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『ホワイトバグ 生存不能』 読了

こんにちは、深見です。
読書感想記事をサボりにサボっていたので、2023年11月頃からの読了分をちまちま書いていこうと思います。

まずは安生正氏の『ホワイトバグ 生存不能』です。


あらすじ

アフガニスタンと中国を結ぶワフジール峠で中国の国境警備隊が全滅した。タジキスタン側から登ってきた日本の気象観測隊も、猛烈なブリザードのもとで何ものかの襲撃を受ける。果たして極寒の山岳地帯で何が起きたのか。グリーンランドで同様の現象を目にしたプロ登山家の甲斐は、連絡の途絶えた気象観測隊の救出に協力するよう政府に求められ、研究者たちとともにワフジール峠に向かう。

(宝島社文庫『ホワイトバグ 生存不能』裏表紙 あらすじより)


1年に1冊は読んでおきたい、こういうモンスターパニック系小説。あらすじから『生存者ゼロ』を思い出すなあ……と思っていたら、同じ作者さんでした。

『生存者ゼロ』の方は、なんというか色々と突っ込みどころが多いにしても、面白い小説だったと思います。今回はどうでしょう。以下、感想です。


感想


作者さん、小説下手になってない?
ものすごく失礼だとは思いつつ、なんだこの脚本小説は……と思いながら、苦労して最後まで読みました。

『生存者ゼロ』のころも、心理描写や情景描写がほとんどなく、淡々と起きた出来事だけを描写する手法ではあったと思います。それでも、今回のような、文体に対する強烈な違和感はありませんでした。
そもそも私は、心理描写を抑え気味にして、時系列に沿って出来事のみを描写していく形の小説は、結構好きな方です。
(ディザスター小説やパニック小説でよく見る手法だからでしょうか。緊迫感があって好きです)

ところがこの小説は、心理描写も入れてくるわりに、箇条書きのような地の文。「~だと?」「そうだ」「~と」「はい」の繰り返しの会話文。
……うーん……。
読むのに疲れました。


とまあ、文体の話はここまでとして、肝心の「物語の感想」を書きましょう。
文体が合わなさ過ぎて、正直物語にもあんまり入り込めなかったというのはあるんですが、でも相変わらず、ミリタリーと、あと人体が内側から食い破られる描写がお好きなようで安心しました。私も好きです。

巨大で力の強い相手に首をねじ切られるのも、それはそれでいいのですが、小指の爪よりも小さい生物に群がられて、なすすべもなく食われていく……これこそ、モンスターパニック!
(思えば私のはじめての「こういうの好きだなあ」は、映画ハムナプトラに登場するスカラベでした)

そういった描写に関しては、安生氏の手腕は信頼しています。
人体に群がる「ホワイトバグ」の、まあおぞましいことといったら!
全く未知の生物である分、その形態や動きについては「例の白アリ」よりは想像力で補わねばならない部分が多く、集中力は要しましたが、それでも充分な迫力でした。その点は満足です。

一方、今回は『生存者ゼロ』より早めに敵の正体が判明したような気がして、そのぶん『生存者ゼロ』よりハラハラ感は薄めだったなという印象です。というかやっぱり全体的に、『生存者ゼロ』の方が完成度高かったな……。

でも、人間の登場キャラクターは今回の方が濃くて好きです。一番はやっぱり、織田政務官でしょうか。「てめえら、まとめてぶっ飛ばしてやる」に、思わず「お、織田!」と唸り、そして続くシーンに「織田ーーーっ!!!」と叫びました。(脳内で)
こうして書いていて気が付きましたが、何だかんだ言いつつも楽しんで読んでたんですね、私。


以上です。シナリオとキャラクターがとても好みだった分、文体のクセさえなければ……と口惜しい気持ちです。

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