その光が照らすもの 3.高校生アイドル 神谷双葉 1

晴人に出会った次の日。撮影の仕事があった。
メイク担当の山本さんにメイクしてもらいながら昨日あった出来事を話そうとしていた。
「もし私が不良と一緒にいたら会社の人ってどういうふうに思うでしょうか?」
「いい顔はしないでしょうね。急にどうしたの?」
「あの、昨日休みだったので近くのショッピングモールに行ったのですが、そこで不良ぽい人に声をかけられたので」
「それは双葉ちゃんだとわかってしてたの?」
「わかってなかったんですよ」
勢いで言ってしまった。明言するつもりはなかったのに。
山本さんは首をかしげて、あ、とびっくりしたような声をあげた。
「なになに、ナンパされて一緒にいたわけ、その子と」
「違うんです。そうではなくて、ほらテレビ見てください」
テレビではニュースがやっていて、昨日巻き込まれた事件のことを報道していた。
「ほら、犯人に最初に捕まった女性は私のことです」
これまた言いたくないことを喋ってしまった。
「え、それ会社に知られたらヤバくない?」
「はい。そうなので誰にも言わないで下さいね。二人だけの秘密です」
何とかしてでも口止めしなくてはならないので、共通の秘密という女性によく効く方法をとった。
「それでそれを助けてくれた男性がさっき話したナンパしてきた人です。そういえば歳聞いてなかった。私と同じくらいだったと思うけど」
「なになに、ときめいちゃたの、その子に」
「そんなんじゃないですよ。ただお礼を言って少しお話してただけです」
そっか、とつまらなそうな声音で返事をされた。
その後すぐにメイクは終わり、撮影が始まった。

午前で仕事は終わり、午後は学校に行く。
私立苫舘高校。芸能人が多く所属する高校。一年生のときは他の高校に通っていたが、二年生になってこの学校に通うことになった。元々通っていたところは芸能人なんて1人もいないようなところだったので不憫だろうと転校することになったのだ。
この学校には二ヶ月通っているが、三十回も来ていない。それだけ忙しいのだ。嬉しいことではあるが。
教室に入るとクラスメイトの皆と挨拶をする。少しでも皆と仲良くなりたいからだ。
二時間授業を受けると放課後になり、特に仲の良い子たちの輪に入る。
「ゲームセンター行かない?」
「いいね。双葉ちゃんも行く?」
「いいんですか?ぜひ行きたいです」
「でもバレたりしない?」
「変装の準備はあります」
鞄からキャップとマスクとサングラスを取り出す。
「完璧でしょう」
装着してポーズを決める。周りからは失笑される。
「違う意味で目立ちそう」
でもこれでいつも電車乗ってるんだけどな、と心で呟く。
問題ないだろうといつも行く、昨日も行ったショッピングモールに向かう。

ショッピングモールにあるゲームセンターはここら辺で一番機体が多い。UFOキャッチャーだけでも百は超える。
ゲームセンターでよくやくのはプリクラか音ゲー。今日は音ゲーをすることになった。太鼓型の機体や踊る系の機体で遊ぶ。音楽の仕事をしているから慣れてなくてもそこそこの点数を取れる。特にダンスは仲間内では負けない。
友達の一人がシューティングゲームのところで歓声をあげていた。何が凄いかというと迫り来るロボットを撃ち倒すシューティングゲーム。それの一番ハイレベルをやっていた。
その腕には確かに驚くが双葉が一番驚いたことは、見覚えのある後ろ姿なのに違うような感じがする。昨日はふんわりした雰囲気だったのに、今は獲物を狩るような禍々しい雰囲気になっている。

#小説 #恋愛 #不良 #アイドル

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