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新しい道#15 〜画家マティス めぐりあい編〜

9/14 (水)
7時57分、JR三ノ宮駅。
いつもならもう会社に着いて、pcを立ち上げている時間だ。
それなのに僕はいつもと違う時間に、いつもと反対方向に行くホームに立っていた。

この日は、いつも出向している大阪の四ツ橋ではなく、西明石に行くことになっていた。
Javaのソース改修の案件が入ってきたのだが、作業する環境構築をするのに西明石にいる偉い人に諸々教えてもらわないことがあるからだ。
いつもと違う場所に行くということで、9時始業にしてもらった。

西明石まで約20分の間はスコアを読んでいた。いつも色々持ち歩いているのだが、この日はオーケストラリベルタに向けてブラームスの交響曲3番とヒンデミットの「画家マティス」のスコアを持ってきた。
もう来週末には練習がはじまる。
今まではオーケストラフィエスタの練習だけだったが、これからはリベルタや各大学オケの練習が重なってくるのだ。
だから余裕のある今のうちにスコアを頭に叩き込んでおく必要があった。

まず目を通したのは「画家マティス」だ。こいつが今回の演奏会ツアーの中で一番ヤバい。曲を聴くとなんとなく雰囲気は分かるが、スコアを見ると訳がわからなくなる。
なんだこいつは…

謎の用語まみれで宇宙を探索しに行く哲学書のような、ピカソの絵画のような難解さとなんともいえないおどろおどろしいグロテスクさがあった。この手の曲はかなりの読解力がいる。

なぜ近現代の曲ってこんなに難しいの…
昔コルンゴルトのシンフォニエッタのコンマスをした時、ラヴェルのピアノ協奏曲を弾いた時…
近現代曲にあまり良い思い出がない。
どれもこれも3秒以上思い出そうとすると飛び降りたくなるくらいにトラウマだ。
唯一心の底から楽しめたのはレスピーギのローマの祭くらいか。

ではどうやってこの曲を乗り切るか。
演奏できるようになるか。
ヒンデミットの「画家マティス」を表現できるようになるのか。

やることは至ってシンプル。
曲を好きになることだ。
徹底的に聴き込んで、徹底的に練習をする。

僕は演奏会でやる曲はいつも撤退的に曲を聴き込むし、スコアを読む(しかもバイオリン以外のパートにも書き込みをする)。
聴く音源も必ず一つに絞らず、いろんな演奏を聴きまくる。
曲を知り、少しでも構造を捉えて、好きになり、執着する。
今回もやることは同じだ。

結局苦手なのは、この曲を理解できないからだ。理解できないというのは受け入れられないことと同じ、頭に入らないのだ。

残り約3ヶ月。
お互い腹を割って会話しようじゃないかヒンデミットくん。

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