歴代朝ドラレビュー(6) 「らんまん」「マッサン」「ブギウギ」 2023年11月【1】
(5)はこちら。
「らんまん」(2023年度前期)
朝ドラは20作品ぐらい観てきたが、私にとってはこれが最高傑作かもしれない。このような静かな作品が好きなのだ。
漫画的にデフォルメされた憎まれ役がいない。強いて挙げれば動物学教授の美作ぐらいか。ほんの少しの出演で、一言嫌味を言うぐらいだった。
軍国主義を強めていく日本が描かれている。朝ドラではよく、特高や憲兵の暴力、国防婦人のくだらない説教が挿入されるが、この作品ではそういうことがなかった。台湾での植物採集や国の神社合祀に反対する話で、間接的に描いていた。知的な脚本という印象を受ける。
無駄に泣いたり叫んだりしない。騒ぐのが好きな制作陣だったら、東大を出禁になるあたりで万太郎を泣き叫ばせていただろう。
第一子・園子をわずか2歳で失った時も、泣きわめいたりしなかった。それによって、かえって深い悲しみが伝わってきた。生前に彼女が描いた絵を折に触れて映すことで、亡き子への変わらぬ愛を表現していた。こうした繊細な演出から、スタッフの作品に対する愛も感じた。
くだらない話がなかった。朝ドラは長丁場なので、しばしばそうした話が挿入される。そういうのは出来の悪いものが多い。
下手な脚本家だったら、浮気エピソードでも入れていただろう。結果は周囲の勘違いで「めでたしめでたし」といった話だ。あるいは子供たちの初恋エピソードか何かで1週間使うといったこともやりかねない。
モデルの牧野富太郎にエピソードが豊富だったからだろうか。しかし朝ドラでは、モデルの重要エピソードを削ってしょうもない話を挿入することがあるのだ。
「マッサン」への苦言
たとえば「マッサン」。ウイスキーづくりの話を削って、エリーのドタバタ日本奮闘記をやってしまう。娘エマの反抗期エピソード、恋愛エピソードに何週間も使ってしまう。
百歩譲ってそれらの話が面白かったとしても、なぜ「日本のウイスキーの父」を描く作品でやるのか。大事な話を削って、薄っぺらいサイドストーリーを挿入するのはなぜなのか。
私は「マッサン」が好きなのだ。だからこそ腹を立てている。あのようなテーマのぼけた群像劇ではなく、マッサンのウイスキーづくりに焦点を当てた作品が観たかったのだ。
「らんまん」が「マッサン」のようにならなくて良かった。
ブギウギ(2023年度後期)
現在放送中。執筆時点(10月31日時点)で22話まで放送された。以下はそこまで観た感想。
演劇がテーマだから仕方がない気もするが、騒がしい。私は静かなのが好きで、騒がしいのは苦手なのだ。
大和と橘が退団する時のスズ子は、あんなに騒がしくなければいけなかったのだろうか。まあそうかもしれない。彼女はそういう性格で、これはそういう作品だから。単純に私の好みではないだけで。
「らんまん」がすっかり私にフィットしていて、まだ思いが離れてくれない。もう放送終了から1ヶ月以上も経ったというのに。今風に言えば「『らんまん』ロス」だ。
幸いなことに、視聴中の「まんぷく」の萬平が、万太郎とやや似た性格をしている。私は、ああいう変わり者の研究者肌が好きなのだ。多少ロスが和らぐ。
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著者は1985年生まれの男性。 不登校、社会不適応、人付き合いが苦手。 内向型人間。HSP。エニアグラムタイプ4。 宗教・哲学(生き方)…
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