その光が照らすもの 10.夜覇王 3

晴人たちはアジトである空き家にいた。作戦は成功した。誰も捕まることなく取り返すことができた。しかしこの場は何故か重苦しい。誰も笑みを浮かべず、深刻そうな顔をしている。
「まじで撃ってきたのか?」
「ああ、当たってないけどね」
その場にいなかった賢也の問いかけに晴人はいつものような軽さで答える。完全にスイッチが切れている。

一時間前。
晴人を狙った銃弾は晴人の足下近くを撃ち、晴人に当たることはなかった。撃ってきたのは五メートル離れたところに手も足も震えていた女警察官だった。目には涙が浮かび、拳銃は今にも落ちそうになっていた。
「お前何をしている。銃の携帯は許可していない」
晴人のすぐ隣に床を這いつくばっている警察官が唯一動く首から上で拳銃を撃った者を見て怒鳴る。
その声で女警察官は拳銃を離し、足が崩れた。
突如現れた女警察官も動けないと判断し、その場を後にした。
晴人は前を行っていた咲里たちに追いついたのは警察署の入口。その頃には警察官は誰もついてきておらず、全員がいるか、助けた三人もいるかを確認してアジトに戻った。

そして今に至る。
「そういえば帰ってくるときにチラッと見たんだけどカメラとか記者らしい人たちがいた気がするんだけど」
葵が業務連絡の気持ちで言う。
「確かに。野次馬だけって感じはしなかったね」
翔もそれに賛同する。
「そ、でもそんなに気にすることではないでしょ」
「今頃気にしたって遅過ぎるだろ」
咲里の言葉に貴史が続く。
貴史の言葉で初めて笑いが起こった。誰もがそりゃそうだ、と言い顔を見合って笑っている。これこそが《夜覇王》のあるべき姿だ。
空気が和らいだところで晴人が立ち上がった。
「内容はどうであれ、結果は俺たちの勝ちだ。何人かは怪我をしてしまったが、それでも目的の三人を助け出すことができたし、誰も失わずに済んだ。皆に相談がある。俺は東京の頂点に立ちたい。そのために俺はこのチームを作った。お前たちはどうしたい?」
「そんなの聞くまでもねぇよ」
「やるからには頂点に。それが私たちのモットーでしょ」
「今更誰がノーって答えるもんかよ」
「あんたが決めたことに私らはついて行くだけさ。昔だって、今だって、これからだって」
チームの創成期のメンバーである翔、奈緒、賢也、咲里が言う。それに全員が頷く。
晴人は苦笑いをして、高らかに宣言した。
「これから俺たち《夜覇王》は本格的に東京制覇を目指す。これまではそこら辺にいるヤンキーどもが主な敵だった。でもこれからは違う。自分たちと同じかそれ以上に強い奴が敵となり、戦うことになる。今までより大きな被害、メンバーが何人も病院行きになるかもしれない。それでも俺は頂点に立ちたいんだ。一番になりたいから。それもある。でもそれだけではない。俺は東京から犯罪がなくなってほしい。そのための第一歩として社会の端くれ者をまとめる必要がある。皆、これは俺のわがままでしかない。それでもついてきてくれるか?」
一瞬の間が開く。
「「「それが我が王の願いならば」」」
全員片膝を床につけ、頭を下げて言う。その声が重なる。これが夜覇王の基本理念。晴人は王であること。そしてそれを聞くのが部下であること。
構成人数三十五人、その他傘下の人数を合わせれば百人を超す《夜覇王》の快進撃が始まる。

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