その光が照らすもの 14.東京制覇 2

学校から向かったのは車などの修理店。と言っても営業はしていない。賢也の親戚の店で、使わなくなったということで使わせてもらっている。主にバイクの置き場に。
車五台が置けるスペースなのでバイクは人数分三十三台が入る。今は幾つか使われているみたいで数箇所空いている。
自分のバイクのバイクカバーを外し、表に出す。
そのとき着信が来た。貴史からだった。
「双葉ちゃんの居場所がわかったぞ。うちのもんが誘拐現場に居たらしく、後を付けたそうだ。場所は今送るから待っとけ」
貴史が一方的に電話を切り、メールで住所が送られてくる。廃工場だということも。
場所がわかるや否やバイクに跨がる。
「ちょっと待って。一人で行く気?」
「ああ、テメェらは集まり次第来い」
それだけを言い残し、エンジン音をけたたましく立てて走り出した。

その頃、双葉は目の前で偉そうにしている男を睨んでいた。
「そんな怖い顔すんなよ。俺は助けてあげたんだぞ」
「誰もそんなことは頼んでいません。それに助けが必要なら頼める人がいますから」
「可愛くないね。で、その人は小室晴人だというのか」
「そうです」
ワハハ、と周りの人が笑う。
「何が可笑しいのですか?」
「それはあんな臆病者には何もできないからさ。アイツは俺の姿を見るなり逃げて行ったからな」
ワハハ、と先程と同じように嘲笑う。そんなことを言われると腹が立つ。晴人の何を知ってそんなことを言うのだろう。
「あの人はそんな人ではありません」
「いいや、アイツはそういう人だ。君はアイツの本当の顔を知らない。アイツはいつだって戦いを後ろから眺めているだけ。戦うのは部下だけ。アイツが戦うところを見たことはない」
「私は晴人君は人を殺したことがあると聞きました」
「あんなの嘘に決ってんだろ。アイツにそんな度胸はない。それに人殺してんなら刑務所に入っている」
「キングはそんな人ではない」
入り口で誰かが怒鳴った。首を回して見るとそこには息を切らした人が立っていた。
「キングって、こいつ小室のところの奴だ」
周りの人が臨戦態勢を取る。

晴人の部下と思わしき人は無惨にも倒れている。一対十数人ではそうなるだろう。なぜこの人は出てきたのかわからない。
「こいつ金髪じゃありませんね」
周りの人の一人が言う。
「ち、じゃあ何でこいつはキングと言った?」
ボスがソファを蹴った。怒りで他の物にも当たる。
「この場所がバレたかもしれません。どうしますか?」
「見張りをしろ。ここから離れはしない」
「その必要はない。ったく、一人で先行しやがって」
工場に聞き間違えるはずはない声が響く。

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