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【コント(4)】 『アンジャッシュのコント 対数の底 渡部がe 児島が10』


渡部「俺さあ、このアルカリイオン整水器を買っちゃったんだけれどさあ、すごくいいんだよ。今からこの水でコーヒー淹れてくるから。待っててくれ」
児島「ああ、どうも・・ふーん。これがアルカリイオン整水器ねえ。今の水はどれくらいのアルカリなんだ?あ、やべえ。勝手に操作したら表示が変わった。水素イオン濃度が示されるモードになっちゃったよ。えーっと。0.000000011か。これじゃあわかんないなあ。調べよう。ああ、これからpHってのが求まるんだ?えーと、水素イオン濃度の-logを計算すればいいのか。ちょっとメモしておこう。0.000000011と」
渡部「コーヒー入ったよ」
児島「ああ、渡部。戻ってきたか。どうも。ちょっとこれさ、この数字の-logってのを計算してくれ」
渡部「-logでいいんだな。(メモ書きを見てスマホを操作する。0.000000011の自然対数を取ると-18.325371と出る)約18.325371だな」
児島「18以上か・・・ぶっ!アルカリ乾電池の電解液よりも強いアルカリ!?いや、だめだよ。こんなんでコーヒー淹れちゃあ」
渡部「飲まないのか?じゃあ俺がもらうよ」
児島「ああ飲むのかお前?この水で淹れたコーヒーを」
渡部「さっきからなに騒いでんだよ。俺はいつもこのアルカリイオン水飲んでんだよ」
児島「この水を飲んでるの?」
渡部「ああ、毎日2リットルのアルカリイオン水を飲むと体の調子がよくなるって書いてあったぞ!たしかにお通じとかよくなるんだわあ」
児島「大丈夫なのかあ?あ、飲んだ。味はどうだ?」
渡部「そりゃ苦いよ」
児島「苦いだろうなあ。アルカリだもんな」
渡部「べつにそんな驚くことじゃないだろう。たかがコーヒーで」
児島「いやいや、驚くよ。すごいな。よっぽど体が丈夫なんだな、渡部は」
渡部「それでさあ、これ、電気分解で作っているからさあ。アルカリイオン水を作ると、こっちには弱酸性水もできるんだよ。それで顔を洗うとさあ、お肌がつるつるになるんだよ」
児島「肌がつるつるになるんだあ。ためしてみようかな」
渡部「お、俺やっぱり調子がよくなってきた。コーヒーおかわりしよう。その間にさちょっと酸性水を設定しておいてくれよ。数字を入力するだけでいいから。pHは5.5な」
渡部「5.5?わかったよ・・・だけど水素イオン濃度で表示されているからなあ。ええっと、どうなるんだ?計算するか。さっきの逆をやればいいのかな。おーい、対数って逆に計算するのってどうすんだっけ」
渡部「はあ?指数を乗じてやればいいだろう。計算してやるよ。指数はいくつだ?」
児島「-5.5」
渡部(スマートフォンで計算する)「約0.00408677」
児島「えーと、0.00408677と。これで本当にいいのかな」
渡部「念のために言っておくけれど、さっきからの計算だけど、底はeな」
児島「体は良い?かっこいいってことか?まあかっこいい、かな?」
渡部「かっこ?ああ、なんか数学ソフトのlog関数とかつかっているんだな。それならカッコをつけないとな」
児島「かっこつけるんだ。俺がか?(横を向き、前を向いて渋い顔をする)こうか?」
渡部「お前なんかふざけてないか?気持ち悪いぞ」
児島「気持ち悪いってなんだよ。それより対数なんてなんで使うんだ?かえってややこしい気がするけれど、これってなんか便利なのか?」
渡部「そうだな。俺が投資しているファンドがあってな。これけっこう利回りがいいんだわ。10年で2倍になるんだよ。俺、3倍になるまでは預けておこうと思うんだけれどさ、こういうのを計算するときなんかも、対数を使えば求めやすいだろう?あ、2が底な。こういうのは。で、3の対数を取る」
児島「苦手?ああ、まあくやしいけど俺の場合はこういう計算は苦手だな」
渡部「いや、だれが計算しても「2が底」だろうよ」
児島「ああ、そうか、渡部でも「苦手」か」
渡部「そういうもんだよ。くやしいってのはよくわかんなかったけど」
児島「いや、くやしくないよ。みんな苦手なら」
渡部「数字はだれにも平等だからな。いや、でさあ、その対数を取ってみろよ」
児島「(スマホで3の常用対数を計算する)出た(0.47712125)」
渡部「ああ、10年後が2倍だからな。その数字に10をかけた年数だけ預ければいいんだ。俺はもう5年預けているから」
児島「もう5年預けた?で、10年後が2倍?手放せ手放せ。そのファンド値下がりするから」
渡部「ええ?値下がり?」
児島「そうだよ。お前だまされてるよ」
渡部「ええ、児島って、投資に詳しかったのかあ」
児島「いや、苦手だよ」
渡部「2が底なのはもうわかっているよ」
児島「危ないところだったなあ」
渡部「そうだな、助かったよ」
児島「あ、これもうできたんじゃない?どうすればいいんだ、これ」
渡部「その小さな取っ手を引っ張ってさ、取り出すんだよ」
児島「こうか?あ、取れたよ」
渡部「じゃあ、この洗面器に水を入れてさ。顔を洗ってみろよ」
児島「(手を入れる)あれ、なんか傷にしみる」
渡部「そんなことないよ。弱酸性だぞ」
児島「そうだよな。じゃあ顔を洗ってみるな」
渡部「ああ」
児島「うわああああ、酸っぱい!」
 
(pHは約2.388620。お酢ぐらいの酸である)


 〈了〉


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