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いくらにする? 農家に価格設定の自由、実は悩ましい

初収穫のズッキーニ。1本ずつ袋に詰めながら考える。

「価格はいくらにしようか。初物だからなあ」

直売所の販売価格は農家が決める。高く設定しすぎると売れ残る。低ければ薄利に。経験上、初値は、その後の価格設定にも影響する。なかなか、初出荷より高い値段はつけにくくなるから。悩ましい…。


情報収集は“社長”の仕事

農作物の販売先は多様化している。かつては、農協(JA)ルートか、卸売市場への直接出荷くらいしかなかった。それが、道の駅やJA直売所が増え、多様なサイトでネット販売も花盛り。市場の競りで値段が決まる「お任せ」状態だった昔と違い、梱包や価格決定も農家が担うとなれば、情報収集が重要になる。

「日焼けしたくない」

と、頑なに農業に関わろうとしなかった妻。その風向きが最近、少し変わってきた。諸般の事情から「あぐりげんき」の代表に就任し、いわゆる“社長”になった。”社長”自らがスーパーの野菜売り場で品質、量、価格動向を情報収集する。

「いま、野菜高いよ。ズッキーニはこのくらいの大きさで198円」

両方の人差し指で大きさを示しながら、仕入れてきた情報を伝えてくれる。

「安売り合戦」は回避したい!

最終的に価格を決めるのは、出荷当日の朝。開店前の店舗内をぐるりと回り、同じ商品の価格、量、品質をチェックする。「カルテル」ではないが、できるだけ価格を合わせるようにする。低価格で販売すると、利益が少ないだけでなく、生産者間で安売り合戦に陥ってしまうから。

情報収集してくれた妻には申し訳ないが、大先輩が出品していた「130円」に合わせた。産直市はスーパーに比べれば安いのだ。中間マージンがないから仕方ないか。

“メジャーリーガー”とは戦わない!

時折、大規模栽培農家が大量出荷することがある。ワゴンいっぱい、山のようにとはこのことだ。農協出荷している“メジャーリーガー”が、地域の独立リーグに乗り込んできたようなもの。農協に出荷できなかった規格外品を大量に安く。少し曲がった程度の大きな長ナスが3~4本入って80円。生産者にはうれしい「特売」だが、小規模生産者はもう、お手上げ。販売手数料、袋代、値札シール代を引いたらいくら残るか。

メジャーリーガーとは戦わない。大規模農家が作るナスやキュウリには手を出さないか、時期をずらして植える。ニッチな野菜で勝負することにした。

まるで「通信簿」 売上メール 

定時に売り上げ状況を知らせてくれるメールがスマホに届く。売り上げゼロの時は、このメールは来ない。スマホの電波状態が悪いのかと、何度もメールアプリを立ち上げ直しても、届いていない…こともある。

荷造りを終えたズッキーニとレッドオニオン

夏休み前、小学生が通信簿を開くようにドキドキしながらメールを開く。何がいくつ売れたのか一目で分かる。

「うーん、売れ行きがいまいち。高かったのか、品質の問題か、量が少なかったか、雨でお客さんが少なかったのか」などなど考え込んでしまう。

逆に午前10時ごろまでに完売した時は、うれしさの半面、「安すぎたかあ」との思いも。

今年のズッキーニの初荷は、2日間で完売。まずまずのスタートを切れた。ここから1か月あまり、ズッキーニの出荷は続く。数日、出荷していると、その年の価格水準が見えてくる。計算が立つ。心にも余裕が出てくる。生産者名を覚えてもらい、リピートしてくれるようになれば、なお、ありがたい。

ネット販売の拡大目指して

もう一つの販売ルート、ネット販売。「産直アウル」と「メルカリショップ」に出品している。ただし、売れる青果物は限られる。輸送費が上乗せされるため、

  • 重さの割に単価の低いもの

  • 葉物野菜など劣化しやすいもの

  • スーパーなどで安価に売られているもの

などは、適さないと考えている。春の「そら豆」はまあまあ順調だった。夏は「ハラペーニョ」をネット限定販売する。「スイートコーン」はどうするか、悩みどころ。将来的には、レモンや高級かんきつを視野に入れる。

ハラペーニョはネット限定販売

ネット販売では、値決めだけでなく、写真、説明文も重要。メルカリに関しては、数年前から、売る方でも買う方でもベテランの妻が率先して販売戦略を立ててくれる。写真はこういうのがいいとか、販売価格帯とか、見出しの書き方とか。

「社長~、頼りにしてます」

今年は直売所2カ所と、ネット販売2サイトが販売先。数年後、柑橘栽培が軌道に乗れば、JA出荷も。メジャーリーガーに上り詰める日を思い描いて、日々の出荷をコツコツと積み重ねる。

(あぐりげんき)

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