見出し画像

九州イチのデザインができるまで -石垣琥珀糖、開発秘話-

どうもこんにちは、栗山喬@age_cox です。フォトグラファーの傍ら、地域ブランディングの会社をやってます。

フォトグラファーとして九州を中心にいろいろな地域を巡るなかで、その地域ならではの歴史や文化に触れる機会が多く、ときには会社のほうでお土産の商品開発をしたりもしてるんですが、このたび携わったプロジェクトでとてもめでたい事がありました。

企画から関わらせていただいたお菓子・石垣琥珀糖のデザインが、この度、九州の権威あるデザインアワードである九州ADCアワード2021においてグランプリを受賞しました!九州で1位うれしい!

画像1

ひとえにアイディアを形にしてくださったデザイナーの岡崎友則さんのデザイン力の素晴らしさに尽きるんですが、せっかくなので石垣琥珀糖の開発秘話というか、企画から形になるまでのストーリーを書いておこうかなと。

1. 中津城と石垣の歴史

大分県中津市に中津城というお城があるんですが、戦国時代の有名な武将・黒田官兵衛が築城し、細川忠興が完成させたと言われています。このお城の石垣は現存する近代城郭において「九州最古の石垣」で、とても貴重な構造物なんですよね。

画像2

画像3

さらに、その石垣の一部にはこのような「石垣の境目」がありまして、右が黒田官兵衛・左が細川忠興の積み方になっています。このような時代の異なる両家の石垣の境目を実際に見ることができるのが中津城の面白さの一つなんですね。

画像4

(引用:岡崎デザインさんの九州ADCアワード2021プレゼンスライドより)

2. お菓子のデザイン

ということで、このような歴史的なエピソードと実際に目に見えるスポットからインスピレーション得て、お土産物開発のプロジェクトはスタートしました。

中津市に資本を置く和菓子屋さん「四季彩和菓子かきはち」さんと、デザインのプロ「岡崎デザイン」さんとご縁があり、食べる宝石と言われている琥珀糖で石垣を表現しようという決まったんですが、試作品作りの段階から試行錯誤の連続でした。

まず琥珀糖の製造の観点から、一粒が大きすぎても食感が落ちてしまう点と、箱詰めするにあたって20粒ほどが限界の個数とのことで、だいたい手のひらに収まるほどのサイズ感が決まりました。

そして実際に「石垣の境目」を表現した線を描き、それをオリジナルの金型におこして試作品をつくるんですが、これが難しかったですね。

tegaki_アートボード 1

金型づくりでは石の丸みの表現が難しいので、どのような線ならば石垣を表現できるのか岡崎デザインさんに何度も金型の線を描いていただき、それを中津市の歴史のプロであり中津城の石垣の積み方を熟知されている行政職員さんに確認いただき、和菓子屋のかきはちさんが実際に琥珀糖をつくってみる、という工程です。

地道な作業の繰り返しでやっと「形」ができて、そこから色の検討へ。和菓子屋さんのかきはちさんには、もともと10色展開で違う味の商品が展開されていたので、そちらをベースに検討しました。

画像7

color_アートボード 1

いろんなカラーパターンを作ったんですが、やはり5色以上の色を散らしたほうが石垣の境目を視認しやすく、いろいろな味を楽しんでいただける商品になるだろうということで現在の組み合わせに落ち着きました。

既存商品よりもパステル調にすることで美しくなっているんですが、着色材を1滴単位で変えて複数のサンプルをつくって何度も確認した成果ですね。全体的に白色が6割ぐらいを占めるほうが上品だよ、という和菓子職人さんのアドバイスも効きました。

実際の製造においては、それぞれの色で抜いた琥珀糖のパーツを一粒ずつ組み合わせていくんですが、その都度ランダムに選んでいては美しさが保てないしロスも出てしまうので、無駄が出ないようにカラー配置の指示シートをつくって、それを元に和菓子職人さんが一粒ずつピンセットで箱詰めしています。

画像8

(引用:岡崎デザインさんの九州ADCアワード2021プレゼンスライドより)

そう石垣琥珀糖は、お菓子づくりのプロである和菓子屋さん、中津市の歴史を熟知した歴史の専門家、プロのデザイナーさん、3分野のプロフェッショナルがコラボした結果できあがったお菓子なんです。

3. 箱のデザイン

箱のパッケージデザインもこだわりました。石垣の境目を表現するためにこだわり抜いた形、美しさを追求した色、それらが外からも見えるように前面はシンプルに透明なポリ塩化ビニルのカバーだけにして、製造等に関する必要な情報は背面や底面の貼り箱部分に収めました。

手のひらサイズの小さな台形の貼り箱をオリジナルで制作して、かつ食品が直接接するという技術的なハードルもクリアしてご提案いただいたのは、素晴らしい紙のパッケージを沢山手掛けられている「岩㟢紙器」さんです。

hako_アートボード 1

コストを抑えるためになるべく貼り箱部分は薄くしながら、商品を縦に置いた際の安定感も失わないように、琥珀糖の下に上げ底の紙パーツを入れて全体的な厚みを持たせたりしています。

そして、岡崎デザインさんがシンプルかつ上品にパッケージ全体をデザインしてくださいました。本当に最後の最後まで、何パターンもの検討を繰り返してくださったおかげで、関係者全員が納得する素晴らしいパッケージに仕上がりました。

hakoura_アートボード 1

画像10

4. お土産物の価値

地域を訪れて出会う、その土地ならではのお土産物は単純なプロダクトとして以上の価値があると思っています。そのデザインにおいては、ひとつのお土産物でいかに多くの地域の歴史や文化などの事柄が語れるかが一つのポイントだと思っていて、その点において石垣琥珀糖は中津市の新しいお土産物になれた気がしています。

黒田官兵衛や細川忠興の時代に石積み職人さん達が積み上げた方法と同じやり方で、今日も和菓子職人さんが一粒一粒ピンセットで琥珀糖を積んでいます。石垣琥珀糖を手にとった方々が、中津の歴史に想いを馳せながら食べてくださると、関係者一同とても嬉しいです。

画像13

【石垣琥珀糖】
  ▶︎製造販売:四季彩和菓子かきはち
  ▶︎デザイン:株式会社岡崎デザイン
  ▶︎企画プロデュース:株式会社しらすやまと

石垣琥珀糖は中津城の横、九州最古の石垣を眺められる絶好のローケーションにある中津市歴史博物館のミュージアムショップで購入可能です。中津市を訪れた際には、ぜひお手にとっていただけると嬉しいです!

画像12

画像14

最後に蛇足ですが、今回の商品開発におけるデザイン料やプロデュース料、契約関係について少し解説が続きます。商品のデザインには直接関係の無い話ですので、ご興味ある方だけお読みいただければと。

ここから先は

826字

¥ 300

この記事が参加している募集

ご当地グルメ

マガジン購読だけで十分です!いつもありがとうございます。