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「ピテカントロプス」 第2話

第2話 計画者という男

振り返ると、そこにはアルファ警団の外套を着た男が立っていた。男の雰囲気は野太い声から想像できるように、まさに古き良き親父のようであり、豪快に生えた無精髭に少しばかり懐かしさを感じた。ただここは、エリア5の地下である。もともとここは地下鉄という名の列車が走っていた場所であるが、今は奴のような無法者の巣となっている。最近はアンダーハウスと呼ばれる、地下高級住宅がどんどん建てられているので、エリア5以外の地下は普通の人間も住めるようになった。

しかし、何しろエリア5の地下である。他のエリアの地下の治安はどんどん良くなっているが、それと反比例するようにエリア5の地下はどんどん汚れていく。追い出された無法者がエリア5に流入しているからだろう。そもそも、エリア5にアルファ警団がいるのがおかしいはず。アルファ警団は亜細亜警団の中でも、トップ1%の人間しかなる事ができないと言われる警団の最高位集団だ。実際およそ1万人がアルファ警団として活躍しているそうだが、エリア5には1人も常駐していない。

「第48期エリア5治安維持警団、pos番号39955184です。お疲れ様です。アルファ警団員の方がエリア5にいらっしゃるとは、とても驚きました。さっき仰られたのは、どうゆう事でしょうか?」

男はゆっくりとした動作で一歩踏み出し、自分はアームの開発に関わっており、あの白い蒸気は初期不良の一つであると言った。そして今日はエリア5の視察に訪れただけで、特に用はなく、アーム特有の放射音がしたので、見に来たらしい。その後男は名前を名乗るわけでもなく、こう言い残した。

「私は計画者である。もしまたお会いする機会があれば、アームの事をもっといろいろ聞きたいものだ。実践は理論をいとも簡単に超えてしまう。ではまた。」

第3話 エリア5


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