その光が照らすもの 2.プロローグ2

晴人が不審者を倒すとすぐに物騒で使い勝手が悪そうな道具を持って現れた。男性を引き渡し、その場は落ち着き始めた。
晴人たちは席に戻り、溶けかかったアイスを食べる。飲むに近いが。
彼女が近くに来てお礼を言いに来た。
「助けて頂きありがとうございました」
マスクを外すと見覚えのある顔が現れた。
「双葉ちゃん」
晴人は彼女が誰だか分かると椅子から落ちるように正座をする。
「あの時は失礼しました」
床に頭を付けての土下座。一連の出来事をしらない二人はポカンとしている。
「あ、頭を上げてください。さっき助けてもらったのでチャラにしますから」
晴人は立ち上がり、椅子に座り、双葉に隣の椅子を勧める。
「僕の名前は晴人。こっちの大きいのが貴史。こっちの金髪が亮。見ての通りギャングをやってる」
貴史と亮はとりあえず頭を下げる。
「神谷双葉です。知ってると思うけどアイドルやってます」
双葉は今一番の人気を誇るアイドル。そんな人が今不良と一緒にいる。会社に知られたら一大事だろう。
「どうしてこんなとこにいるの?」
晴人の質問は当然だろう。なにせアイドルだ。いつも来ているところにアイドルがいるのは疑問である。
「家から一番近いからかな。ここなら欲しいものは何でも揃ってるし」
「じゃあ、今日は買い物?」
「うん。日焼け止めとか制汗剤を買いに来たの」
「梅雨が終われば夏本番だからね。今日は仕事無かったんだ」
「そう。休日に仕事がないのは久しぶりだから買っておきたいものは買わないと」
人気なのは嬉しいだろうけど休暇がないとなると大変だな、と双葉の心境を勝手に想像する。
「この後何か予定ある?」
「ない」
予定なんてあるはずがない。ここに暇つぶしに来ているのだから。
「じゃあ、ちょっとお願いがあるんだけど……」
そう言われ双葉の後に続く。
ショッピングモールの一階に敷地の中心の目印にグランドピアノが置かれている。
入らないように囲いがしてあるが、双葉は跨いで中に入り、蓋を開け、椅子に座る。
「人が入らないようにしてね」
双葉はそういうと静かにピアノを弾きだした。

悲しいとき 君が隣にいるだけで嬉しくて
辛いとき 君が隣にいるだけで楽しくて
そんな気持ちにしてくれる君に伝えたいこと
大好きだよ

足を止める人を三人は睨んで追い払い、警備の役目を果たしていた。
双葉は一分程度で演奏を終えた。仕事外で人前で歌ったことを会社に知られたら怒られるだろう。だから大事になる前に止めた。

その後は双葉が帰ってしまって、三人はすることがなくなり、解散となった。

#小説 #恋愛 #不良 #アイドル

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