、また別記事で詳しく整理できればと思います。  

おわりに

そんなこんなで、今回は制作した自作アプリを紹介する記事でした。  

スキルを身に着けてスマホアプリをDIYすることで、開発も運用も無料で仕組みを作って試せるのは大きいなと感じました(もちろん通信費やラベル制作にかかる材料は別ですが)。

今後また別記事に分けて、裏側で使っている技術面のお話や、具体的な改善案について整理していこうと思います!



MEMO

使用した技術
・Glide(スマホアプリ作成)
・Spreadsheet(データベース)
・Google Apps Script(QR読み取り時の処理、データの整形)

使用した材料


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