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『希望が死んだ夜に』 読了

こんにちは、深見です。
天祢涼氏の『希望が死んだ夜に』を読了しましたので、感想を書いていこうと思います。

あらすじ

神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたが、その動機は一切語らない。何故、のぞみは殺されたのか?二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がって――。現代社会が抱える闇を描いた、社会派青春ミステリー。

(文春文庫 裏表紙あらすじより)

感想

初めに言っておくと、Not for me だったなと思います。
刑事目線と少女目線、ふたつの目線からの語り口が交互に繰り返される構成は、割と好きです。ひとつの出来事を別の目線から見ることによって、徐々に真相に近付いていく。面白いと思います。

ただ、どうにも説明口調が多い。社会派ミステリーということで、現代日本が抱える問題(この本の場合、子供の貧困問題)を織り交ぜていくというスタイルなのは分かるのですが、織り交ぜられているというか「混ざっている」感じ。チョコレートが練り込まれているのかと思いきや、がっつりチョコチップがごろごろ入っている。そういう感覚でした。

社会派ミステリーってそういうものだよ、と言われればそうなのかも知れませんが、うーん、口当たりが悪い。
以前も「社会派ミステリー」を読んだ時に似たような感想を抱いた記憶があるので、そもそもジャンルからして私に合っていないのかもな……と思います。

あと一番気になったのが「努力」の立ち位置について。作中では、主人公は過酷な環境で精一杯努力しているのに周りからは怠けているように見え、「もっと頑張れる。もっと頑張るべきだ」と言われる、という構図が頻出します。それに対して、「そもそも努力出来る環境が恵まれている。世の中には、努力することすら困難な環境に置かれている子供たちもいる」という切り口で話が進んでいきます。

言いたいことは分かるのですが、「もっと努力しろ!」に対して「この子たちだって努力してるんです!」を返しすぎて、「あれ?じゃあ結局、貧乏人はこの子たちみたいに、死ぬほど努力しなきゃ助ける価値がないってこと?」と、ひねくれている私は考えてしまうわけです。

私個人の思想として、「社会的福祉は、努力もせず誠実でもなく善人でもない人間こそ助けるべき」という考えがあり、だからこそこの感想を抱いたのかもしれません。
誰も見向きもしない、「あんなやつ助けてどうすんの?」と誰もが口を揃えて言うような人間にこそ、福祉は必要です。この作品で言えば、主人公の母親のような。

つまり、この本のテーマは私の思想と合わなかった。それゆえの、この感想なのでしょう。

帯には「『あの子の殺人計画』と読むと、一層切ない」とありました。このストーリーを補完する話があるなら、読んでみようかしら、と思います。読まずに「うーん……」と言い続けるのもなんなので。


以上です。お勧めの社会派ミステリーがあったら教えてください。


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