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福祉と援助の備忘録(16) 『統合失調症の新しい治療等』

統合失調症の回復のためのさまざまな方法がある。最近話題になっているものを紹介していこう。


認知機能リハビリテーション

統合失調症患者のために、『認知機能リハビリテーション』というものを行なっている施設がいくつかある。この『認知機能リハビリテーション』とはその名の通り認知機能のリハビリテーションをするのだが、主にパソコンゲームを使った脳トレである。一部の認知機能を高めるのに役立つというエビデンスが実際に出ている。


経頭蓋直流電気刺激(tDCS)

エビデンスがまだ少ないが、『経頭蓋直流電気刺激(tDCS)』というものもある。かつで電気ショック療法と言われた電気けいれん療法(ECT)と異なり、微弱な電流を流すことで統合失調症患者の機能改善が見込めるとされ、今後は精神科医療に用いられることが期待できる。


オープンダイアローグ

近年話題になっているのは『オープンダイアローグ』である。これについてはかなりのエビデンスが出てきつつあるようだ。フィンランドのとある病院で開発された、独自の理念に基づいて対話を促す治療法のひとつであり、日本でも先駆けてそれを学んだ人々が現場に取り入れて優れた実践をしている。

括りで言えば「集団療法」となると思うのだが、あまりそういう言いかたをされないのは、単に対話をするというだけでなく、何かあったときにかけつけてきて提供されるサービスであるという側面もあるからだろう。それなしに、対話技法だけを以ってオープンダイアローグとは呼ばれないだろう。



新しい医療を普及させる困難

これらの方法には、従来の治療法になかった新しい意義や、より優れた効果が期待できそうだ。

だが患者はどこでそれを受けられるのだ? 医療者視点で言えば、どこでそれを学べるのだ?

いやもっと大変なのは、医療の形が変わることだ。ときには「世界観」ごと新しくすることが必要になる。使っている言葉さえ変わる。たとえばオープンダイアローグでは対等な関係性を重視するので、医師も「先生」と呼ばれず、「さん」づけされる。

こういったことへの反発は必至だろうし、普及は困難を極めるかもしれない。だからといって信奉者ばかりを集めて閉じた世界で続けていても、尻すぼみになるだろう。新しいことをするというのはなんでもけっこう大変だ。


その昔、外科で毎日包帯を交換することさえ受け入れられない時代があった。予防接種を一般に普及するのにも並々ならぬ苦労があった。概ね、エビデンスというか「手応え」があると受け入れられていくようになるが、効くからといってそれが自動的に広まる、とは安易には言えない。


「こんなにいいものがありますよ。だからやってみましょう。広めていきましょう」


そう訴えていく、優れたプレゼンテーションが大事だ。


Ver 1.0 2022/7/12

#医療
#福祉
#精神医学
#統合失調症
#2022年の学び


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