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福祉と援助の備忘録(12) 『ストレスチェックがもっと機能すれば・・・という話』

病気?

精神科の疾患というものは「とんでもなく面倒な病気」と思われつつも、「病気ではない」と軽く扱われがちにもなるという矛盾した扱いを同時に受ける。「病気ではない」というのは、経済的な理由から「病人扱いなど許さん」と言われることもあれば、主に身内から「精神科の病気などということはあってはならない(だから違う!)」という否認の場合もある。


うつ病が病気ならば、うつ病患者は困っている弱者か?「当然でしょ」と答えられる人はまだ少ない。うつ病と確定診断されても上司に「本当に病気あなのか?」と疑われることさえある。交通事故にでも遭って車椅子生活を強いられた場合のような気遣いは受けない。


病気の認定をするのは医師であり、その医師の書く診断書が「病気であること」のお墨付きである。ドクターストップが指示されれば、患者は仕事を休む権利が与えられる。めでたしめでたし。・・・とはあまりならない。「医療機関と仕事の現場の間の深い溝」に阻まれる。

以前、職場が医者から貰いたいのは「休職者が働けるかどうかの見立て」であるという話をした。だがそもそもを言えば職場では職員が休むことを歓迎なんかしていないのだ。だが医師は社員を休ませる権力を持っている。『うつ病につき休養を要す』は迷惑な御宣託だ。


職員に働いてほしい職場としては、「こいつはズル休みをしたいだけなのでは?」とつい疑ってしまう。診断書を持たせる医者は、患者と結託した悪者かもしれない。


だが実際にはどうだろう?ズル休みをしたいだけの人がいないとは言わないが、それは全体の一部でしかないだろう。患者と結託して得する医者などもっといない。稀なズルをしている人たちのせいで、本当に苦しんでいる人がもっと苦しむことになるのは大きな不幸である。疑いをかけることさえも、当人たちにとってはひどい攻撃なのではないだろうか?

この構造は、生活保護でも見られる


産業メンタルヘルスとは?

そもそも企業は、休職する職員やら医師やらを敵視している場合だろうか?

職場には「労働者が健やかに働けるようにする」監督義務がある。これが建前だとしても、職員が働けるようになり、生産性が上がることは歓迎のはずだ。ストレスチェック制度も、うつ病による求職者の数がうなぎ登りとなっていることへの危機感から作られた制度であった。産業メンタルヘルスは、企業と従業員の両方の利益を目指しているはずである。

ところがこのストレスチェック制度、予想されたことではあったが、うまく機能しているという手応えがない。ストレスチェック制度にひっかかった人が産業医の面談を希望する割合はごく一部である。


また、ストレスチェックは精神病を診断するためのツールではない。精神病になる以前の人を救うものである。実を言うと精神科医療というものは、病気ではない人々の扱いついては、あまり関心を持ってこなかったため得意ではない。「ストレスが溜まれば専門家に見せればいい!」は実は安易な発想ではないかと思っている。


もう少し精神科医療が企業のニーズに応え、職員のメンタルヘルスの底上げをしっかりし、生産性を上げるという手応えをもたらす、またその成果をうまくプレゼンしない限り、企業対精神科の対立構造の解消はまだまだ難しそうだ。


前回はこちら。

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