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バーチャル 毎週ショートショートnote

あの子に目を止めない人はまずいない。
ここに性別はないし、誰もがアバターを着てるんだけど、あの子は特別センスがいいんだ。
僕は少しでも近づいて、あの子を見ていたいと思っていた。
 
この世界に時差を設けるなんて意味ないじゃんって思うんだけど、そうしてる人は多かった。
ここはカレンダーさえまちまちで、約束をする時は相手がどんな標準時を採用しているのか確かめなきゃならなかった。
僕はちゃんとUTCの世界標準時で動いている。これはグリニッジ標準時だから、ひどいと12時間違ったりする。
 
ある日、思いがけずあの子が赤い包装紙のチョコレートをくれたんだ。それは2月13日のことだった。
僕は標準時をあの子に合わせるかどうか悩んだ。そうすればもっと会う機会が増えると思ったからなんだ。

でも突然、あの子はいなくなった。消え失せてしまった。きっとあの子の脳が失われてしまったんだ。
僕の手元にチョコレートが残った。あの子の色のセンスを記述したchoco Bitsが。
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たらはかに さま
今週もよろしくお願いいたします。


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