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牛板九由
2016年5月25日 17:50
「おい、ボロボロじゃねぇか」「人のこと言えるか?」「うっせぇ。さっさと本気出せし」「そのままそっくり返すよ」翔と賢也は軽口をたたきながら笑っている。その言葉を聞いて顔を引き攣らせている羽田と古谷。「本気出せって、本気出していないのか?」「ああ」「もちろん」翔と賢也はさも当然というように言った。「うちのチームは共闘するとき先に本気を出した奴が負けっていう仕来りがあってよ」「だか
2016年5月18日 18:49
次々襲いかかってくる古書の主の下っ端を逆にボコボコにしたのは翔と賢也の二人だけだった。二人対二十数人の戦いはいとも簡単に終わった。翔と賢也の完全勝利だった。完膚なきまでの格の違い。体の使い方も力の出し方も経験の豊富さも何もかもが凌駕していた。「骨がないな、骨が。脊椎動物とは思えない雑魚さだよ」翔が心底残念そうに肩を落とす。しかしその頬は緩んでいる。その表情は誰が見ても嘲笑しているとしか見えない
2016年5月11日 12:32
ワゴン車が今見ている建物の近くで止まる。そこから出てきたのは三人のマスクを被った人と神谷双葉だった。誘拐されたというのにその女は抵抗しているようには見えず、自然な足取りで入って行った。その後、バイクが一台止まった。その人は身をかがめ、抜き足差し足のような動きで建物に入って行く。その次に来たのは荒々しくバイクを乗り回す金髪男だった。ドリフトを華麗に決め、先ほどとは対照に堂々と入って行く。「あの
2016年5月4日 12:10
逆光で顔は見えないがあの髪の色、あの立ち姿から誰だかは一目瞭然である。「キン、グ」「おいおいおい、じっとしておけ。ここからは俺が引き受ける。で、双葉ちゃんを誘拐したのはあんたらで間違えないな」「そうだとも」ボスと呼ばれる人が答える。「なら、準備はできてるよな」今までに聞いたことないほどに冷たい声音だった。ボスと呼ばれる人はひっ、と悲鳴のような声をあげた。十m以上離れているのに晴人の殺気