その光が照らすもの 11.幕間 1

双葉は今日、仕事がないので朝から学校に行っている。朝から双葉がいると周りの人は結構びっくりする。特に先輩が。朝から行くといつも先輩たちに話しかけられ、教室に着くのが時間ギリギリになるのが問題の種。
そして今日もまた教室にギリギリで着いたため、友達の話が途中で輪に入れない。しかし今日はちょうど話が変わるところだった。
「今日のニュース見た?警察署内で銃を発砲したって話」
「見た見た。怖いよね」
「なんだっけ、あのグループ?」
「夜覇王」
楽しく話していたはずなのに円が強く細く冷たく言った。
「夜覇王。この前会ったよね、小室に。アイツ、そのグループのメンバーだよ。それも聞く限りじゃリーダーよ」
「それって一昨日ゲーセンで会った人?」
「そうよ。私、アイツと中学同じだったから」
「どのくらい凄いのです?」
好奇心を抑えられない年頃の双葉。円は嫌々そうに答えた。
「夜覇王っていうグループはうちらの中学の五人で作ったの。その内の一人が小学校のときからの親友でね。その人が言ってたけど東京三大不良グループの一つだと」
「晴人君のグループが?」
「そうよ。何度も親友には言ってるんだけどね、辞めろって」
出会ったときはヤンキーだと思ったし、一緒にいる人は怖かったけどそこまで凄い人とは思わなかった。
「だから関わらない方が良いって言ったんだね」
「そ、アイツある意味二重人格だから。普段は猫かぶって阿呆やってるけど、本当は誰よりも冷酷で凶悪な人間だよ」
そう言われればそうかもしれない。晴人に助けられたとき明らかに違った。職業柄悪そうと思う人は何度も会ったけど、晴人に会ってからその人たちのイメージが変わった。その人たちは悪ぶっているだけだと思えた。本当の怖い人は内から悪いオーラが出る。
そう考えると怖い人と仲良くなるのも面白いと思える。それでも限度というものがあるが。
「この話聞いて心変わりした?」
円は疑問形にはしているが、命令するような口調だった。
「変わりはしない。晴人君は喧嘩が強くて怖いかもしれないけど悪い人ではないと思う。円ちゃんはどうしてそんなに晴人君を毛嫌いするの?」
「アイツは悪魔、いや魔王よ。思い通りにならないことは暴力に訴える奴よ。そんなのと双葉ちゃんが知り合っていることに驚いたし、ふざけるなとも思った。アンタが手出して良い人ではない、と心の底で叫んだ。今はいいかもしれないけど、いつかアイツは貴方を駄目にする。これだけは絶対よ」
「そう言えるだけの根拠があるの?過去に何があったの?」
信頼している人を悪く言われるのは我慢ならない。いつもより強く言ってしまう。
円が次に言ったことは耳を疑った。幾ら悪魔や魔王と言われても所詮同い年。こんなことまではしていないだろと思っていた。
「アイツは人を殺した」

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