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精神科閉鎖病棟に入院した15歳少女のノンフィクション物語

瞼を閉じる、開く、閉じる、開く。

やはり現実は変わらないらしい。
「なんで」「どうして」思っても仕方がない言葉ばかりが浮かんでは何処かへ消えていく。
私は今、保護室という名の独房にいる。なんにもない正方形の空間。床に敷かれた簡素な布団。むき出しのトイレ。天井の角には監視カメラ。分厚い鉄の二重扉。
今日が何月何日なのか、朝なのか昼間なのかはたまた夜中なのか、分からない。
私は叫ぶ。「看護師さん、開けて、ここから出して。お願いします」何度も何度も叫ぶ。声を上げながら分厚い鉄の扉を拳で叩く。誰も来ない。私の声は届かない。この地獄のような空間にはただただ扉を叩く自分の拳と鉄がぶつかり合う音と誰にも届かない虚しい叫び声が反響しているだけだ。

私はなんでこんなところに閉じ込められているのだろうか?
自殺に失敗し病院に運ばれた。精神科の閉鎖病棟に入院した。ここまでははっきりしている。問題なのはこの続き。上手く思い出せない。頭の中に霧がかかってるようにぼんやりと浮かぶのは病室で半狂乱になった私が自分の手首をスマホの画面に貼ってあった強化ガラスフィルムを剥がし割り、そのガラスの破片で切り刻んだ。溢れ出し床に滴る赤い液体。病室に来た助手さんが悲鳴をあげ、看護師さんを呼びに廊下を走って行く足音を背中で聞いていた。全てがどうでもよかった。手首から滴る血をそのままに私は自分の首に両手を絡め精一杯に力をこめる。だんだん気が遠のく。「やっと死ねる」そう思っていた。

走ってきた看護師さん2名、助手さん1名、医師1名に手足を抑えられた。私は必死に抵抗する。抑え付けられた手足を懸命に動かそうとしながら声を上げる「離して、死なせて」誰も私の声なんか聞いていない。

暴れる私の左腕に看護師さんが無理やり注射を打った。そこで記憶は途切れている。

気がついたらこの保護室の布団で横になっていた。切り刻んだ手首は縫われていた。

「ああ、まただ。また死ねなかった」

ここからまた地獄の始まりだ。

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